その14 悲しみ(Part. S)
「ゆきうさぎさんたちっ!!」
サピアが嬉しい声を上げると、私達と一緒にいたゆきうさぎも跳ねて仲間達に混じる。
そうなると、もうどれがだれだか分からなくなってしまった。
ま、よかったね♪
ゆきうさぎ達は冷気をまといながら蛇へと近づけば、なにやらチチチと交渉を始める。
一区切りついたあたりでライ君に聞いてみたところ、どうやら一緒に住もうということになったという。
いきなり土足でお邪魔しちゃったのは悪かったけど、今の蛇からは敵意はもう感じられなかった。
「ライ君さん、どうして今のタイミングで出てきたのか、聞いて頂けますか?」
シャムが変な語尾で通訳を頼めば、その理由もわかった。
どうやらあたし達がシャボン玉に包んであの子を持ってきたから、密猟者か何かだと思って隠れて様子をみていたのだという。
彼らにしてみれば先客で洞窟にも帰れず、密猟者にも追われていると思って板挟みだったわけだ。
「さ、それじゃあゆきうさぎも届けたし、帰りましょうか♪」
「はい―!」
一匹のゆきうさぎが前に出てきて頭を下げると、一同も頭を下げる。
一行は手を振ってその洞窟を後にした。
「あの…ハーミア、さん…ライ、君…手伝ってくれてありがとう。」
森の方面に戻り始めると、おずおずとサピアが二人の助っ人にお礼を述べた。
すごい…あの怖がりな子が、自分から声をかけるなんて!!
「全然だよ~!蛇はびっくりしたけど、皆で住めるようになってよかったね♪」
「うん♪」
満面の笑顔のサピア、それにつられてほっこり笑顔なシャム。
きっと今の私も、おもいっきり頬が緩んでいることだろう。
と、安堵したからだろうか、その時思い切りお腹が鳴った。
「あはは( *´艸`)すごい魔法も沢山使ったもんね♪」
「…(*ノωノ)」
うわぁ…やちゃった!!
顔がかあっと熱くなるのを感じつつも、皆の笑顔に癒される。
ハーミアさん、フォローありがとう。
「そろそろどこかでお昼に…あっ―!!」
今度はシャムが真っ赤になった。
おいおい、どういうことだい?
「あの…すごく申し訳ないのですが…あの竜の炎を防ぐために投げた鞄の中に…」
お昼が入っていたか~( ;∀;) ( ;∀;) ( ;∀;)!!!!!
この日一番の悲しみが、私達を襲った瞬間だった。
その14 終