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【浄化同盟】の項

【ソリアフィーヌとイオラムド王国の首都を結ぶ街道で盗賊の襲撃を受けた、

「浄化同盟」の構成員、フェリス=マッカーノの遺品から見つけた、「御守り」】


浄化同盟の崇高なる目標のもとに、

炎を信じろ。団長を信じろ。

私は聖なる任務に参加しているのだという事を忘れるな。


もし、己が信じられなくなった時は…

復唱せよ。

浄化、焼却、完了。

浄化、焼却、完了。

クリーンアップ、

ファイアー、

コンプリート。

クリーンアップ、

ファイアー、

コンプリート。

領民には心に灯した炎で無償の施しを。

敵には聖なる炎による慈悲を。

クリーンアップ、

ファイアー、

コンプリート。


【「浄化同盟」のボスである

サー・プロミネンスによる声明】


我々は「浄化同盟」。

人民の危険を脅かす存在を聖なる炎で焼き払う冒険者団体である。

我々は、ソリアフィーヌ領に住まう親愛なる非戦闘民の味方であり、仲間だ。

外敵や不浄なるモノから多くの命を護るために立ち上がった、

聖なる炎を崇める集団。

領民の為ならばいくらでも無償で心の炎を灯し暖を取らせ、不浄なる敵に対しては炎による唯一の慈悲を与えられる。

…それが我々だ。

××××★××××

【入団に際しての必要事項。(加入するには団員からの推薦が必要で、これらは加入と同時に説明される事項である)】


…条件は簡単だ。

『冒険者であり、炎を使える事』

『炎と団長を信じること』

『自らを聖なる存在だと認識出来る事』

サー・プロミネンス団長はたまに無茶な事を言う方だが、実際のところ俺達の事を何より大切に思ってくれてる。

あとは…定期的に配給されるコレだ。

魔法適性を上げる飲み物らしい。

団員の皆は皆飲んでいるからな…

お前もちゃんと飲んでおけよ。


それと…団員になったら常に

理念を心で反芻するように。

我々の理念は3つだ。

浄化。焼却。完了。

浄化。焼却。完了。

クリーンアップ、

ファイアー、

コンプリート。

クリーンアップ、

ファイアー、

コンプリート。

ちゃんと暗記しておけ。迷いそうになった時、我々を奮い立たせてくれる。

××××★××××

『以下は潜入時の活動記録である』

執筆者…プロン=ラデクター


【活動記録Aー2】

1任務…ソリアフィーヌの浄化

2内容…【部隊を4チームに分け、それぞれ共用廃棄箱や道端に落ちている廃棄物の回収を行い、団長に渡す】

3状態…継続中


団長「これらは週に一回実施する!全員でソリアフィーヌを浄化するんだ!」


【活動記録Bー3】

1任務…通りの浄化

2内容…【部隊を10チームに分けソリアフィーヌとイオラムド首都を繋ぐ交易路に現れる魔物、盗賊団を浄化する】

3状態…完了【××年夏、ウンディーネの週より監視任務に変更】


団長「よし…ソリアフィーヌに入ろうとするゴミは俺達が生かしちゃおけねぇ」


【活動記録Aー4】

1任務…収穫祭の活動協力

2内容…【5人一組のチームを組み、団長の指定した場所に向かい、市民のボランティア活動を行う】

3状態…××年秋の収穫祭は成功!完了。

団長「努力は必ず実を結ぶからこそ、我々の聖なる目標も達成できると信じられる!俺達の炎のように!よくやった!」


【活動記録Bー7】

1任務…コンヤ村の防疫浄化

2内容…【5名からなるチームを3チーム派遣し、伝染病からソリアフィーヌを護るために聖なる炎で村を浄化する】

3状態…完了。残党処理済み


団長「これでソリアフィーヌは救われた…これは正しい事なんだ…!」


【活動記録Cー1】

1任務…暴動鎮圧

2内容…【現領主に対する暴動を鎮圧する為に2チームを送って対応】

3状態…焼却完了


団長「…なぜ領主からは何一つ反応が返ってこないんだ?」


【活動記録Bー11】

1任務…ソリアフィーヌの浄化

