脱出 7
そこはチベットとネパールに跨って存在している世界最高峰の山、エベレスト。
遠くから見れば美しく、しかしその険しい山は、毎年何百人と山頂を目指し登山していると同時に、数人の死者数も出ているまさに恐怖の場所でもある。
それでも絶えず、人々を魅了して止まないこの山のとある場所で一機のヘリが待機していた。そして、そのヘリを守るかのように立っている一人の美しい女性。
それは、和夏と同じ組織に所属しているジンシーであった。
彼女は腕時計を眺めながらつぶやく。
「指定の時間が過ぎようとしているな。私からの依頼があるからとはいえ、かなり手こずっているのか?それとも……」
あと二時間ほど待って来なければ、と考えている時、ザッ、ザッ、ザっ、と二人ほど歩いてくる足音が周辺に響いてくる。
(和夏、か?もう一人はサグメ……いや、しかしこの足音。もう一人は何か大きなものを担いでいるのか?いいや、三人か?気配的には…分からないな)
ジンシーは構える。和夏であれば、何も問題はない。しかし、和夏が捕まってしまい、こちらの情報を流してしまうような致命的で最悪な状態になっているのであれば―
しかし、彼女の考えは杞憂に過ぎないものであった。
「アンタがジンシーか?」
そこに現れたのは、貧弱そうな兵士とローブを身に纏い、フードを深く被って顔を隠している女。そして、その女が抱えている者こそ、よく知る和夏であった。
「ああ、その通りだが…見た感じ、かなり追い詰められたようだな」
「追い詰められたっていうか…とりあえずコイツは魔力切れを起こして寝てるだけだ」
命に別状はない。そのことが分かればもっと安心するジンシー。そこで、さらに質問をする。
「君がサグメかい?」
「そうだ、アンタが和夏にスカウトを命じた奴なんだよな?」
「その通り、ちなみにそこの男は……」
そういってジンシーは下級兵の方へと意識を向ける。
「いいや、俺は、その…」
サグメはその実力あるゆえに、ニュー・ラスールに招かれている。このヘリに乗る資格というか、理由は充分にある。しかし、自分はただ命が助かりたいという、大切で、しかし決して大儀ではないその理由を言い出せずにいると。
「まぁ、気にしないさ。我々は弱者を救済する組織。であれば、君がついてきた理由はなんとなく察せられるよ。さぁ、乗りな。目的地はニュー・ラスールの本拠地だ」
そういって、三人はヘリに乗り込み、そこから上空へと飛び立つ。
「……ちィ、体が上手く動かねぇ」
和夏はこのタイミングで少しだけ意識を回復させて、上半身を起こす。
「魔力が切れてまだ一時間とちょっとしか経ってないのに、もうそこまで復活したのか?やっぱアンタはタフだなぁ」
戦闘狂がうずうずしながら、その気持ちを抑え、和夏を眺めていた。
「おつかれさん、じゃあ私が言っていた予定通り、君は数日間の休暇だ」
ジンシーはまだ意識がぼやけている和夏に対し、激励の言葉を送るのであった。
「…そう、か。それは…良かった……もう少し、寝ておくよ。俺は…疲れた」
そういって、再び眠りにつく和夏。
こうして、一つの任務を完遂させた和夏。
この一時の休みが、いつまで続くのかは、分からない。
しかし、これだけは言えるだろう。
彼の戦いは、まだ続いていくのであった。
アウトサイダー・ウィザード 完?
※ここから先はあとがきのようなものです。気になる方だけ、どうぞ
どうも初めましての人は初めまして。見たことあるという人は、どうも、作者のリノエです。
今回が二作目の完結作品?になります。まぁ、最初に書いた作品も、続編の二部を書くと言っているし、この作品も一応、考えていた続きのストーリーがあるので、どうなるか分からないですが。
しかし、小説を書き始めてもう二年以上経ちます。やはり、文章能力とか、書くスピードが格段に上がっているのが実感できますね。そして展開の仕方なんかのコツがようやくつかめてきたような気がします。
しかし、前作は結構、読んでくれている人が多かった感覚がありますが、今作はかなり少ない気がします。やはり、ここはなろうというプラットフォーム。それらしく、異世界で、最強で、ハーレム系を書いた方が人気出るんでしょうかね?
ちなみにですが、これは私が前に書いた、というか一作品目にあたる『ゲームからスタートする正解冒険譚』と実は繋がっている箇所なんかがあるのです。
まぁ、今作と前作を呼んでくれてる人なんて、いるのか分かんないですけどね。
とりあえず、今日はここまでにしときましょうか。
次の書きたい作品がもう脳内である程度、仕上がっているので、来週までそれを今度は書いていこうと思っております。
では、また何処かで会いましょう、作者のリノエでした。