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天才王女ミヤビ

 野球といえば、もはやトラメリア帝国における国技。

 セントラルボールパークは、競技人気に対応するべく五万人以上もの収容人数を誇るが、それでも、本日ここを借りて催されているイベントは、人でごった返す有様となっている。

 そのイベント内容とは、ずばり、我が国――マグニシ王国による新人型蒸気のデモンストレーション。


 農業、建築、工業、軍事……。

 最強の踏破性能と形状由来の柔軟性を誇る人型蒸気は、あらゆる分野において、なくてはならぬ労働力。

 昨今、世界市場を席巻しているマグニシ王国がそれの最新型を発表するというのだから、人々が注目しないはずもないのであった。


 いや、注目する理由はもう一つあるか……。

 その理由とは、ずばり、このわたし――ミヤビ姫その人だ。

 立てばシャクヤク、座れば牡丹、歩く姿は百合の花。

 世界需要を見据えた場合、ちぃーっとばかりお胸のボリュームが不足していることは否めないが、これはむしろ、ここで差別化を図り、キュート路線で売り込むべしという天の采配であろう。


 かように天下無双絶対的美少女であるこのわたし自らが新型機に搭乗し、あやとりやジャグリングでもって機体の器用さをアピールしているのだから、女房を質に入れてでも拝みに来るというもんである。

 しかも……しかもだ。

 わたしはただ、自国が生産した機体を売り込みに来ているというわけではない。

 このわたし自らが設計した機体を、PRしにきているのであった。


 そう……マグニシ王国第一王女とは世を忍ばない真の姿であるが、わたしにはそれと別の肩書きも存在する。

 すなわち――トヨデン重工技術顧問!


 女が家庭に入るものと誰が決めた! 天は二物を与えずと誰が言った!

 わたしこそ、傾国の美貌に加え天才的頭脳すら有し、蒸気技術という最先端分野でいかんなくその才を発揮している世界一先進的な美少女なのであった!


 おーっほっほっほ! おーっほっほっほ!


 ……ああ、いや、肩書きはもう一つあったか。

 左手首の腕時計を見れば、そろそろ想定の時刻。


「ここまでご覧頂いている通り、わたし自らが設計したこのラヴというマシーンは、従来機を上回る出力に加え、抜群の踏破性能と運動能力……何より器用さを備えています!

 加えて、丸一日給水なしで動かせることから分かる通り、燃費も当代一!

 あらゆる分野において、納得のいくパフォーマンスが発揮できると確信しています!」


 ――ワッ!


 球場へ押しかけた全ミヤビちゃんファン――じゃなかった、新型機へ関心を持つ人々が、一斉に歓声を上げた。

 そんなトラメリア人の皆さんに対し、常日頃から鍛えている美声で応える。


「そして、我が国がこの新型機ラヴを最も優先して供給する輸出先と定めているのが、ここトラメリア帝国なのです!」


 ――ワッ!


 またも歓声。

 そうだろう、そうだろう。

 かくもグンバツな性能の機体を見せられて、欲しくならないはずがない。

 そこで、わたしは我が第三の肩書きを保証してくれる人物の呼び出しにかかった。


「これも、我らが友好の証!

 では、それを象徴する人物……。

 わたしの婚約者、レオン皇子にご登場頂きましょう!」


 わたしの呼びかけに応え……。

 一人の青年が、マウンドに姿を現す。

 流行のスーツをびしりと着こなした細マッチョは、金髪を後ろに撫でつけており……。

 マグニシ人としては少々濃い目に感じられるも、しかし、間違いなくイケメンと断じられるお顔に人懐っこい笑みを浮かべている。

 トラメリア帝国の第一皇子、レオン殿下その人だ。


 同時に彼は、今紹介した通り、わたしの婚約者でもあった。

 そう! 世界最強国家第一皇子の婚約者こそ、我が第三の肩書きなのだ!


 おーっほっほっほ! おーっほっほっほ!

 向かうところ敵なしでしてよ!


 世界最強国家首都の中心部に建設されたスタジアム……。

 そのさらに中心部へ、我が愛しの婚約者様が静かに立つ。

 そして、彼は呼吸を整えると、わたしに向けてビシリと指を突き出しながら、こう言ったのだ。


「ミヤビ……。

 君はクビだ!」




--




 ※本作はフィクションであり、リアリティショーで司会をやっていた際、「君はクビだ!」を決め台詞にしていた人物は一切関係ありません。


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