2内容…【ソリアフィーヌにいる冒険者の中にいる不穏分子を浄化する】

3状態…浄化。焼却。完了。


団長「この町に犯罪者はいらない」


【活動記録Bー12】

1任務…スパイの浄化

2内容…【団員数名がゲリラ市民と繋がり我々の組織の内情を漏洩していた。関係者全員を浄化する】

3状態…浄化。焼却。完了。


団長「裏切りは許さねえ。お前ら、敵はこの組織を狙ってる…薬を飲んでおけ」


【活動記録Cー2】

1任務…脅威となる組織の排除

2内容…【イオラムドとの国境に位置する冒険者の中立拠点に警告、その後に総員で襲撃し浄化を図る】

3状態…浄化。焼却。完了。


団長「クリーンアップ!ファイアー!コンプリートの精神だ!我々の組織に楯突くなら聖なる炎で浄化と慈悲を与える!」


【活動記録Aー10】

1任務…団結力の強化

2内容…【団長主催の集会への総員強制参加。同時に薬を飲み干し、明日の決戦の内容の説明を受ける】

3状態…浄化!焼却!完了!

浄化!焼却!完了!

浄化ッ焼却ッ完了ッ!


団長「この戦いは間違いかも知れない…だが我々の活動を全て…。ここの領主は我々のしてきたことを全て台無しにしようとしている…!我々は、炎の名の元に聖戦を開始する。総員、理念復唱!」


クリーンアップ!

ファイア!

コンプリート!

クリーンアップ!

ファイア!

コンプリート!

炎の為に!聖なる意思で!

クリーンアップ!

ファイア!コンプリート!

これで俺は強くなる…

世界を救うことが出来るんだ!

【活動記録Cー3】

『ここにはソリアフィーヌに浄化同盟のメンバーが集結し、市民の避難と同時に領主の邸宅を襲撃するといった内容が書かかれているべきなのだが…』

任務…クリーンアップ!ファイア!コンプリート!

内容…クリーンアップ!ファイア!コンプリート!

状態…クリーンアップ!ファイア!コンプリート!


団長「クリーンアップ!ファイア!コンプリート!」


【この内乱はソリアフィーヌ現領主であるメレット=フォートソンによって鎮圧され、サー・プロミネンスはソリアフィーヌ城地下監獄に監禁された】

『なおこれを書いていたプロン=ラデクターは極度の洗脳型精神汚染を引き起こしており、服用していた魔力増幅薬から微量の「穢れの一角獣」の血液反応があった』

××××★××××

【メレット=フォートソンの机の上に置かれた執政官に宛てた手紙】

私だ。ソリアフィーヌの領主でもあり、採石場の監督でもあり、ちょっとした麦の品種改良を考案してる農家でもある、メレット=フォートソンだよ。

浄化同盟の団長であるプロミネンスさんの事なんだけどね。話をしたんだ。

彼の意思は本物だった。

だいたい、あの反乱では民間人への被害は0だったんだ。だから最初から大人しく私が向かえば警備の者たちが焼かれずに済んだんじゃないか!

私は炎の意思だかなんだかに突き動かされ、無作為に危害を加えて回る組織だとばかり思っていたんだが…改めよう。

彼らは素晴らしい。

ただ活動内容は大きく見直した方がいいな。全ての活動には領主である私と、冒険者組合に許可を取って実施させれば、これほどまでに頼もしく、善良な団体は居ないと思うんだ。どうかな?


【執政官ルーク=ジュピターによる、

とてつもなく震えた文字のメモ】

こんの馬鹿領主ッ!

あぁ先代はやはりご乱心だったのか…

確かに領主殿自らが指揮をとって頂いたお陰で死傷者は限り無く0になりましたが…でも、…あぁもうお前はっ!

なんであの犯罪者の親玉の戯れ言に心を動かされてるんだよ!?

チョロいにも程があんぞッ!?

あああこの調子だと領主殿はあの悪魔の親玉を釈放してしまう…かといって領主殿の代から死刑制度は廃止されてるし…!

領主殿と冒険者組合が活動を監督するって?確かにいい考えだが…それで彼らの事を領民たちが受け入れてくれるのか?

奴らはこれまで何人焼いてきた?

その中には領民の家族や近親者にあたる者もいるはずだ…!

無茶苦茶な事を言い出さないでくれ!

俺は仕事に戻らせてもらうぞ!

