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第10話

月の冷たい光が窓から差し込んでいる。ファンナは目が覚めた。陽が登るのはもう少し経ってからだろう。狭いけど1人だったら充分な部屋。シアターは個室を用意してくれた。隣では姉妹がひとつのベットで寝ているはず。夜目が効くから薄暗くても動くには不自由しない。寝巻きにしている貫頭衣を脱いで着替えていく。成長途中の華奢な体躯が現れる。枝束亭の裏口から外に出る。

 裏には荷車を用意してある。載せてあるのは水桶ふたつ。少し離れた丘下の湧水を汲みに行く。新献立が好評でお客が増えて売り上げも上がったから荷車を買えた。その前は小さい水桶を天秤棒で運んでいた。洗い物は川水を使っているけど料理には湧き水を使うのはシアターのこだわり。もうひとつ手桶を載せて出発。一応2往復の予定。

「えっほ、えっほ」

 不思議な掛け声を出しながら1回目の汲み取りを終えて帰ってきた。荷車を止め肩にかけている引帯を外す。建屋から突き出すように台があり、そこと高さが合うように荷馬車をおく。そのまま水桶を荷車から押し出すようにすると台にスライドして収まる。大工さんの知恵の賜物だね。力が入らないや。そしてまた荷車に水桶を載せて泉まで。

 空が藍から青くなり始めていく。枝束亭に近づくとローゼマリアが飛び出してきた。

「ファンナにお客さん!女の人だよ。ねえ、誰?」

 早口で話してくる。よほど以外であわてたんだね。

「誰だろう。こんな早く」

「食堂で待ってるから急いで」

 荷車を裏の台にセットし水桶を載せて、裏口から厨房を抜けて食堂まで行く。

「ニーザオ(おはよう)」

 シィーだ。テーブルのひとつに座っている。大刀使いのシィー。英傑の1人。

「シャオチィエ ザオシャンハオ」

 昨日、再会したシィー 、シィー.スァンだ。よく、ここがわかったなぁ。

「そこの令嗣、おはよう」

 お連れさんもいる。ブラウンの髪を高い位置でひとつに留めている、目元涼やかな女性だ。

「あー昨日の女官長さん」

 2人とも綿の洗いざらしのシャツに黒パンツで足元は編み上げサンダルでラフな服装だ。走ってきたのか、汗を拭いていた。

「よく、ここがわかりましたね?」

『その悪口人形に案内させた。朝の鍛錬してたらフヨフヨと飛んでたから捕まえて吐かせた』話 シィー 訳 ファンナ

 ふたりが座るテーブルの側にローザリンデがいた。出来損ないな魔女スタイル人形を抱えてる。人形もそこそこの大きさがあるからか抱えているローザリンデがフラフラと心許無く立っている。

「ネイチャー」

 思わず叫んだ。ネイチャーと呼ぶ人形は、貴族街にいる魔女スターチスのマギークラフト。彼女の変わり身なんだ。しかし動いていない。人形だから当たり前なのだけれど、ネイチャーは普通に喋り、体を動かす。空だって飛べる。それが全く動かずにローザリンデに抱かれている。スターチスとの間のパスが切れているんだ。だから体を動かす指令がいかない。情報も伝達しない。スターチスのマギークラフトの1号機であるネイチャーのパスは短い距離しか繋がらない。それこそ屋敷周辺ぐらい。2号機の僕は、その辺りを改良。中継も思慮に伝達距離を伸ばしてあるんだ。

「ローザリンデ、重いだろ。僕が持ってあげるよ」

 人形を受け取り抱き上げてあげる。さあ、やろう。パスのディザリング、ブリッジモード。僕と貴族街で治療中のハッシュロックを繋ぐ複数のパスの内のひとつをネイチャーに繋げる。

(こっちのスターチスは気を失ってる。無理に意識を切られたからな)

あっちのハシュロックから伝わる。

(まあ、なんとか繋げるよ。シアターには見せられないけどなぁ)

 イメージが飛んできて僕も赤面。

 しばらくして、

「ぷファー」

 ネイチャーが意識を戻した。

「いきなりロープに絡まって、落とされ、ファンナのとこ行けと命令された。全く酷い話だぜ」

 この悪態はネイチャーだ。ちょっと安心。ネイチャーはフヨッと浮き上がり周りを見渡し、シィーを指差して、

「コイツだ。シィーって言ったっけ。酷いよ」

「クゥアンニーピシィ(知ったこっちゃない)」

「ヴー」

「シャオチィエ、なんでここへ?」

 ここにきた訳を聞いてみた。

「約束 川海老の点心 食べる 新しい料理」

 辿々しくもシィーが話してくれた。スターチスの屋敷の後に食べようと約束したこと、女官長に強制回収されてできなかったこと。他の料理も教えたかったこと。ありがたいけどネイチャーにしてみればバッドラックでしかないなぁ。

「場所、わかったから、またくるよ」

「帰るの?ネイチャーはどうする?」

「お前が戻しとけ」

「「ひでぇー」」

 ネイチャーと2人で抗議した。

 結局、3人で貴族街の公爵邸までランニングすることになった。ネイチャーを連れて。因みに女官長も同じペースで走ったから、かなり鍛えているんだね。唇に人差し指を当てて内緒とアピールしてたなぁ。

 後日、シィーは明るいうちに枝束亭に訪ねてきてくれて、いくつかの点心に肉料理を教えてくれた。新メニューとして好評になった。




ありがとうございました

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