第8話
ポクポクとカートが進んでいく。
御者台に座って手綱を持っているのは僕。シィーは隣に座っている。のはいいのだけど、僕の髪の毛に指を潜り込ませてくる。なんかくすぐったくてきしょい。時折、シィーの方を向いて抗議の視線を向けているのだけれど止めてくれなかった。
「ニィシーナァシャゲ(おまえはどっちだ)」
唐突に聞いてきた。
「僕はファンナだよ」
「そっか」
シィーは素気無く呟く。
『どっちならいいのか』
僕の声、突然低い声に変わった。
「むさい奴よりファンナが ハォデ(よい)」
『ハッハッハー そうだよな では俺は沈む』
「あっあー」
元の声に戻った。
橋を渡りきり詰所に寄って預けてあったシィーの大刀を受け取る。詰所の皆さんは何か言いたそうだけど、シィーの人睨みで沈黙してしまった。すると
くう〜
と可愛い音が聞こえた。隣に立っているシィーの顔を見ると紅くなっている。唇に人差し指をつけて薄く微笑んでいる。
「沈黙は金だね。皆さん」
詰所の方々にも話しかけたが多分末代までの語り種になるんじゃないかな。
「シィー姉 うち来る。うちは食事できるよ。さっきの川エビも食べてみてよ」
「ハゥタ(OK)」
詰所のある川沿いで軽食やら花から野菜とが小さな屋台で並んで売られている。良い匂いもしてきてお腹を刺激してくる。
くう〜
また、聞こえてきた。
「ヴレストで良いかなぁ。買ってくるよ」
道端にカートを寄せて止まり、腸詰肉のヴレストを焼いて売っている屋台を見つけて
「お姉さん2本ください」
買ってきた。機嫌がよかったのかな、ヴレストの端をくれた。
「シィー姉、是非に食べてね」
1本を渡すと早速、齧り付いていた。弾け出た肉汁が口端から垂れてる。
「アゥシャア(熱う) でもハウチイ(うまっ) ホアンジュ(黄酒)が飲みたくなる」
2人で美味しくヴレストを食べながら通りを進めていった
「入っているハーブで後味が良いなぁ。シア姉知ってるかな。聞いてみよ」
「後で教えてくれ ザイチャーゾゥ(家で作るよ)わ」
「ちょっと寄り道するね」
「どこいくね」
「ギルド。シィーが倒した魔物のドロップ品を買ってもらうんだよ。結構な値段になるよー。冒険者の収入源の一つなんだよ」
「それでかぁ、よく魔物の倒した後に三下が拾ってだよ」
「換金すれば、良いところに泊まることだってできるよ。そういえば今日はシィー姉はどうするの?」
なぜかシィーは僕から視線を逸らした。
ありがとうございました。