全く…採石場での日々が懐かしいぜ…


To…ブントリスへ

これを出来るだけ丁寧な言葉に直して大至急領主殿にお出ししてくれないか。

一応俺にも立場があるからな…


〜執政官ルークへ〜

…ハハハ、正直だなぁ君は。

もう遅いよ。まぁまずは領民に投票してもらおうと思っていてね。

結果が楽しみだよ!

〜メレット=フォートソン〜


あああああああ

【以降は何が書いているか分からない】

××××★××××

【サー・プロミネンスの手記の1ページ。釈放後に書き始めたようで、今も彼の手記のページは増え続けている】


…俺達は負けた。

間違っていたんだ。

領主は賢明なお方だった。


俺は不浄なる物を全て聖なる炎の力で焼き尽くすのが正義だと信じていた。

その為に生じる犠牲も当然の事だと…

だが、そうでは無かったんだ。

犠牲を出せば、犠牲となった家族や友人の悲しみと怒りを買うことになる。

…そんな事にも気づかなかったなんて。

ただ目の前の問題にばかり目をとられて、宗教めいた洗脳活動までして…

それで失った物からは、全て目を背けていた…あぁ、そうだ。俺は大罪人だ。

少し炎の魔法知識を持った…一介のの穢れの一角獣ハンターだった、ただそれだけだった俺の…「炎を信じろ」だなんて酒に酔って出たような戯れ言に今まで自分を犠牲にして付き合ってくれた仲間たちに…俺はなんと詫びればいいんだ!?

だがそれでも…たとえこの理念が間違ってても、あのとき俺はソリアフィーヌの領民を護ろうとした…この燃えていた気持ちは間違いでは無いと断言したい。

我々の行きすぎた活動のいくつか…こんな俺にもまだついてきてくれる仲間達のことは、無駄では無かったと信じたいんだ!

…だから、我々はまた立ち上がる。

何度だって立ち上がらなければ!

活動は制限されてしまったが、

俺はまだ炎を信じている。

炎に浄化できない物はないと信じている。…俺の釈放を選んでくれた領民の為にも、俺は「浄化同盟」を再建する。

出来る限り活動は犠牲を出さないように…俺達はもう家族だ!

薬に盛っていた俺の臆病さは既に取り払った。俺についてきてくれる者は…もう自らそれを選んでくれた勇者になるんだ!

領民の為に、気持ちを一つにしよう!

我々を一つにするのは、聖なる炎だ!

クリーンアップ!

ファイアー!

コンプリート!

××××★××××

【『ケイオス』】

以上が浄化同盟の項だが…

無論、何も解決してないのは分かるか?

人の意思と言うのは、簡単に曲げられる物ではない。

あの団長は何も変わってはいない。

そして、コンヤ村を含むソリアフィーヌ付近の過激な焼却作戦のことに関して、領主や領民たちは一切何も知らない。

プロンの書いていた情報記録は全て焼却され、恐らくは私だけが真実を知っている。彼らの情報隠蔽能力は高い。

流石は冒険者団体と言うだけあり、構成メンバーの一部に腕利きの暗殺者や情報屋が紛れているのだ。


非公式の冒険者団体だった『浄化同盟』は、冒険者組合の公式団体…つまりギルドになり、ソリアフィーヌを拠点に各地に部隊を展開し浄化活動を行っている。

…無論、任務内容は現在、組合と領主によって制限されているが、もしまた近くの村で伝染病が蔓延したら…

恐ろしい集団だが、領主と領民は知らないだけなのだ。

表向きはただのボランティア集団で、付近の魔物から護ってくれる、とても気さくで話しやすい集団なのだから…

ーENDー



あとがき


この集団は某ゲームの火炎放射機を持った集団がモデルになってたりします。

不覚にもカッコいいとか思ったりしたのなら貴方は…もうすでに手遅れだ!(笑)


基本的に彼らは仲間思いの良い奴らです。領主と冒険者組合に主導権が渡ってからは、酒場の冒険者のパーティーにも積極的に参加するようになりました。

まぁ、やたら性格はアツい方々が多いと言うことでしょうね。

彼らの影の一面は現在でも、表沙汰にされるような事は起きていません。

その事実を知っているのは恐らく【記録者】のケイオスと…

あ な た ぐらいでしょうね。

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