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白銀の魔女ファビオラさんの日常  作者: 柚亜紫翼
1章 あるふぁおうこく
8/15

008 - こんなにめがきらっきらだったっけか? -

008 - こんなにめがきらっきらだったっけか? -


俺の名前はベネット・ブライアス、37歳独身だ。


ファビオラの機嫌を損ねた翌日、俺はブライアス王国に帰る事を告げた。


奴には凄ぇ顔されたぜ!、あれは「え、僕のステーキセット3日分は?」って思ってる顔だ、仕方ねぇだろう!、エンリケスの話が事実なら今すぐ国に帰って対策しねぇとえらい事になる。


手紙はダメだ!、うちの国の手の者が何人かこの街に潜んでるが内容がヤバ過ぎて託せねぇ、他人の目や耳に入る可能性は極力排除したい。


最後まで怒らせたままなのが心残りだが俺は店の裏に居る馬二頭のところに来た、あいつが丹精込めて育てた薬草を全部食っちまっただけあってやたらと元気そうだぜ。


「お前、こんなに目がキラッキラだったっけか?」


俺は愛馬のデュラハァーン号に向かって話し掛けた、もう一頭の後から乗ってきた奴は厩舎にいたのを適当に借りてきたがこいつも目がギラギラしてやがる。


よく知らねぇがあの薬草・・・馬に食わせて本当に大丈夫なやつなのか?。


時々乗り換えて走れば6日・・・いや5日あれば帰れるだろう。


俺は出発前に振り返り店の裏口を見た・・・扉を少しだけ開けて奴が顔を出していたから手を挙げて挨拶をする・・・まぁそんな事しても意味ねぇんだがな。


「この件が片付いたらワインと肉持って詫び入れねぇとな・・・」


そんな事を呟きながら俺はアルファ王国の王都に別れを告げた・・・次来る時には戦争になってるかもな・・・。










僕は早朝、人の気配と物音で浅い眠りから覚めた。


ベッドから起きて居間に行くとベネットおじさんがもう起きてる。


彼は僕のステーキセットを忘れた極悪人だ、挨拶なんてしてやらない・・・そう思ってるとおじさんが話しかけて来た。


「悪ぃ、急な用事で国に帰らなきゃならねぇ、じゃぁまたな」


そう言って裏庭に出て行くおじさん・・・嘘でしょ、僕の朝ごはんは?、それにまだ1回もステーキセット買って貰ってない!。


ドアを開けて裏庭の様子を伺うと馬の足音が遠くなる、本当に帰っちゃうんだ。


ベネットおじさんは僕の無事を確認してからも図々しく寝泊まりしていたから正直迷惑だった・・・筈なのに居なくなると少し寂しいな。


「作ってくれる料理は美味しかったなぁ・・・」


くぅぅ・・・きゅるる・・・


「あぅ、お腹すいた」


昨日はおじさんがステーキセット買ってくれるって言うから楽しみにして待ってた!、なのに忘れるなんて酷いじゃないか!。


おかげで明け方まで空腹でまともに眠れなかったよ。


「文句言ってもおじさんは居なくなったし、どこか開いてるお店で朝ごはん食べなきゃ」






「340・・・341・・・到着しましたぁ!」


「あら、ファビオラちゃんいらっしゃい!」


「ポーラお姉さんおはよう、もうパンは焼き上がってるかな?」


「できてるよ」


「じゃぁいつものやつ!、パンは3個で!」


「具は何がいい?」


「ソーセージあるかな?、マスタードとソースをかけて食べたいの」


「ここで食べるのかい?」


「うん」


僕がやって来たのは近くでパンや食料品を売っている「ギノールの食料品店」だ、ここのパンは焼きたてがとても美味しいから朝早く目が覚めた時によく買いに来てる。


「はい、パン3個、ソーセージとソースも挟んであるからね、転ばないように足元気をつけるんだよ」


「ありがとう!、はいお金」


ちゃりん・・・


「果汁は後でテーブルに持って行ってあげるからね」


「うん!」


お店の正面にはテーブルが並べてあって、ここで食べ物を買った人が食べられるようになってる、僕は日当たりのいい一番端の席がお気に入りだ。


