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【コンヤ熱】の項

【『ケインズ』を名乗る騎士】


どんな敵だろうと私は立ち向かう。

だが…

相手が病気なら話は別だ。

病気は剣では切れない。

無論、周囲の空気を凍結させて活動を止めることは可能だが…それでは根本的な解決にはならないんだ。


【イオラムド医術学会所属ケンゾー=シズミヤによる

「コンヤ熱」についてのレポート。一番下に【要浄化】の判が押されている】



コンヤ熱は感染力の高い伝染病です。

野生のボウルマウスが媒介していると聞きますが定かではありません。

ボウルマウスに接触した食物などを通して経口感染し、咳や痰からの飛沫感染も確認されています。


非常に感染力が高く、感染初期から平衡感覚を失い、1〜2日の潜伏期間を経て40℃を越える高熱が発生し、

幻覚、幻聴、認知力の低下と共に

痰による気管閉塞を引き起こし…

その結果死に至ります。

現状、気管を風魔法で吸引し焼却処理することで安全に当該患者を生存させる手段が整っていますが…

現在、コンヤ熱の患者は確認されておりません。コンヤ村はもうありませんし。


コンヤ熱はその名の通りコンヤ村で発生した熱病のことです。

コンヤ村は、【石の街】で知られるソリアフィーヌから南に少し行ったロトゥアー川の側に位置していた小さな村です。…ソリアフィーヌの近辺にはこのような何処の国にも属さない村が点在しています。


病気の存在が明らかになったのは××年春の終わり…ヌーアの休週の事でした。

ソリアフィーヌに来ていたコンヤ村の青年が商業区の露店で突然倒れたのです。

その後も露店を営んでいた数名が、伝染病感染の疑いでソリアフィーヌ診療所の隔離病棟へ移動させられました…全員が上記の症状の後に亡くなっています。

僧侶やプリースト、果ては高位の聖騎士やアークビショップまでが病魔の浄化を試みましたが、失敗に終わったそうです。


前記しましたがコンヤ村はもうありません。魔物の襲撃を受けて焼き尽くされてしまったようです。遺品の回収や遺体の処理は『浄化同盟』の方々が率先して協力して頂けるとのことで、私もウィルス研究の為に彼らに同行しました。

結果、いくつかのコンヤ熱のウィルスサンプルを入手しました。

これらは今後の研究に多くの貢献をしてくれるだろうと思います。


しかし「浄化同盟」の方々の仕事は、流石冒険者団体ということもあって手早くて感心致しました。

遺体のある場所をあれだけ正確に目星を付けられ、村人の遺品のほとんどの回収を済ませたり、ご遺体を炊き上げたりする手際のよさは目を見張るものがあります。

今後も冒険者の方々とは連携して

【文章が途切れ、血痕がついている】

××××★××××

【暗号名『シーカー』

任務Aー2の報告】


コンヤ村は「浄化同盟」によって

滅ぼされたわ。

でも「コンヤ熱」のサンプルは採集できた。これを至急『スィエン』に送って。

猫にソリアフィーヌ周辺と「浄化同盟」について調査させるわ。

19 00 には終了して

『マーカー』と帰投するわね。


【暗号名『ティアラ』

返信…『シーカー』へ】


ご苦労様!とっても素晴らしい仕事ね!

これを研究すれば、我々『CODEーブランケット』は切り札を手に入れられる。

誰もが簡単には我々に手を出せなくなるの。そうすればきっと、私の国を再建する事が出来るわ!早速『スィエン』に分析をさせるわね、ありがと!

それと…命令よ。

今すぐに帰ってきなさい。

「浄化同盟」は恐らくこの件に関与した者を片っ端から口封じしていく筈よ。

あなたたちの能力を疑う訳じゃないけど、人は一日中最善の結果を出し続けられるほど上手くは出来ていないわ。

尻尾を捕まれる前に帰ってきなさい。

分かったわね。

ちゃんと『マーカー』と一緒にね。

大好きよ。


【暗号名『シーカー』

返信…『ティアラ』へ】

承知しました。

至急『マーカー』と合流し、南東のレクリッドの港町で待機中の『バックパック』に船の手配をさせます。


お嬢様が自ら我々に文章を送って頂けるなんて、とても光栄です。

レクリッドからエンフィースまで何事も無ければ3日で帰れると思います。

お嬢様もお体にはお気をつけて。

それでは。

××××★××××

【「浄化同盟」の本部前。

コンヤ村浄化作戦直後の

深夜、見張り同士での会話】


「ふう…冷えてきたな」

「炎をもう少し強くするか」

「…。なぁ、正しいと思うか?」

「何だよ急に」

「昼間の事だよ。俺達はソリアフィーヌを護るために、村をひとつ潰した」

「おい待て、周りに人がいないか…?…大丈夫みたいだな、ふう…」

「お前はどう思う?」

「どうって…仕方ない話だろう」

「仕方ない?確かにあの村から伝染病は始まり、何の罪もない領民が熱に犯されて死んでしまった。だが、だからと言ってあんな…村人を皆殺しにしなくったって…」

「いいか。…あの病気は感染経路が全く不明だったんだ。病気ってのは疑わしかったら何でも燃やしておかないと、穴があればすぐに蔓延してしまう」

「…」

「俺達がやったから、今領民たちは安心して自宅のベッドで寝てられるんだ。コンヤ村が全員感染してて、それがまとめて我が領民たちが入院している診療所に押しかけて来たらどうなってた?」

「それは…」

「当然隔離病棟では足りなくなるよな。その結果院内感染が発生し、他の入院患者たちに感染する。そして見舞いに来てる罪のない領民達まで…。いいか、だいたい昔ながらの生活を続けてきたコンヤ村の村人のほぼ全員に症状があったんだ。危険性は団長の示唆した通り、あれはソリアフィーヌを滅ぼす要因の一つに絶対になっていた。浄化して良かったんだ。分かるか」

「そ…そうか。そうだよな…」

「なぁお前、今日薬は飲んだのか?」

「いや…すまない。見張りだけだからいざという時の為に取っておこうと…」

「団長はいくらでも在庫を持ってる。それにこいつは気持ちを落ち着け、集中力を高めてくれるんだ。飲んでおけ…さぁ、俺と一緒に瓶を空けよう」

「ありがとう、それじゃあ…」

「浄化、焼却、完了。」

「浄化、焼却、完了。」

「クリーンアップ、ファイア、

コンプリート。」

「クリーンアップ、ファイア、

コンプリート。」

「…うむ、うまい」

「ありがとう、迷いが無くなった気がするよ。変な事を聞いてすまなかった」

「大丈夫。俺だって少しは思ったさ。だがあの連中は既に手遅れだった…俺達がすべきことをしたから、大勢の領民を助けることが出来たんだ」

「そうだな」

「さぁ、見張りの続きだ。…真面目にやらないと団長に怒られるぞ」


ーENDー


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