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アウトサイダーウィザード  作者: リノエ
19/30

破壊工作 4

 また、一方でローブの者と警備長の二人の戦いもクライマックスを迎えていた。


 警備長は接近し、素早く剣を振っていく。その動きは素人のものではなく、何かしらの剣術のようだ。無駄な動きがなく、素早い。しかし、剣捌きを軽々と避けていくローブの者であった。


 その動きはまるで背中に羽でも生えているのではないか、と思ってしまうほどに軽やかであった。


 そして、ローブの者は素早くバックステップで距離を取りながら、反撃する。なんとローブの中から、一本、二本、三本と矢が飛び出し、放たれたのだ。


 それは、弓を使っているような動作ではない。クロスボウでも使っているかのような、真っ直ぐと飛ぶ矢の動き。しかし、その者の腕は全く動いておらず、武器を使わず矢を放ったことが分かる。


 「いつ見ても奇怪な技だな!」


 やはり、短期間とは言え一緒に働く仲間だったからか。その者がどんな攻撃をしてくるのか、その動きを事前に予測していたようで、簡単に矢を見切り、斬り捌きながら追いかけていく。


 「私だけを追っていると、足元を掬われるぞ?」


 そう言ってパチン、と指を鳴らす。すると、いきなり上からバスバスバスッ!と矢が降り注いで行く。


 警備長は自分を中心に半径二メートルほどのドーム型のバリアを展開し、身を守ろうとする。その瞬間


 「油断したな!」


 展開し切る前にバリア内部へと侵入。そして、展開し終わったときには、バリアで二人きりになっていた。出れば、矢の雨。中には、ローブの者。


 だが、警備長が剣を使う近距離戦であるのに対し、こちらは矢を用いた遠距離戦を得意としている。のにも関わらず、自分から近距離戦を選んでくるとは―


 (だが、予測出来なかったわけじゃない!)


 戦闘狂であるというのを理解していた警備長は、もしかして……とこの状況を予測していた。だからこそ、慌てず、冷静に、迷いなく次の行動へと移ることが出来た。


 この場合、大振りの攻撃はダメだ。当たればほぼ殺せる。仮に魔法や魔力でなんとか耐えきっても、そこから確実に殺ための一手へとつなげることが出来る。だが大振りの攻撃というのは立ち直るのに時間がかかる。避けられてしまえば、立ち直っている間に反撃されてしまう。


 ここは小振りでいく。


 倒せはしないだろうが、今はこの矢の雨が止むまでの時間稼ぎだ。この雨だって永遠じゃない。事前に準備していた矢を遠隔発射しているに過ぎない。


 それに、近距離戦ではこちらが有利。不意を突いたつもりだったのかもしれないが、こっちだって相手を甘く見ているわけではない。油断はしない、傲慢にもならない。そう簡単にやられはしない。


 矢の雨が終われば、即座にバリアを解除。さすれば、こちらも距離を取る、魔法を使うなど別の手段を選択することが可能になる。


 (彼女に攻撃の隙は与えん!だが、俺自身、ここで彼女を倒せるわけがない。一度、耐え忍ぶ!)


 だが、彼の考えは甘かった。


 彼の小振りの攻撃が、強く跳ね除けられる。


 「なッ!」


 魔力を込めた拳程度では押し負けない……いや、それどころか拳が真っ二つになるぐらいの力を魔力量で斬りかかっている。では、一体何に押し負けたのか。


 それは、矢であった。


 (魔力で矢を強化した!?だが、魔力による補強だけで、これだと!まるで槍のような硬さだ!!)


 ここまでは予測つかなかった。


 彼は剣を強く上へと跳ね除けられた反動で、動けなかった。


 そこに、グサリ、と胸部に矢を突き刺す。


 「ッ!」


 鋭く、一筋の痛みが身体を駆け巡る。だが、悶絶するほどではない。今は―


 ローブの者はいくつもの矢を取り出し、何度でも身体に突き刺していく。


 そして、矢の雨が止むころには、全身矢だらけで、血まみれになって倒れていた。


 「……ここまで…か」


 「遠距離のみと決めつけていたのがお前の敗因だ。単純な魔力量や肉体では私には負けないレベルだったのにな……判断力に思考力が悪かった」


 「そう…か……早く、俺を殺せ…」


 彼は、か細い声で、痛みに耐えながら言う。


 「安心しろ、心臓や大動脈がある場所には刺してない。出血多量で死ぬことはないだろうな。だが、痛みと疲労ででほっとけば数時間は気絶確定だ」


 「俺を…殺さないのか?」


 「私は戦闘狂だが、シリアルキラーじゃない。殺すのは好きじゃない。それに、お前はまだ伸びしろがある。また強くなって、戦いに来い!真正面から強くなったお前をぶっ潰してやるからよ!!」


 「お前のよう、な…サグメがそう言う……のであれ、ば…俺は…まだ―」


 フードで顔は見えない。だが、きっとニッ!と良い笑顔なのだろう。そう考えながら、警備長である彼は最後まで言葉を紡ぐことが出来ず、深い眠りにつくのであった。

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