018 - まちはさらちになってねぇ -
018 - まちはさらちになってねぇ -
「なるほど・・・アルファ王国の王都で仲良くなった少女とその家族を人質に取られて城に連行された・・・か」
親父が深刻そうな表情で仮面の女に話しかける。
俺の名前はベネット・ブライアス、37歳独身だ。
俺は兄貴に連れられて会議室に来た、中には親父と宰相が居て頭を抱えてやがるぜ、それに情報組織「悪の華」の使者だという仮面を付けた女が居る。
「あぁ、そうだ、連れて行かれるとこを見た時点でやばいと思ったんだろうな、爺さんがピヨちゃんをあたしに寄越したんだ」
「ピヨちゃん?」
仮面の女の言葉に兄貴が反応する、ピヨちゃんって何だ?。
「・・・説明不足だったな、あたしの飼ってる可愛い鳥だ、アルファ王国に向かった爺さんが緊急連絡に使いたいって言うから貸してた」
ごそごそ・・・
女が足元のでかい鞄を開けて何か取り出した。
「くぇぇぇぇ!」
「紹介しよう、ピヨちゃんだ」
薄い胸を張って自慢そうに見せたのは肉食の獰猛そうなでかい鳥だった、鋭い爪と湾曲した嘴が見るからにヤバそうだ。
「こいつはアルファ王国からここまで半日で飛べるんだ、凄ぇだろ!」
「その鳥の持って来た手紙に姉様が連れて行かれたと書いてあったのか?」
兄貴も深刻そうな顔をしてる、奴が心配なんだろう。
「爺さんが言うには魔女様はこの手の脅しを一番嫌ってる、下手するとアルファ王国の貴族は全滅、城は更地になるだろうな」
「なんだ、まだ連れてかれただけじゃねぇか、王国が滅んだって言うから慌ててここに来たのによ」
俺の言葉に親父達が信じられないという顔をする、仮面の女・・・クラウディア・オコスナーも無言で俺を見てる・・・俺は何か変な事言ったか?。
「奴等は一番やっちゃいけない脅しを魔女様にしちまったんだ、良くて王国滅亡・・・これは確定だ、最悪王都が消えてなくなるだろうな」
クラウディアが物騒な事を言い出したぞ。
「何でだよ!」
「魔女様は怒りが許容値を超えると周りが見えなくなるんだよ、今までは力を封じられてたから被害は多くて3桁だったが全力で魔法を使われるとやばい」
3桁・・・何が3桁なのか気になったが俺はあえて聞かない事にした。
「貴族連中が全滅となると治安の悪化が心配だな、急ぎうちの騎士団をアルファ王国に派遣するか・・・」
親父の中では既にアルファ王国の貴族どもが全滅しているようだ。
「下手に軍隊を出すと他国からうちが侵略したように見えるんじゃねぇか?」
騎士団を出すという親父に俺の考えを言った。
「大丈夫だ、今までの横暴な振る舞いでアルファ王国の信用は地に落ちてる、うちが侵略したとしても喜ばれこそすれ非難はされないだろう」
兄貴に続いて親父が俺に向かって言った。
「ベネット、お前は騎士団と一緒にアルファ王国に行って指揮をとれ、王城に・・・原型が残っていればの話だが・・・王城に入ってブライアス王国の旗を掲げて来い」
「俺がやるのかよ!」
「他に誰が居る?、仮でも何でもいいからブライアス王国の王子が城を制圧したと言え、それからロドリゲスを使って街の住民にアルファ王の悪政は終わったから暮らしが良くなると噂を流せ」
俺はここで途中退席し、騎士団の一個大隊を連れてアルファ王国に向かう事になった。
「まず騎士2名と俺で先行する、残りの隊員は準備が整い次第アルファ王国に向けて出発、途中で暴動や略奪が起きていたら人命優先で対応しろ」
「「「はっ!」」」
俺はデュラハァーン号に乗り、足の速い馬に乗った騎士2人を連れて夜通し街道を走る。
2日目の昼、ようやく遠くに王都が見えた。
「良かった、街は更地になってねぇ・・・」
・・・
「リタさん、お腹すいた」
「確かにもう朝食の時間なのに誰も持って来ませんね、それにお城の方もやけに静かですし・・・私ちょっと様子を見て来ます」
「うん、お願い」
私の名前はベアトリス・シエラ・アルファ15歳・・・一応アルファ王国の第二王女です・・・。
私には兄と姉が居て、私だけ母親が違います。
この国の国王である父が容姿端麗な下級貴族の令嬢と浮気をして私が生まれました、当然王妃である義母は激怒、父を殴り倒し私の実の母は修道院に入れられました。
そして私はお城に隣接して建っている廃墟・・・いえ、離れに押し込められて15年間生きてきたのです。
もちろん将来は政治の駒になるべく王族として最低限のマナーや知識は厳しい家庭教師から教わっています・・・。
でも病気になっても何もしてもらえず、お食事も時々忘れられる粗末な扱いの王女・・・国民にも病弱で引きこもり、無能な第二王女として知られているようです。
さわさわ・・・
私はお膝の上に乗せている古い小説の表紙を撫でました。
これは私みたいに家族にいじめられている可哀想な令嬢が王子様に助けられて幸せな結婚をするお話・・・この廃墟の書棚で埃を被っていたものを私が見つけたのです。
「私にも優しくてかっこいい王子様が現れないかなぁ・・・」
どたどた・・・
ばたんっ!
「姫様大変ですぅ!」
「リタさん?」
この人は私の専属侍女のリタさん・・・私が幼い頃からお世話してくれているお姉様のような存在です。
他の侍女やメイドさんは私の担当になるのを嫌がるのにリタさんはずっと私のお世話をしてくれています、本人はお給料がいいからだと言っていますが・・・。
「お城が!、お城の中が大変なんです!」
「落ち着いて・・・ほら深呼吸・・・」
すぅぅ・・・はぁぁ・・・
ぜぇぜぇ・・・
「お水飲む?」
「頂きます!」
ごっごっ・・・ぷはぁ!・・・
ごっごっ・・・
リタさんの息が上がっています、お城から全力疾走してきたのかな?。
「げふっ!、えふっ!」
お水で激しく咽せるリタさんの背中をさすりながら私はとてもよく晴れた窓の外に目を向けました。
読んでいただきありがとうございます。
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