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1-2 お前、何者だよ

「さて、以前の復習から始めよう」


 クルトール・エリスマン、魔法学園オメガの歴史教師であり、アリスフィア達のクラスの担任を務めるクールビューティー。鋭い目つきに睨まれたいと言う物好きな生徒の数は数えると言う概念をぶん投げる勢いで増やし続けるドM生産美人教師。そんな彼女は教壇から生徒達を見渡しながらそういった。彼女が受け持つクラスの総人数は33人、以前までは30人程だったのだが、数日前に行われた使い魔召喚の授業の時から3人ほど増えた。


「おい、アリス、前はどんな授業していたんだ?」


肩ほどまでの長さの髪を一つに結び横に流している少女、10代の若さでありながら整った顔立ち、クリクリと大きな目、庇護欲そそる守りたくなる少女の隣に陣取る青年がその少女に問う。そのクラスでは異質とも言える髪色をしている青年、目にかかる程度の長さの髪をハーフアップにしており、どちらかと言うと強面な彼は当たり前のように氷で作られた玉座に腰掛けていた。


「クロトさんは授業に出るの初めてですもんね、えっと…」


「ふむ、ちょうどいい、ルキフェリア、答えたまえ」

「は、はい!えっと、5000年前に起きた神魔戦争の出来事で7魔が現われたところからです。神と悪魔による覇権戦争により絶滅の運命を辿っていた人類、神の軍勢と悪魔の軍勢の強襲を受けた人類は滅びの運命を受け入れようとしていました、その時現われたのが7魔と呼ばれる7人の英雄達です。彼らの素性は謎に包まれており今尚研究者達がその存在の調査を行なっています。」


「きちんと復習してきているようだな、上出来だ。」


ふう、と安堵のため息をこぼしながらアリスフィアは自分の席に座る。自身の契約主である彼女の説明を聞きながら俺こと超絶イケメン最強天才であるクロトくんは背中に伝わる汗のことを気にせずにはいられなかった。


「皆も知っての通り、我々人類の現在までの繁栄は彼らのおかげだといっても過言ではない。突如現われたと言われる彼らは全てが謎に包まれている。とある文献によると、彼らは人間でありながらその身に魔を宿し、悪魔や神の軍勢である天使達をたったの7人で圧倒したと伝えられている。何故彼らはそのような圧倒的な強さを持ちながら突如として現われたのか」


クルトール教諭は生徒達をゆっくりと見渡しながらその後に続く言葉を区切る。と言うかだ、文献なんてもの残ってるの?なんでそんなことになってるの?

勘のいい方ならとっくの昔にお気づきだと思うのだが、何を隠そうこの私神無クロトくんは英雄と言われる7人のうちの一人なんです (白目)

5000年前に起きた戦争に突如現われた理由?電車から突き落とされたからです。まあ、そのあと何やかんやあったのだがそこらへんはおいおい…紆余曲折ありクソ女神である(今はハーフ)奴をボコボコにして、最後の悪あがきの道連れで次元の狭間に囚われ何故か使い魔として召喚して自分が救ったらしい5000年後に来てしまったようだ。


「一説には異界より現われた戦士だと言う説もある。」


戦士は戦士でも社畜戦士でした。


「しかし、彼らの進撃は順調に上手くいっているようにも見えていた、が彼らは巨大な壁にぶち当たる。悪魔の軍勢を蹴散らした彼らの前に四大天使と言われる神の軍勢の最大戦力がぶつかったのだ。」

正義と炎の天使ミカエル、予知の天使ウリエル、神の言葉を伝える天使ガブリエル、癒しの天使ラファエル。4体の天使の強大な力に苦戦を強いられる。そんな時に7人のうちの一人が罪の力に覚醒した。


「現在でもその罪の力というものがどのような力だったのかは不明のままだが…ん、今日はここまでのようだな、各自しっかりと復習をしておくように」


授業終了の合図とともにクルトール教諭はそう締めくくり教室を後にした。いつの間にやらそのような時間になってしまっていたらしい。クルトール教諭の授業はなかなか考えさせられるものがあるな、まさか過去に自分が行った所業の数々を再確認できるとは、新手のいじめなのだろうか?