僕の言う「いつもの」は具を挟んだパンと瓶に入った果汁、それから細かく切ったポテトを揚げたやつだ、パンの具は5種類から選べるようになっている。


ポーラさんをはじめ、家族経営のこのお店の人達は全員顔見知りだから「いつもの」と言えばこれが出て来る。


「そういえば毎日来て騒いでたあいつら、殺されたらしくてうちに来なくなったよ、これでまた常連さんが戻って来てくれればいいんだけどねぇ」


果汁の瓶をテーブルに持って来てくれたポーラお姉さんが僕に話しかける。


「そう、よかったね、このお店のパンは美味しいから大丈夫だよ」


「他にも迷惑してた店が沢山あったから・・・こんな亊言っちゃぁアレだけど、殺してくれた犯人に感謝してるんだ」


「僕のお店は被害が無かったけど、もしそんな連中がうちに来たら泣いちゃいそう」


「本当に良かったよ、ファビオラちゃんは可愛いから目をつけられないか心配だったんだ」


ポーラさんは僕の食べている席で一通り世間話をしてお店の中に入った、話題は少し前にこの王都に流れ着いた盗賊崩れの悪党達だ。


奴らは大通りじゃ衛兵に捕まるからこの周辺・・・路地裏を拠点にして色々なお店に迷惑をかけていた。


この周辺を担当している衛兵を早い時期に賄賂で抱き込み好き勝手していたから本当にイラついた。


おまけに子供達を攫ってどこかに売り払おうとしていたらしい、被害が出る前に「居なくなってくれて」良かった。


「これでお得意様向けのお薬を納品すれば僕の平穏な日常は元通りだね」






もぐもぐ・・・


「134・・・135・・・」


ポーラお姉さんのお店を出た僕は肉串を齧りながらお店に帰ってる、屋台の前を通りかかったらウィリアムおじさんが声をかけて来たのだ。


「ファビオラちゃん久しぶりだねぇ、しばらく姿を見なかったからおじさん心配してたんだ」


彼の名前はウィリアム・ルニョー、路地で肉串の屋台を出しているおじさんだ。


「知り合いが訪ねて来てお食事作ってくれてたんだぁ、もう帰っちゃったけど・・・」


「あ、薬草店に怪しい中年男が出入りしてるって噂を聞いたがそいつか?」


「うん・・・ところでおじさん、ケガの具合は大丈夫?」


「あぁ、おかげでほとんど傷が残らないくらい治ったよ、あの塗り薬よく効くなぁ、タダでもらって良かったのかい?」


「おじさんにはよく肉串おまけして貰ってたからそのお礼だよ」


「それにしてもあいつら首切られて殺されたっていうじゃないか、誰がやったんだろうなぁ、金奪われて怪我までさせられた俺としてはざまぁとしか思わないけどな」


「そうだねー、首を落とされるなんて怖いなぁ」


「あ、そうだ、怪我で休んでた時に新しいソースを考えてみたんだ、試食して感想もらえないかな?」


「もちろんいいよ!」


もぐもぐ・・・


そう言っておじさんから試食に新作肉串を1本貰ったのだ、香草と酸味のあるフルーツ果汁が香ばしいお肉によく合って美味しいと言ったらとても喜んでくれた。


もぐもぐ・・・


王都の人達はみんな僕が魔女だと知りながら親切にしてくれる、国の上層部は腐ってるけれど僕はこの街が大好きだ。


「59・・・60・・・61・・・僕のお店に到着っ!」


今回の暗殺未遂の主犯はアルファ王国だから今後はブライアス王国との諍いが激化するだろうなぁ。


30年かけて作っていた仕掛けはあと少しで完成するし、僕の長いようで短かかった平穏な日々はもうすぐ終わるかもしれない・・・できればサリーくん達だけで上手くやってくれるといいんだけど・・・。


「あ・・・そういえば魔力弾の在庫が無い、急いで作らなきゃ」

読んでいただきありがとうございます。


面白いなって思ったら下のお星さまやいいねをポチリと押してもらえると作者が喜びます・・・。

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