第13話
よろしくお願いいたします。
「ローゼ」
僕はローゼマリアを呼ぶ。
「何?」
「静かに、こっちに来て、後ろを向かないで」
「えっ何、何かいるの?」
僕は唇に人差し指をつけて、'しゃべるな'ってジェスチャーを送る。恐る恐るローゼマリアはこちらに向かってきた。近くに来たところで彼女からの手を取り、僕の背中へ回した。
GURUU
下草の影から唸り声が聞こえた。小さい声だけど体が震える。ローザリンデは獣の子を抱え込んだまま、しゃがみ込む。ローザマリアは膝から崩れ込むように倒れ込み、頭を抱えて震え出した。周りの木々からは鳥たちが飛びだち、下草から鼠やイタチなんかが飛び出して逃げて行く。木の上から枝を伝って逃げて行く獣の叫び声が聞こえてきた。
そして白い獣がローゼマリアかろ出てきたのと同じところから現れた。大きい。獣の肩までの高さと僕の胸と同じぐらいにある。全身を覆う白い毛皮、額だけに赤い紋様が浮き出ている。ローゼリンデが抱えている獣と同じだ。
「親だね」
気を取り直してローザマリアが言ってきた。母子なんだろう。僕たちではなくローザリンデが抱えている子を見てる。そして周りの雰囲気が剣呑なものに変わって行く。獣の子の足の怪我は治っているけど、血の跡は拭えていなかった。それを見つけたのか。
HOUWOOOONN
そして吠えた。ただの鳴き声じゃない。圧を感じる。踏ん張らないと後ろに飛ばされてしまいそう。ローザリンデは道の反対側まで転がっている。
(ファンナ。ちょっとよいか)
中の人からだ。
(立て込んでる)
(そいつ、神様だ)
(なんだって)
(アセナ神、やっとこさ思い出したよ)
(獰猛なの?)
(いや、温厚、子宝の神だからかごどもに関しては勇猛果敢)
(早めに思い出してよ)
(すまん)
今更、聞いてどうこうないのだけれど、重要なことも含まれている気がする。
「ローゼ、ローザリンデをお願い、それと得物貸して」
しゃがみ込んで転がらずに済んでいるローゼマリアに頼んでみる。
「わかった。私のは枝払いの鉈だけど」
「それで良いからお願い」
僕は手を腰へ回して、後ろにいるローゼマリアに催促する。すぐに鉈の枝を持たせてくれた。
「ありがとう、ローザリンデと一緒にいてやって。できるだけ体を低く落としてね」
ローゼマリアの気配が離れて行く。
アセナ神は威嚇のためか喉を鳴らすのをやめない。左右に移動して僕の後ろにいる自分の子の様子を見ようとしている。僕もそれに合わせて左右に動いて後ろの二人を見えずらいように壁になっている。暫くは膠着していたけど、いつまでも続けるわけにはいかない。
アセナ神も痺れを切らしたのか、左右に動くのを止めた、そして僕に視線を合わせてきた。ひえー視線だけで心臓止まりそう。実は膝もガクガクだったりする。更に体を低くしだした。後足に力を溜め出している。
(ねえ、頼まれて欲しいのだけど)
(なんだ? 体の瞬間交換なんてできないぞ)
(ブレードダンス使わせて)
(良いけど、神様を切れるかわからないぞ)
(切れたら儲けモノだよ、やってみないとね)
(了解。まずは息は腹でする。ゆっくりと静かにな)
(わかった)
僕はお腹を膨らます要領で、ゆっくりと息をする。いっぱい吸って息を止めた瞬間、アセナ神が動いた。貯めていた力を解放するように飛び出してきた。狙いは僕。
ダッシュしてくるアセナに後ろ手に隠していた鉈を投げる。わざと鉈の刃角度を合わせて目立つようにして、近くに寄ってくる足元に向かって。アセナ神が反応して飛び上がる。前足で僕をそのガタイで押さえるつもりか。
「CALL BLADE DANCING 」
素早く体を沈め手を地に付ける。
「exaction」
発動させた。地面が矩形に光る。長さは僕の身長より長いよ。光るところに手を差し込み引き抜くと地面から粗削りな両刃が出てくる。そのまま引き抜きアセナ神の前に刃先を空振りする。刃が通りアセナ神の体勢が崩れたところへ、振り抜き、後ろに回した両刃剣を下段に回して死角となる腹側へ切り込んだ。
ありがとうございました。