「そういえばハーフさんはどうされたんですか?」


「あのクソあまならまだ惰眠を貪ってんじゃねーか?アリスと契約してからというものあいつのダメダメレベルは天井知らずだ」


俺とせっとでアリスフィアと契約した駄女神ことハーフ。今いる世界がかつて自分が創造した世界だと知るや否やアリスの部屋に引きこもりがちになった。半神半人になってしまったあの駄女神はその事実を嘗ての配下に知られることを恐れたのだ。すでに大半の力を失っているあの女では人類を滅ぼすような戦いを起こすことはできないだろうと判断し今は好きなようにさせている。今のあいつにできることといえばくだを巻くくらいだろう。かつての配下も支配下に置くことはできない。あの駄女神の呼び出しに四大天使はおろか下級天使ですら反応しなかったのだから。

あの時の駄女神の絶望した表情は今でも忘れられない。ほんと大爆笑。


「うーん心配ですね…」

「え、あんな奴の心配なんてしなくていいと思うぞ?」


本気で心配そうな表情を浮かべるアリスフィア。彼女はハーフが元、人類を滅ぼそうとした女神だと知らない。いや、あの駄女神はアリスに言ってたんだよ?でも「と、いう夢を見たんですか?」と本気で不思議そうな顔をしていたことに俺と駄女神は戦慄した。

5000年後のこの世界は5000年前とは大きく違いめええええっっっっっっっっちゃくちゃ平和。びっくりするほど平和。唯一脅威というものが存在するとしたら魔物という存在だろう。神魔戦争以降にいつ頃からか現われ始めたその魔物と言われるもの達。よくあるおとぎ話やゲームから出てきたような奴らばかり、いつの間に俺はこんなファンタジー感溢れる世界に来てしまったんだ…


閑話休題


「次の授業はなんなんだ?」


「えーと、確か…」


「総合魔法学だよアリス、クロトっち」


「ルディ!一時限目サボったでしょ!」


声をかけてきたのはアリスの友人のルディア嬢。ベータ帝国出身の彼女は帝国特有の貴族至上主義に染まらず、平民、貴族分け隔てなく接している。フレンドリーな彼女だが、アリスとは波長が合うのか特に親しくしている。美少女に抱きつき頬づりしている美少女。眼福です。


「とと、そんなことより早く第二魔法闘技場に移動しよ!遅刻しちゃうよ!」


「もう!調子いいんだから!!クロトさん!行きましょう!」


「はいはい、ご主人様」


手を引っ張られながら俺へと手を伸ばすアリス。こっちよりも前見ないとコケると思うんだが?それはさておき、現在の場所から第二魔法闘技場とはかなりの距離がある。本来なら一時限目が終わったと同時に移動しないといけないのだが


「こりゃ、遅刻確定だな」


慌てながら駆けていく二人を見ながらゆっくりと歩いて後を追う。これからどれだけ急いだとしてもあの二人が担当教諭に怒られてるのは目に見えているからな。ここの生徒ではない俺には全く関係ないことなのだが。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「うぅ〜ひどい目にあいました」


「せんせーもあんなに怒鳴らなくてもいいのにぃ」


「のんびり百合百合してるからだろ」


「「百合百合してない(です)!!」」


「そこ!!私語を慎め!」


また怒られてら。総勢32に教師が二人。そのうち生徒ではないのが32人中2人、俺と同じような立ち位置の一人に俺は近く。腰ほどまでの長さの黒髪。どこか遠くを見つめるような儚げな瞳。すれ違った人間全てが振り返るであろう美貌を持つ彼女は俺に気がつくと笑顔を浮かべた。


「クロトさん、おはようございます」


「オハヨ、アイちゃん。まぁ、一時限目も一緒だったんだけどね?」


磯原アイ、キリヤ少年に呼び出された日本人の少女。急に呼び出されて戸惑っていた彼女、この世界にたった一人で呼び出された彼女の不安は手に取るようにわかる。当初の俺もそうだったからだ。俺の場合は不安を感じていられる時間なんてそれほどなかった。この時代に来てしまった彼女は不安を倍以上に感じていることだろう。のほほんと微笑んでいる彼女を見ているとあまり不安などは感じさせない、強いよな…


