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白銀の魔女ファビオラさんの日常  作者: 柚亜紫翼
1章 あるふぁおうこく
3/15

003 - ふぉぉぉぉっ! -

003 - ふぉぉぉぉっ! -


ぱぁっ!


「ここは・・・」


ぎしっ・・・ぎしっ・・・ばきっ!


「おっと・・・床が腐ってやがる」


ぎぃ・・・


「ブライアス王国の王都か・・・すげぇな」


今までアルファ王国にある魔女の店に居た俺は光に包まれた後どこかの廃墟に立っていた、軋む床を歩き外れそうになってるドアを開けると見慣れた教会の塔と遠くに王城が見える。


足元には秘薬「魔女の涙」入りの瓶が詰まった木箱・・・。


振り返って俺の出て来た廃墟を見ると消えかけた文字で「ファビオラの薬草店」と書いてあった。






俺の名前はベネット・ブライアス、37歳独身だ、こんな見た目だがブライアス王国の第二王子で普段は辺境を守る騎士団の隊長として魔物や野盗どもと戦っている。


俺の家族は国王と王妃でもある両親、王太子の兄、それから8つ年下の妹が居る、いつものように辺境で野盗どもを討伐していた俺の元に親父が倒れたと知らせが入った・・・今から20日ほど前の話だ。


辺境を部下に任せ急いで王都に戻った俺は寝込んでる親父に会った、幸い意識があって話も出来たが酷く苦しそうだ、話を聞けば地方視察の時にどこからか紛れ込んだポイズンウルフが護衛をすり抜けて親父を襲ったらしい。


まぁ・・・親父に死んで欲しい連中なんていくらでも居るから驚かねぇが、兄貴が言うには手際が良過ぎるそうだ、内部に裏切り者が居る可能性が出てきた。


その辺の政治的な事は兄貴や宰相に任せるとしてまずは親父をなんとかしねぇと話にならねぇ、ポイズンウルフってのは狼型の魔物が一度死んでアンデッド状態で蘇った厄介なやつだ。


体内に毒や呪いを持ってやがるから噛まれた人間は毒が回って苦しみながら死んじまう、唯一の薬は魔女の作る秘薬らしい・・・秘薬といっても万能じゃねぇ、内臓が腐る前に処置する必要がある。


