015 - みんなはげになった! -
(柚亜紫翼からのお知らせ)
多忙なのと「リーゼロッテさん」や「スペースシエルさん」の執筆作業のため今後「ファビオラさん」は数日おき又は不定期投稿になりそうです(執筆時間が足りない!)、およそ10万文字で完結させる予定ですので次の投稿はブックマークしてお待ちください。
015 - みんなはげになった! -
しゅこぉぉぉぉぉぉ・・・
「こいつを城に置いておけばいいのか?」
「うん、その魔法陣を目標に僕が転移するからなるべく人目の無い場所にお願い」
ふぉぉぉぉぉ・・・
「だが俺をブライアス王国に転移させてお前の身体は大丈夫なのかよ」
「今は王都の魔力収集魔法陣が起動してるから魔法は使い放題だよ」
こぉぉぉぉ・・・
ぉぉぉ・・・
俺の名前はベネット・ブライアス、37歳独身だ、今俺はファビオラから魔法陣を渡されブライアス王国に転移しようとしている。
こいつが大魔法陣を起動させてから丸一日経った、あの後大勢の騎士がこの店を破壊する勢いで押しかけて来やがったが今は全員眠らされて裏庭に転がってる。
それから居間のテーブル上に置かれた禍々しい魔道具は嫌な音を立てて今も稼働中だ。
「女の子は可哀想かなぁ・・・今からもう一度警告して次に来たら本当に全員ハゲにするって言えばいいか」
昨日眠ってる騎士どもを裏庭に運んだ後、奴が不穏な事を呟きながら空中に魔法陣を描くと無数の光の粒が天井を通り抜けてどこかに飛んで行った・・・恐らくあれがハゲになる魔法なんだろう・・・。
奴は店の中を壊されてえらく怒ってる、これからどうするんだって聞いたら恐ろしい計画を俺に話しやがった・・・俺が急いで帰国するのもこれが関係している。
「アルファ王国のクソ貴族どもが気の毒になって来たぜ」
「おじさん用意はいい?、デュラハァーンちゃんも一緒に転移させるから外に行こう」
俺達が裏庭に出ると仲良く並んで眠っている男達がデュラハァーンに舐め回されていた、不幸にも全身涎まみれになってるのは確かこの国の王太子だ。
「わぁぁ・・・デュラハァーンちゃん、それは食べ物じゃないよ!、汚いから舐めちゃダメ!」
こいつらの頭髪や髭はファビオラが魔法を放った後抜け落ちた、髪が残ってるのは僅か数人・・・奴らは恐らく平民上がりの文官や騎士だろう。
「お腹が空いてるならこれを食べて」
ささっ
もっしゃもっしゃ・・・
ぴきーん!
ふしゅうぅぅ!、ぶふぉぉぉ!、ぶふぉぉぉ!
