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71 精霊との意思の疎通

 居間に入ると、オンディーヌが椅子に座っていた。

 そして、オンディーヌの足にネコがじゃれついている。


「にいにい!」

 そんなネコをオンディーヌは抱き上げる。


「ん、濡れてる」

 そして、一瞬でネコの毛を乾かしてくれた。


「オンディーヌありがとう、助かったよ」

「ん。お風呂?」

「ああ、ネコがベッドで粗相したからな。シーツを洗うついでに皆で風呂に入っていたんだ」

「そ。ちなみにベッドの方は綺麗にしておいた」

「え?」

「水があれば、余裕」


 さすがは水の精霊王である。


「助かったよ、ありがとう」

「ん。ご飯もある」

「おお、何から何まで、本当にありがとう」

「じゅ!」「にぃ」

「いやー、オンディーヌは気が利くのだなぁ! 我もお腹が空いていたところなのだ」

「……ん。シェイドも食べればいい」


 それからみんなで夜ご飯を食べる。


 俺はジュジュとネコとご飯のお皿を机の上にのせた。

 ネコは「みゃうみゃう」いいながら、美味しい美味しいとご飯を食べはじめる。


「じゅ!」

「はいはい」


 食べさせてと口を開けるジュジュの口の中に、飯を入れながら、自分も食べた。

 シェイドは椅子に座り、机の上にのったご飯皿から自分で食べる。

 前足というか手でスプーンを握り、ご飯を人のように食べていた。 


「器用だな、シェイドは」

「ふふん。まあ我は指も五本あるし、親指が人の手のように向き合うようになっているから、器用なのだ」

「ほほう、武器とか使うか?」

「我の力に耐えられる武器が果たしてあるかどうか……いや、爪より強い武器が果たしてあるかどうか」


 そういって、自慢げに尻尾を振っていた。

 すると、ネコがご飯の入った器を鼻先でおしてこちらに持ってくる。


「どした?」

「にい!」

「……ネコも食べさせて欲しいのか」

「に!」

「そうかそうか」


 ネコは赤ちゃんだから甘えたいのだろう。

 保護したばかりの時の緊張していた状態からは考えられないぐらい心を許してくれているようだ。

 元々、ネコは人が大好きな精霊だったのかもしれない。


 俺はジュジュとネコに交互にご飯を食べさせる。

 その合間に自分も食べるので、なかなか忙しい。


「ジュジュもネコも、沢山食べて偉いな」


 お菓子をたらふく食べてから、昼寝をして、起きて夜ご飯だ。

 お菓子食べ過ぎたからご飯を食べられなくなるかともおもったが、そんなことは無かった。


「今日は食っちゃ寝しすぎたか」

「グレンは今日はネコを助けた。それで充分」

「にぁ」

「そうか、そうだったな」

「シェイドも珍しく頑張った」

「我もやるときはやるのである!」

「うん。シェイドには凄く助けられたよ。何も言っていないのに臨機応変に対応してくれたし」

「我とグレンさまは、以心伝心なのである!」


 どや顔のシェイドをみて、オンディーヌがぼそっと呟いた。


「…………契約しているのに、念話を使わないの?」

「念話? ってなんだ?」

「契約しているなら、口に出さずとも、会話ができる」

「そう……、なのか?」

「全ての魔導師ができるわけではないけど、グレンならできる」

「そんなことが出来るのか」

「そうであったか」


 俺と同時にシェイドも驚いていた。


「え? シェイドは知らなかったのか?」

「…………」

「精霊王の面汚し」

「ち、ちがうのだ、我は契約自体初めてであったがゆえ」

「まあ、初めてなら知らないことがあっても仕方ないよな」

「じゅ~じゅ」

「グレンさまとジュジュさまは、お優しいのだなぁ」


 シェイドは感動しながらも、ご飯を食べる手を止めない。


「シェイドは頼りにならない。私が念話の仕方を教える」

「ありがとう、助かるよ」

「ん。グレンはジュジュとかネコの鳴き声を聞いて何を言っているか大体わかるでしょう?」

「じゅぅ!」「にいにい」


 いまのジュジュの「じゅぅ!」はネコにこれが美味しいよと自分のご飯を勧める「じゅぅ!」だ。

 そして、ネコの「にいにい」は「たべるたべる! たべさせて!」である。

 ジュジュは自分のお皿から、好物を掴んでネコの口に入れてあげていた。

 それを食べたネコは「うまいうまい」と鳴いている。


「わかるな。なんとなくだが」

「グレンは天才」

「そうか? そんなことはないと思うが」

「ジュジュもネコも、人にとって意味ある言葉は話していない」

「そうだな。基本的に『じゅ』とか『にい』だからな」

「意味がわかるのは、ジュジュと魔力回路がつながっているから。非言語的な意思の疎通ができている」


 なんとなくだが、魔力回路がつながっているからわかると言われたら、わかるような気もする。


「ネコとは契約していないが……」

「ネコはジュジュが保護しているから」

「ふむ? 保護していたら、意思の疎通ができるようになるのか?」

「ネコは保護されることでジュジュの簡易的な眷属のようなものになっている」


 簡易的な眷属というのがどういう存在か、はっきり言って俺にはよくわからない。

 だが、きっとジュジュとネコがつながっているから、俺はネコが何を言っているのかわかるということだろう。

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