第12話
よろしくお願いいたします。
ローザリンデが抱えているのは毛皮を纏った獣、大きさからすると子供だろう。白色の毛だ。頭には赤色の紋様が浮き出ている。近づいてみると右の前脚から出血してる。傷口は鋭利なものがささった感じ。多分、金属製の歯がついた罠にかかったんじゃないかな。生肉が置いてあって突いて罠に挟まれたと。脚が細いから千切れなくてよかった。痛かったのか目元に涙が残っている。
「布で巻くから、もう少し持っていてね」
「わあったぁ」
ちょうどローザリンデが抱え直し、顔が毛皮に埋もれたところで聞いてしまった。
背負っていたカゴから比較的に綺麗な布を取り出して細く千切る。それを傷口に巻いていった。
「なんか、凄い痛そうだね。かわいそうだよ」
ローザリンデまでつられて涙を目に溜めていた。
「ねえファンナ」
「何?」
「魔法で治せないかなの」
「ヒールかぁ、あれは聖女様の奇蹟の加護だよ。祝詞はわかるけど魔法力がなあ」
聖女の奇蹟に関しては秘中の秘なんだけど中の人は知っている。
「やらせて」
(まっ、いいんじゃない。俺も興味ある)中の人からの声。
「では、アクセプト.ヴォロ サナ ブレネラ トォア ヒール シリアス ウーンズ」
ローザリンデも祝詞を紡いでいく。
「アクセプト.ヴォロ サナ ブレネラ トォア ヒール シリアス ウーンズ」
ローザリンデを中心に魔力が渦を巻く。
「ローザリンデ、祈って!治したい、あなたと共にありたいと」
「わんわんさん、あたしはあなたといたいの。ケガをなおしたい」
見えない力の魔力が色を持ち始めた。無色から紫、藍、碧と、そしてローザリンデに収束して行く。ローザリンデは傷口に光を向けた。碧の光が患部に染み込んで行った。光が収まった後、巻いていた布を解いてみる。傷口は消えていた。固まった血の跡は残っているが。
「出来ちゃった。きれいに治ってるよ」
「やったぁ、…あれ」
ローザリンデは座り込んでしまう。甚大な魔法力を使ったんだから仕方ないね。ひら座りしているローザリンデの唇にファンナは指を当て、
「ひとつ約束してローザ、治せたのはナイショ。僕と君の秘密」
ローザリンデはうなづく。
「この力も秘密。僕がウンと言わないと使っちゃダメだよ」
「なんで?」
「使ったら、ローザとは二度と会えなくなるから」
「会えなくなるってなんで?もしかしてお姉ちゃんとも」
僕は無言で頷いた。ローザマリアの目を見ながら。
「そんなのいや! 約束するね」
僕はローザリンデを撫でてあげた。ヒールができることで聖女認定なんてされたら教会が動き出し、彼女を囲ってしまう。一部の人しか恩恵を受けられずに。
力を使い切り身罷って骸になって僕らのところに戻されるだけ。そんなの嫌だろ。秘密にしなきゃ、本当に使わなければいけない刻がくるまで。
あれっ肯定の意思が伝わってくる。ローザリンデじゃないし、もしかして獣の子?
まただ。
まさかローザリンデとパスが繋がったかなあ。凄いや。
「ローザ、驚かないで聞いてね。その子と話ができるよ。試してごらん」
「えっなんで?なに?わんわんさんなの」
もう、何が何だかわからないよ。僕は目の前で奇蹟を見たんだね。
「ローザリンデ、どこ?」
木々の間からローゼマリアの声がする。
僕は唇に指をつけてローゼマリアをみる。彼女も頷いた。
「お姉ちゃん、こっち。ファンナもいるよー」
下草をかき分けてローぜマリアがやってきた。
「ふぅ、少し奥まで入ったからね。熱冷ましや毒消しの薬草取れたよ。ギルドで買い取って貰えそう」
ホクホク顔である。身体中に葉っぱやトゲトゲ種子をつけてきた。
「あれ、ローザ。その抱えてるのなに?」
「少し奥で見つけたの、子どもなの、怪我してたの」
ローぜマリアナは指をたてローゼマリアを諭すように、
「勝手に連れてきちゃダメでしょ、親がいたら大変よ」
ローゼマリアは気付けなかった。自分の後ろに白い獣がいることに。
獣の唸り声にみんな震え上がったよ。
ありがとうございました




