表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

詩「海に続く窓辺から」

作者: 有原悠二
掲載日:2023/05/16

夜に取り残された

現実という小さな窓から見える

砂浜の面影にたたずむ母は

いまでも見失い続けている


ぼんやりとした過去の虚像を

透き通るような青い海辺を目の前に

落とした貝殻を探しているかのよう

その顔はたまにしか笑わない


思えば兄の死から何年経ったのか

わたしは海のある家を捨て

海のない場所で新しい家を建てた

ここは決して波の音が聞こえない


だからかもしれない

世界はより鮮やかに

より繊細に過去の夢を見させてくれる

まだお互いに笑えていたあの日ですら


生暖かい風の匂いも

底に手が届きそうな透明な海も

葬儀の日に見せた母の涙も

どこまでも歩いていけそうな遠浅の


感情が追いつかないその向こう側

わたしは母を永遠の過去に取り残してしまっ

 たのかもしれない

朽ちていく美しさを忘れたくて


それでもたまに

どうしても見たくなるときがある

青い空が溶けてしまったかのような

どこまでも果てしなく広がる青い海の果て


そこにたたずむ

古ぼけた新聞紙を手にした母が

電球の切れた部屋でそっと目を閉じる姿を


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