第2話
よろしくお願いします
ハラヘッタ クイタイクイタイ
オッ ヒトムシノニオイスル
アレはサケビゴエヲキキナガラアタマカラカジルノガイイ
シルガウマインダ
オッニクノニオイモスル
ウマソウダ
ウマソウダ ハラヘッタ クイタイ
クイタイ クイタイ
クイタイ
ファンナが踵を返した、その時に
ドン
首の後ろに衝撃を受けた。前方に飛ばされたが、前のめりに転ぶのは踏ん張って避けた。丁度、背負っているバスケットに乗っているようだ。がサッガサガサッと音がしている。
(ランチパックを盗りにきてるのか)
体を左右に大きく揺すってみるが離れた様子がない。頭の後ろにいるから何なのかも分からずじまい。後ろから薄黒い靄のようなものが漂ってきてる。それに鼻が曲がりそうな匂いもしてきた。それに思い当たりファンナは叫んだ。ファンナは思い当たるものがある。
「魔のものだあ! 魔物が出たー」
それを聞いて驚き、ファンナの周りの人々が蜘蛛の子を散らすように逃げて行く。ポッカリとファンナの周囲が空いた。
左右に振っても引き剥がせないから、ファンナは通りの端に寄り、
「CALL SPRING up exaction!」
魔法を発動して、一度屈み込み、そして体を跳ね上げた。勢いよく上に飛び上がって行く。近くの建屋の屋根近くまで上がったところで軒先に足を引っ掛けた。ファンナは止まったが後ろに取り付いた魔物はそのままの勢いで飛び上がって行く。
猿のようさ魔物だ。魔法は継続中。もう一度、屋根を蹴りファンナは魔物を下から追いかける形になった。
空中で足を跳ね上げ、オーバーヘッドキックで魔猿を蹴りおろす。こっちに大刀士がいるはず。叫んだ。
「シャオチエ!マッソー シィーホぅン」
うまい具合に魔猿が大刀士に向かって落ちていった。パーティ効果か叫びが届いたようで、大刀士は刃先の拵えを飛ばして柄を回した。
ズドン
石突で落ちてきた魔猿の動きを止めると、更に穂先の刃を素早く還して切り付けていった。
シャィーン
魔猿は斬り飛ばされた勢いのまま往来に落ちて擦り止まった。すぐに痙攣を始めて、周りに黒い靄を吹き出し始めた。
ファンナはそれをみて
(ブービートラップか)
周りに向けて叫ぶ。
「瘴気だあ!バーサーク始まるぞー」
魔に侵されたものが死に瀕した時に大きく禍々しいものへ変形し暴れる仕掛けになっているのに気付いたのだ。魔猿と大刀士と周囲からみるみる人が退いていく。
ファンナは魔力で軟着地すると大刀士がいる方を見る。フワッと真珠色のサーコートが舞い上がり、その影から大刀を竜巻の如く旋回させて大刀士は凶暴した魔猿を斬りつけていく。
ズシャッ ドオゥ
大刀士は勢いに任せて胴を切り離した。下半身は残り、通りに面した大きな商館の前に止まっていた二頭立ての馬車へ上半身が飛んでいく。
バシュ
命が尽きたであろう魔猿の上半身は馬車にあたる寸前に爆散してしまった。時をおかずに下半身も爆散する。鈍く光る大きめの魔石が残った。魔のものが骸になった後に石が残るのである。魔力が篭っていることもあり高額で取引されていたりする。
ありがとうございました。