その16 秘密(Part. S)
妖精を巡る不思議な縁から出会った、ワープ屋の女の子。
人見知りなサピアも、人をきちんと見るシャムも、この子に秘密を打ち明けることを許してくれた。
ならば自分は…秘密を一緒に共有したいと、そう思った。
「あたしはね、妖精の園と人間界を繋ぐ役割を持っているの。」
「妖精の園?」
「…ええ。」
信じて話そうとするけれど、やっぱりその名前をサピア達以外から耳にすると、一瞬緊張してしまう。でも…!!
「あたしが人間側代表で、サピアが妖精の園代表でね、これまでの旅で、もう一度人間界と妖精の園を結び付けるための場所を探していたんだ…!」
思わず目を瞑ってしまったので、もう一度目を開けるのがちょっと怖い。
そんな暗闇の中に気持ちが和らぐ答えが降ってくる。
「…もしその場所の1つがここだって分かったのなら、よかったね♪」
「う…うんっ!!」
「大丈夫。私、人に秘密を言ったりしないよ。まあ、私みたいな子供が何を言ったって大人に分かってもらえなそうだけど( *´艸`)」
ハーミアさんはにっこり笑って、それでどこに転送陣を作るの?とワープ屋らしい言葉で聞いてくる。つまり、妖精の園とこの世界との具体的な接続地点のことである。
「えっと…それ…怒ったりしないの?」「えっ!?なんでっ(๑°ㅁ°๑)!?」
「ほら…勝手にその転送陣をワープ屋さんじゃないのに作っちゃうし…;」
「ふふ♪言ったじゃん!悪い使い方じゃないなら不問だよ?それに私も、変な転送陣作っちゃったことあるし( *´艸`)」「ええっ―;」
そこでピクリと耳を動かしたライ君に、ハーミアさんはしまったという顔をする。
ああ…もしかして転送術士は濫りにそういうことしちゃダメなのかしら;
「あっ!やっぱり今の無し!大したことじゃなかったし!あははは…(*’▽’;)」
「あとで報告書じゃからな(-ω-)」
「うえ~;;」
なぜか使い魔に責められて、がっくり涙目の彼女。
一体本当にこの主従関係はどうなっているのかしら…;
そんなことを思っていると、ハーミアさんがニコニコ顔のドリアードに質問する。
「ドリアード君。このあたりで、分かっちゃう人には分かっちゃう様な、でもこっそりとした良いワープ地点になりそうなところってある(*’▽’)―?」
「そうだなあ…?そうだねえ…?」
笑顔で思い切り頭を捻るドリアード。
90度位捻ったところで、あっ!と飛び上がって。
「果樹園跡なんてどうかな♪昔人間が入植しようとして諦めちゃったところなんだけど…今はボクたちがこっそり色んな変な果物を作って遊んでいるんだ。」
変な果物って…;
なんて思っていると、後ろで二人が笑顔であることに気が付いた。
「昔諦めたことをもう一度なんて…スズさん、私達らしくないですか?」
「果物の多いところは、妖精も好きだと思う…。」
「…そっか。そうかもね。」
なんだか気が抜けちゃうドリアードだけど、妖精同士、お互い相性も悪くはなさそう。
それと意外とチョイスが的確なのには驚いてしまった。
その16 終




