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君はクビだ!

 ――は?


 ――葉歯刃波羽破端派巴覇?


 ――……はあ?


 なんだろう……言ってる言葉の意味がまったく分からない。

 クビて。

 わたしは、いつあんたに雇用される立場となったのだという話である。


「えっと……」


 あまりの意味不明さに、曖昧な愛想笑いを浮かべ、小首もかしげておく。

 大変申し訳ありませんが、わたしはあなたがおっしゃったことの意図をはかりかねておりますよ、というサインだ。

 このように態度をハッキリさせないマグニシ流の外交術は、列強諸国相手には無意味であったり逆効果であったりすることも多いのだが、今回ばかりは致し方あるまい。

 外交的な態度がどうこうという以前に、わたしは少し混乱している。


 で、混乱の元凶たる顔が濃ゆい皇子様は、婚約者の困り顔などものともせず、舞台役者のようなポーズをマウンド上でキメてみせたのであった。


「ハッハー!

 どうやら、意図が上手く伝わらなかったようだね!」


 ビシイッと自己陶酔的なポーズもキメながら叫んでみせる皇子様だ。

 うん……伝わるわけねえだろタコ!

 と、心の中では思うが、心の中で思うに留めておく。

 あくまで、顔はニコニコ。東洋からやってきた美少女プリンセス様だ。


 それに、皇子……じゃなかったタコ様が何を言いたいのか理解できず、困惑しているのはわたしだけじゃない。

 客席を埋め尽くす来場者たちも、自分たちのおタコ様が何を言ってるのか理解できずに、首をひねるばかりであった。

 彼らの場合、自分たちを導く次代のトップが彼なのだから、困惑とは別に不安も出てこよう。


 いや、それ言ったらわたしは近々これと結婚&子作りせにゃならんわけだし、トラメリア帝国は事実上の宗主国なのだから、まったくもって他人事ではないのだが。


「いや、いや、すまない。

 このところ、ショーに出る機会も多くてね!

 ついつい、そこでの決め台詞を使ってしまったよ!」


 ああ、それはよく知ってる。

 参加者を二チームに分け、それぞれビジネスのプレゼンをさせるというショーだ。

 勝ち残った者は、彼が社長を務める国営企業で特別年俸付きの役員になるんだよね。

 で、失格となりチーム内で責任を負わされた者は、先の決め台詞をもらうことになると。

 わたしも一度、ゲストとして出演したことあるわ。


 このショー、大衆相手に公開しているばかりか、内容を書き起こしたものが書籍出版もされていて、なかなか人気があるんだよね。

 それゆえに、ショーの司会を務めるレオン殿下は庶民人気が高い。タコだけど。


 で、だ。

 そのショーと同じノリで、愛すべき美少女婚約者にクビを宣告したのだという。

 果たして、その答えは?


「言い換えよう!

 マグニシ王国の姫君ミヤビよ!

 ボクは今日! この時をもって! 正式に君との婚約を破棄する!」


「は……?」


 もう、「は」の文字が脳内で様々に変換されることもない。

 ただただ、ポカンと口を開けてしまう。

 ナニイッテンダアンタイッタイ。


「そして、ここでパフォーマンスを行なっている新しい人型蒸気たち……。

 これらが代表的だが、マグニシ王国から輸入している製品に課している関税を、平均して十倍まで引き上げる!

 全ては、我が愛すべきトラメリアの産業を守るために!」


 グワアッ! と右手を突き出してみせるおタコ様。

 そんな、人間と同じ数の手足しかない軟体動物様のお言葉に……。


「はああああああああああっ!?」


 わたしは大きな声を張り上げ……。

 球場の一部からは、これに賛同する者たちの歓声が上がったのである。


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