しかも毒が自然に抜け切るまで何十日もクソみたいに高価な薬を飲み続けなきゃ後遺症が残る。


うちの国にも魔女は居る、だがそいつは薬を大量に作れるほどの魔力が無ぇ・・・在庫も残り少なくなってさぁ困ったぞという所で俺は兄貴に呼ばれた。


「アルファ王国に居る魔女に薬を貰って来てくれ」


アルファ王国・・・ブライアス王国の東隣にある大国だ。


軍事力や経済力はこの大陸にある十数ヶ国の中でも最大、力に物を言わせて周辺国を威嚇してる・・・当然うちの国とも関係が良くねぇ。


「兄貴、そこにいる魔女って・・・まさか」


「そのまさかだよ、現時点で最強の力を持つ・・・白銀の魔女ファビオラ姉様だ」


白銀の魔女は30年前までこの国で暮らしてた、他の魔女達と違って歴代の王族とも仲が良く家族同然と言ってもいい程の関係だった。


だがアルファ王国お抱えの魔女が死に、うちの国に居る魔女を寄越せと言ってきやがった。


当然その時の国王だった爺さんや親父は激怒した、もう戦争は避けられねぇ・・・って所で白銀の魔女は自分の意思でアルファ王国に移住した。


親父の話だと戦争に突入すれば高確率でうちが負けると言われてた、白銀の魔女の判断は正解だ、それにブライアス王国には力は弱いが他に魔女が一人居た。


アルファ王国に移住するがブライアス王国で困った事があれば協力を惜しまないという契約を向こうの国王立ち合いの上で交わしたそうだ。


「だがベネット、お前は内密にファビオラ姉様と接触しろ、アルファ王国に悟られるなよ」


「何でだよ」


「うちの国王が倒れて薬が必要、だがその薬はアルファ王国にある・・・そうなったら向こうのクソッタレな国王が何を要求してくるか分からん」


「確かにそうだな・・・」


「ついでにファビオラ姉様にも会って話をして来い、お前はまだ幼かったから姉様とまともに話した事が無いだろう」








そんな経緯で俺は丸7日かけて馬を飛ばしアルファ王国にやって来た。


「相変わらず腹立つくらい街がデカいし発展してやがる」


うちの国は力があるからまだマシだが周辺国から悪どい事して色々と搾り取ってんだろう・・・。


王都で店を探すのは本当に大変だった、路地で迷いながらようやく辿り着いた店の中で魔女は呑気に居眠りしてやがった。


俺がカウンターのところまで来ても起きない、いくらなんでも不用心だろ、そのうち店の商品全部盗られちまうぜ!。


外見は随分若い・・・まだ子供に見える、そういえば最年少で魔女になった天才だって兄貴が言ってたな・・・俺も7歳まではよく遊んで貰ってたらしいが全く覚えが無ぇ。


艶やかな銀髪が肩から胸元に垂れてる、胸は小せぇな・・・ちなみに俺の好みは巨乳の熟女だ、椅子に身体を預けて上を向いて爆睡してやがる・・・おい、口からヨダレ垂れてっぞ!。


首を見ると華奢な身体に不似合いな金属製の首輪が嵌められてる、これは・・・遥か昔、この大陸に住む人間達が魔女を危険視して嵌めた外れない枷だ。


「こんな酷ぇ事されてるのに魔女ってのは今でも人間のために薬を作り続けてるのかよ・・・」


そう、魔女は過去にあった争いのせいで人間を激しく憎んでいる、だが首輪で命を握られてるから大人しく国に従っているだけだ・・・俺の目の前で居眠りしてるこいつを除いてな。


「おい!」


起きねぇ・・・。


躊躇いながら肩に触れる・・・恐ろしく細いな、ちゃんと飯食ってんのか?。


ゆさゆさっ・・・。


「おい起きろ!」


「ぴゃぁぁ!」


がたんっ!


ごっ!


「痛ったぁぁい!・・・カウンターの角ぉぉ!」


肩を揺すると起きたが俺に驚いて派手にこけた、後頭部を強打して悶絶してるな・・・痛そうだ。




それから俺は奴に秘薬「魔女の涙」の制作を依頼した。


在庫はあまり無いから新しく作るらしい、お得意様に売る分が29本・・・お得意様って言ってるがこれはアルファ王国に安く買い上げられてるやつだろう。


普通に考えて秘薬を50本も一気に作るのは不可能だ、他の魔女なら死ぬだろう・・・こんな状況になってるのは魔女に首輪なんて付けた人間達の自業自得だが目の前に居るお人好しの魔女は作ってくれると言う。


首輪で魔力の殆どを封じられてるから奴には相当無理をさせる、だが作ってもらわねぇと親父が死んじまう。


結果的に秘薬は50本手に入った・・・その上奴の好意でブライアス王国まで転移させて貰った、薬作るだけでも激痛で小便漏らしてたのに今や幻となった転移魔法なんて使ったらどうなるか・・・。


「心配だ、まさか向こうで死んでんじゃねぇだろうな・・・」


・・・


「まぁ、奴が無い胸を張って大丈夫って言ってたから・・・」


俺は考えるのをやめて城に向かって走り出した。








「・・・早かったなベネット」


王城では兄貴が迎えてくれた、俺は途中で馬を借りたから汗ひとつかいてねぇ。


「あいつが転移魔法陣で王都まで送ってくれた」


「なんだって!・・・ってか姉様がそれを使えるって事は誰にも喋るなよ!、他国にバレたら面倒な事になる」


「分かってるよ」


「・・・」


「・・・」


「・・・おいベネット、親父に薬を飲ませたらもう一度アルファ王国に行って姉様の様子を見て来い!」


兄貴も向こうで死んでるんじゃないかと不安らしい・・・。









兄貴と一緒に俺は親父の寝ている部屋に薬を持って行った。


「おや・・・今までの薬と色が違うようですが・・・」


宰相が薬の瓶を手に取りそう言った、その横では王家に仕えている専属医師が不思議そうな顔をしている」


「では鑑定と毒味を・・・」


「必要ない、ファビオラ姉様の薬なら信用できる」


医師が喋るのを遮って親父が答える、まだ自力で起き上がる事ができるようだ・・・。


「では・・・これを」


「うむ」


きゅぽん!


ごっごっごっ!


親父は薬の栓を抜き一気に飲み干した。


ごっくん!


「ぷはぁ・・・こっ・・・これは!」


「親父?」


「ふぉぉぉぉっ!」


「どっ・・・どうした親父っ!」

読んでいただきありがとうございます。


面白いなって思ったら下のお星さまやいいねをポチリと押してもらえると作者が喜びます・・・。

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