「あ、クロトさん!!チッス!!」


「うーっすキリヤ少年、アイちゃん困らせてないだろうな?」


「困らせるなんてそんな……」


どこか遠い目をしながら引き笑いをするキリヤ少年。アイちゃん見た目とは裏腹に結構食うもんな…食費のやりくり頑張れよ…少年


「つか、クロトさん、ルキフェリアさんがもう呼び出されてたんですけど…今日ハーフさんいましたっけ?行かなくていいんすか?」


「そういうことは先に言え!!」


キリヤ少年の言うとおり既にアリスが教師の前におりオロオロと辺りを見回している。めっちゃ探している。当たり前だよね、これから行われるのは対人実技訓練。学んできた魔法などを用いて己の技術を競い合うと言った訓練だ。


「悪い、遅れた」


「クロトさん!!もう、どこ行ってるんですか」


プンスカ怒る表情も可愛らしいとかこの子兵器だと思う。アリスの使い魔である俺が来たのを確認してから教師が真ん中に立つ。今回の戦闘訓練の相手は……誰か知らんが男子生徒だ。誰かは知らんが。


「ルキフェリア嬢、授業とは言え僕は手を抜きませんからね?人の使い魔だからと言ってあなたが特別強いわけではないのですから、実技の成績はこの僕の方が上なのですから」


髪をかき上げながらカッコつけて話す少年、アリスもどこか悔しげな表情を浮かべている。彼の言うとおり彼女はそこまでの戦闘技術はない。と言うよりもだ、この時代全ての人間に言えることだ。5000年前とは比べものにならいほどにそのレベルが落ちている。今はそれ五度平和だと言うことなのだろう。


「アリス、心配すんなって、お前の使い魔は誰だっと思ってんだ?」


「クロトさん…」


「ふん、人間ごときが精霊の使い魔に勝てると思っているのか?特殊な能力があったところで僕と僕の使い魔のコンビネーションに勝てるとは思わないことだな」


偉そうに言うその少年、よほど自分の力に自信があるのだろう。それはいいことだろう。ただ、俺が相手なんだ、それとこれとは別なんだ。


「てかさ、ずっと言いたかったんだけど」


「なんだ、使い魔くん」


「お前、誰だよ」


空気が死んだ。


「さ!さっさとやろうぜ」


それを口火に戦闘の火蓋が落とされた。同時に少年の足元に青色の幾何学模様が浮かび上がる。属性は水か。

精霊が姿を現す。水を纏う獣のような姿久しぶりに見た精霊の姿、特に恐怖などはない。うちのご主人様はちょっと震えているようだが。


「いけ!」


水の精霊が吠える。その声にビクつくアリスの頭にそっと手を置く。


「大丈夫だ、お前の使い魔の俺を信じとけ」


「…はいっ!!」


 俺の顔を見上げながら力強くうなづく。その間にも勢いよく駆けてくる水の精霊、周囲を漂う水が鋭利に渦巻く。それが俺とアリスめがけて飛んできた。


水の精霊から放たれた水の槍は直線軌道を描きながら二人へと飛来する。アリスフィアを背後に庇いながら、クロトはつま先を二回ふみ鳴らした。それと同時に足元から氷の壁が迫り上がる。水の槍はその壁にぶつかり、傷一つつけることなくその勢いを失った。


「まあ、その程度だわな」


「くっ!?まだだ!弾けろ水弾!!」


水の精霊の攻撃と合わせて数発の水球が勢いよく飛来する。特に慌てる様子もなくクロトは地面に手をつける、ゆっくりと引き上げると同時に氷で作られた刀が姿を現す。鞘までもが氷で作られたそれを無造作に抜き放つと、二度、その刀を振るった。


「なっ!?魔法が…」


「その程度なら、多分誰でもできるだろ」


魔法を切られたことに驚いた少年、そんなことは些細なことだとでも言うようにクロトは水の精霊の姿を視界に収める。肉薄してくる水の精霊、氷刀を正眼に構え、一呼吸入れる。


「お、お前…何者なんだよ…」


「ただの人間の使い魔だよ」


一閃。水の精霊がクロト達と交差した。真っ二つに切り裂かれ、その姿を保ち続けることができないでその姿を消失させた。


「私何もしてない」


そんなつぶやきを聞き流しながらクロトは氷の刀を砕いたのだった。


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