こいつ・・・ローブのポケットから紫色の草を取り出してデュラハァーンに食わせやがったぞ!。
「おい!、俺のデュラハァーンに変なもの食わせるんじゃねぇ!」
「変なものじゃないよ、僕特製の元気になる薬草だし」
いや絶対やばい草だろ!、ここ数日でようやく落ち着いてきたデュラハァーンの目がまたキラッキラになって口から魔力が煙みたいに出てるじゃねぇか!。
「僕はこれから色々やる事があるからもうおじさんを転移させていいかな?、いいよね?、ほい転移っ!」
「おいちょっと待・・・・」
奴が手を翳すと俺とデュラハァーンの身体が光り輝く白銀の魔法陣に包まれた・・・。
私の名前はグルー・ヴォンド・アルファ三世・・・昨夜私の髪が全部抜け落ちた、私だけではなく城にいる貴族男性全員だ!。
今も国の各地に住む貴族家当主から早馬で続々と異変が報告されている、宰相は朝から意味不明の独り言を呟き使い物にならないから私は宰相補佐のゲイリーに向かって尋ねた。
「今のところ頭髪が抜けていない貴族男性は居ないのだな」
「はい・・・大人も子供も全員抜けております」
髪や髭はもちろん眉まで全部抜け落ちたゲイリーが私に答えた。
「女は?」
「女性で頭髪が抜けた者はおりません」
「・・・」
異変は昨夜遅く起きた・・・、私の命令により白銀の魔女を捕縛する騎士達が城を出て数刻経った頃、執務机の書類の上に何かがばさりと落ちた。
隣では宰相が絶叫し部屋の外からも悲鳴が聞こえた・・・何が起きたのかと落ちて来たものを確認すると見慣れた金色の長い髪・・・私の頭髪だった。
「うわぁぁぁっ!」
『(ぶつっ!)・・・えーと、王都の皆さん、夜遅くお騒がせして申し訳ありません、ファビオラ・ユーノスです』
空を覆っている巨大な魔法陣から白銀の魔女の声がした、とてつもなく大きな音だ。
『警告したにも関わらず先ほど僕のお店に騎士達が押しかけて来て破壊行動・・・商品を台無しにされました、これは僕に対する敵対行為と見做し約束通り皆さんにはハゲになってもらいました!』
「・・・」
『でも女の子をハゲにするのは心苦しいので対象を男性の貴族に限定しています、でもこれから先また僕の平穏な生活を邪魔するような事があれば遠慮なく「全員」をハゲにします』
「ひっ・・・」
私の隣に控えていた事務メイドの子が慌てて自分の頭を押さえた、私や宰相の頭を遠慮がちに見て絶望的な表情をしている・・・そういえば彼女は上級貴族家の次女だったな。
『これはアルファ王国に住んでいる貴族の皆さんへの最終警告です、「次」に僕を怒らせたら貴族全員をハゲにして王族の心臓を止めます、次は男女、大人や子供も区別しませんので慎重な行動をお勧めします』
「・・・いつでも殺せるという事か」
隣でゲイリーが怒りに震えながら呟いた・・・心臓を止めると言っているからそうなのだろうな。
『僕を暗殺しようとしても無駄です、僕の身体が外傷を受けた時はそのまま同じ痛みと傷を皆さんに返すように今「設定」しました・・・あ、ちょっと試してみようかな』
ぷしっ・・・ぽたぽたっ・・・
「ぐっ・・・」
「何だ!、手から血が!」
『僕の左手の甲をナイフで切りました、左手が切れている人は全員僕に命を握られていると思って下さいね、ではもう夜も遅いし住民の皆さんの迷惑になると思うので警告はこれで終わりにします、おやすみなさい・・・(ぶつっ!)』
「すぐに動ける騎士を集めて魔女の店を警護させろ!、誰も店に近付けさせるな!」
私はゲイリーにそう命じた、この国の貴族や平民の中にも王族を殺したい奴が数多く居るだろう、私とて民に恨まれている自覚はあるのだ。
今魔女にちょっかいを出せば簡単に王族を殺せる・・・あのクソ魔女はたった今王都中にその事実を公表したのだ。
どたどたっ!
バタン!
「お・・・お父様ぁ!」
「こら、ノックをしろ!」
執務室の扉を蹴破る勢いで中に入って来たのは王妃と王女・・・私の妻と娘だ、左手を見ると傷を負っているのか包帯を巻いている。
「私ハゲは嫌ぁ!」
「私もです!、早く対処を!」
2人とも何で私の頭をチラチラ見ているのだ!、そういえば髪が抜け落ちてから彼女達には会っていなかったな・・・。
「私のかっこいいスットコ様もハゲになってしまいましたわぁ!」
スットコというのは娘の婚約者だ、大貴族ドッコイ家の嫡男で彼が大臣職を父親から引き継ぐ2年後には結婚させる予定だった。
私は騒いでいる女性陣を横目に見ながらゲイリーに指示を出した。
「大至急白銀の魔女と空の魔法陣について調べるのだ!、無効化する方法もだぞ!」
読んでいただきありがとうございます。
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