その9 再出発(Part. H)
「わあ、目を開けた♪」
「よかった…。」
ゆきうさぎが目を開けると、喜びの声がその場に溢れた。
これってきっと、回復の効果があるってことだよね?
「サピアちゃんは回復できるシャボン玉を作れるの?」
「…はい。わたしのシャボン玉には癒しの効果があるんです。スズちゃんのシャボン玉は、魔法の剣や盾みたいに使うこともできるのですが…。」
「なるほど(*’▽’)!」
確かに私がワープしてきたとき、スズちゃんは魔法の盾みたいな膜で炎を防いでいたっけ。
あれはシャボン玉だったんだと思ったり、偶然だけど膜の内側に転移できてよかったなあとちょっとヒヤッとしたり;
二人はシャボン玉の魔法を使うんだなあと思いつつ、じゃあシャムちゃんはと視線が行くのは自然な流れ。
「…私は、光の魔法を使います。明かりを灯すだとか、目くらましにするだとか、ちょっとした熱光線として収束させたり、光弾を射出させたりといった使い道でしょうか。」
「そうなんだ!」
日常的に便利なものから非攻撃、攻撃手段と幅広い応用手段を的確に教えてくれるシャムちゃんは、やっぱりしっかり者で、頼もしい。
それから皆の視線が集まっていることに気が付いたので…
「えっと、私とライ君は、ワープ魔法が使えるよ♪」「うむ(-ω-)。」
というか、それだけなんですけどね( *´艸`)
一応の自己紹介ということで、私からもさして新しくもない情報を提示する。
まあ、ライ君の中身は先生だから、他にも色々できそうではあるけれど…。
「それじゃあお互いのことも少しわかったことだけど…どうしよう?」
スズちゃんがサピアちゃんのシャボン玉に包まれたゆきうさぎを見ながら言う。
主な問題は、この子の処遇ということかな。
「…このゆきうさぎは、本来群れで行動しておる。元来雪に埋もれて体を隠しているからこんなに白いのじゃが、もう雪解けだから逆に白さが目立っておるが。」
ライ君が気を利かせてゆきうさぎについて教えてくれる。
それから突然ライト(本物の体の主のわんこ)に戻って、ワンワンと何度か鳴くと、ゆきうさぎもチチッ、チチチッと鳴いて反応する。
「すごい…会話ができるのですね。」
「…あ、うむ(-ω-;)まあ、わっちも妖精じゃからな!で、こやつ、どうやら仲間とはぐれていたところ、ドラゴンの冷たい皮膚に乗って涼んでいたら、突然竜が火を噴くもんじゃから、吹き飛ばされるわ体が温まるわで弱ってしまったのだと言っておる。」
中身がポケット先生になったり、元のイヌウサギになったりと忙しくさせながら、ライ君はゆきうさぎの通訳をしてくれた。
弱ってしまった体力は見ての通り、サピアちゃんのシャボン玉の力で戻ったらしい。
「…ということは、あとはこの子のお家探しっていうわけね。」
「スズちゃん…;」
「分かっているわ。サピアちゃん、送ってあげたいんでしょう?」
「-うんっ!!」
サピアちゃんのしたいことをすぐに言い当てるスズちゃん。
シャムちゃんもなにも言わなくても、了承している雰囲気が伝わってくる。
流石の仲の良さである。
「それじゃあお家探しには、この通訳さんも必要かな( *´艸`)?」
「え…来てくれるの?」
「もちろん!あ、皆が嫌じゃなかったらだけど…;」
乗り掛かった舟だし、私だってゆきうさぎのことを見捨てることはできない。
だったら一緒に探そうよ(*’▽’)!
そんな風に提案した。
その9 終
ひとこと事項
・スズランのシャボン玉の魔法
自分や仲間をシャボン玉に包み込んで空中浮遊させたり外的要因(敵の攻撃や環境の変化等)から護ったり、敵対する者には包み込みや泡の刀身とさせた剣で斬りつけて傷をつけることなく戦意を無くしたり、時にはただのイタズラに使ったりと、多岐に渡る。
実は、本来彼女自身に魔力はそれほどなかったのだが、ある出来事をきっかけにシャボン玉の魔力が宿り、シャボン玉を自由自在に操ることができるようになっていた。現在もさらなるアレンジについて考えている。
・サピアのシャボン玉の魔法
身に宿すは、癒しの魔力。サピアのシャボン玉には治癒の力が込められており、包まれていると怪我や体調の治りが早まる。その昔はいいように使われていた時期があり、疑問に思っていたこともあったのだが、シャムと、そしてスズランと会ったことにより正しく力を扱えることに、安堵したという。
なお、薄青の花があしらわれた杖を持っており、その杖はサピアの力に呼応して、より治癒力の高いシャボン玉を放つことができるが、大事な時にしか使わないと決めている。
・シャムの光の魔法
汎用的な、洞窟などの暗がりを照らす光球を出したり、眩い光を敵に放って目くらましをさせたり、光の魔力を圧縮させた魔力弾や光線等にして敵を討つ、光の屈折を利用して道を開かせたり塞いだり等、様々な用途で使われる。
余談だが、威力はかなりのものなのだが妖精の園から離れると威力が若干落ちてしまう。環境や魔力の違いなのだろうかと推測しているものの、現状特に不安要素はなく、気にしない。