第9話
僕らの横を4頭立ての大型4輪キャリッジか勢いよく追い越して行った。ここでは幅寄せられることもなかったけど、その御者の掛け声、馬の嗎が聞こえ、少し先でキャリッジが止まった。豪奢な作りのドアが開き、スーツを着た家令が降りてきた。その男が馬車の横から階段を引っ張り出して地面には大きいカーペットを敷いたりしている。
もう1人降りてきた。派手ではないがそれなりの生地を使っているドレスを着て髪は編み込んでいる婦人も降りてきた。
シィーの細い目が見開かれ、カートから腰を浮かせて降りようと慌てている。
「姫御前」
鋭い声、思わず背筋がまっすぐ伸びた。シィーも同じに背筋が伸びている。
「先々日より御声を聞いておりませぬ。後姿さえお見かけいたしません。公議から御務めもされていないとも伺っております」
ゆっくりとですが、こちらに歩みを進めてきている。
「シィー姉。なんかした?」
「モォモゥチュークレェ(黙って出てきた)」
「仕事も?」
「二ェ」
すでにカートの御者台まで来てしまった。
「此方としましても、誠心誠意のご奉仕をさせております。御不満がございますれば忌憚なく申していただいて構いませんと常々お伝えしております。こちら真意がお伝えできていないと思うと心痛の極みでございますれば、お暇を頂いてもよろしいかと」
よく見るとグレーの瞳を持つ目が潤んでいる。
僕はシィーの肩を押し婦人の方へ差し出した。
「観念しましょう」
シィーは婦人に辿々しくも話をしている。
「で すか ら 手紙 を」
婦人は、すちゃっと指先に出してきて、
「こちらも次女のミーティアに無理矢理書かせたのでしょう。あの子が喋られないのを知っていて利用したのではありませんか?中身がなんであれ、このようなものは全く意味を成さないと同じです」
「読了?」
「ですから意味をなさずと申しております。あのミーティアが目に涙を溜めて、此方を拒絶し姫御前を庇っているのですよ。姫御前の企みとも知らずに。哀れと思われませんでしょうか?」
婦人は封筒をビリビリと破って細かくしていく。
「シェ 帰る」
「承ります。今、トリアーデ公へ使いを出しております。本日は公爵邸にてお泊まりあそばして、明日戻られるのが良きかと」
「まかせる」
シィーは手のひらをひらひらと払うようにして答えていた。
「では、こちらのキャリッジへ移らされませ」
婦人はシィーの背中をグイグイ押し、馬車へ乗せていく。
「そこな御令嗣、姫御前の鎧一式を公邸までお持ちして頂けますか」
否は無し。
もう一度、貴族エリアに戻ることになりました。帰りは遅くなるし、シア姉にはお小言いっぱい。陽が落ちる前に本日配ったランチパックのバスケットを集めるのに、全力全開て街中を走りましたー。
「こんちは 青鷺の枝束亭ですー 明日もご贔屓に」
ありがとうございました




