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82 竜とトカゲ

マンガUPにて、コミカライズ連載開始です!

 俺は少し考えたが、魔導師の常識も契約精霊の常識もよくわからない。

 下手の考え休むに似たりである。

 専門家であるリルに尋ねることにした。


「シェイドが実体化して街中をあるいたらまずいかな?」

「うーん、そうですわね。確かに竜の精霊というのは非常に珍しいのですが……」

「やはり目立ちすぎるか」

「ですが、大きさが大型犬ぐらいですし。それほど気を遣わなくても良いかもしれませんわね」

「そういうものか? 小さくても竜だぞ?」

「そもそも、身体の大きさを自由に変えられる精霊はほとんどいませんわ」

「があう」


 精霊の中でも特に強い部類に入るフェリルですら、身体の大きさは変えられないのだ。

 大多数の精霊の大きさは可変ではないのだろう。


「ですから、シェイドは本来の姿が大型犬ぐらいだと認識されますわ」

「つまり、竜の精霊でも、小さな子竜だから目立たないと?」

「いえ、そもそも竜だと思われない可能性の方が高いかと思いますわね。トカゲの精霊だと誤解されるのでは?」

(っ!!)


 姿を消しているシェイドの驚愕が念話で伝わって来た。


「シェイドには羽が生えているが……」

「羽の生えたトカゲの精霊の方が、竜の精霊より珍しくありませんから」

「なるほど」


 確かにリルの言うとおりである。

 精霊には一般動物とは形態の異なる者たちがいる。

 羽の生えた馬は野生にはいない。

 だが、ペガサスと呼ばれる羽の生えた馬の精霊はいるのだ。


「羽の生えたトカゲもいたとしても、何もおかしくないか」

「はい。竜の精霊よりははるかに、ですわ」

「そっか。シェイド、実体化してくれていいぞ」


 ゆっくりとシェイドが姿を現した。


「…………我はトカゲではないのだ」


 羽のあるトカゲに見えると言われて、ショックを受けているようだ。

 しょんぼりして、泣きそうな顔になっている。


 リルもそれを見てやってしまったという表情だ。


「まあまあ、シェイド。ほとんどの人間は竜に詳しくないからな」

「それはそうであろうが……」

「一度も竜を見たことない人のほうが圧倒的に多いからな」


 今の時代竜と遭遇するのは一流の魔導師ぐらいだろう。

 竜と遭遇したことのある一般人は相当不幸な部類に入る。


「初めて見てクジラとサメを見分けられる奴もそういない」

「なるほど?」

「だから、立派な竜であるシェイドのことを素人がトカゲと見間違えても仕方ないんだよ」

「そうなのだな!」


 シェイドは元気になった。


「……だが、グレンさま。我が姿を現していても本当にいいのであるか?」

「ああ、その方が戦闘時への対応もスムーズにできるし」


 急襲されたとき、姿を現して、それから対応というのではほんの一瞬遅れる可能性がある。


「よかったのである」

「じゅ~」


 ジュジュも良かったねと言っている。


「だが、戦術上の理由で姿を隠してもらうこともあると思うぞ。その時は頼む」

「わかっているのだ。奇襲とかであるな?」

「そうそう、奇襲時、敵に見つからないというのは大きな利点だからな」


 精霊が姿を消したら感知することが不可能になる。

 恐らく姿を消しているときと実体化しているときで、精霊の存在する世界自体が違うのだろう。


「魔導師も戦闘を考えるなら、相方の精霊の姿を隠しておいた方がいいだろうになぁ」


 精霊は可愛いから一緒にいたいと言う気持ちはわかる。

 それにシェイドみたいに姿を現していたいと思う精霊が多いのかもしれない。


「グレンさん、そもそも、姿を隠せる精霊がほとんどいませんわ」

「そうなのか? あ、そうか。飛竜で移動したときもフェリルは走ってついて来たもんな」

「がぁう」


 姿を消せるならば、姿を消してついてくればよかったのだ。

 リルが目的地に到着した後に実体化すればいいだけである。


「普通、姿を消せるのは精霊王の方々ぐらいだと思いますわ」

「そうであるぞ。我は特別な精霊なのだ」

「なるほど。道理で魔導師同士の戦いが奇襲メインにならないわけだな」


 精霊が姿を隠せるならば、戦闘の形自体が変わるはずだ。


「契約し肉体を得た精霊は姿を隠せない。だからこそ、学院長は特別なのですわ」


 どこか誇らしげにリルが言う。

 リルは本当にヴィリのことを尊敬しているようだ。


「それはそうだな。ヴィリが一人だと思っても、そこに精霊王が控えているかもしれないもんな」


 精霊を連れて入れないところだろうと、なんの関係もない。

 強大な精霊がいるかいないか、確かめようがないのだ。

 一般的に精霊を同行や帯剣が禁じられている場所にも入り放題だ。

 国王陛下の前だろうが、教皇猊下の前だろうが何の関係もない。

 圧倒的な武力を持ったまま、どこにでも入れるのだ。


 それどころか入る必要すらない。

 ヴィリが、国王を誅しようとしたら、玉座の前に突然精霊王が現れることになる。

 秘密の会議を開こうにも、その場にシルヴェストルがいるかどうか確かめようもない。


「一人だけそんな利点を持っていたら、そりゃ権力も(ほしいまま)だな」

「今は、学院長おひとりではありませんが」

「ん? ああ、俺もか」

「そうであるぞ!」


 いまのところ、ヴィリの契約精霊以外で、唯一姿を消せるシェイドは自慢げに尻尾を振った。

マンガUPにて、コミカライズ連載開始です!

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