SCHABE
「よし、行くぞ!」
隊長が叫んで飛び出すと、二人の部下は彼に続いて大きな門を飛び越し、小さな隙間に隠れた。
この作戦は、彼ら一族の生死がかかっている。明晰だが自己中心的な頭脳と強靭な肉体と圧倒的な科学力で、彼らの種族の殲滅を企図する異種族の要塞に侵入し、物資を奪うのだ。できるだけ見つからないように……
「今なら入れる。準備はいいか?」
隊長は問いかけた。部下達のサインと異種族の大きな扉が開かれるのを視認すると、彼は叫んだ。
「今だ、入れ!」
明るい部屋に飛び込むと、一人は長い布の後ろに、もう一人は上階の隙間に隠れた。いつも夕暮れ時に決行されるこの作戦で、今までに何千何万という同胞が命を落とした。
何時間もそこで隠れていると、やがて明かりは消え、静寂と暗闇が訪れた。
「お、いい匂い」
「バカ、それは罠だ。離れろ」
小屋に近づいた年長の部下を隊長は引き戻した。
「どの要塞にも、色んな罠が仕掛けてある。用心しろ」
隊長は警告した。この罠にかかった中で生還した者はいない。生還したとしても、どういう訳か、数日もしないうちに多くの部隊と多くの一族が壊滅したのだった。
慎重に歩み続けた彼らは、やがてターゲットの近くにたどり着いた。
「あったぞ、奴らの食糧庫だ」
隊長は呟くように言うと、早口に続けた。
「小僧、お前は上階の見張りにつけ」
若い方の部下に命じると、二人の年長者は食糧庫に侵入した。
隊長は果物をかじって、
「美味い」
と呟いたが、
「敵襲! 奴らが来たぞー!」
という小僧の絶叫がそれに重なった。上階から撤退してきた彼は、異種族の噴射した白い霧に包まれてしまった。
要塞全体の明かりが灯され、異種族の巨大な身体と、アルミ製の大量殺戮兵器が彼らの目に留まった。
「敵……襲……」
小僧は小さく呟き、事切れた。
「作戦失敗だ。僅かな食糧を確保して撤退するぞ」
隊長と部下は凄まじい速さで逃げ出したが、隊長が背中に強烈な打撃を加えられて致命傷を負った。
「やられ……たな。もう……助からんようだ。お前……だけでも……逃げ――」
言い終える前に、止めの一撃を浴びて、隊長は四散してしまった。
「畜生!」
一声叫ぶと、異種族の打撃を何度も避けて、生き残った部下は駆け回る。襲いかかる白い霧と距離を置いて、たった一人の生き残りは一心不乱に大きな扉へ向かう。そして、扉の隙間をすり抜けて真っ暗な屋外に飛び出した。
要塞を一度だけ振り返ると、彼は急いでその場を去った……
二つの種族が何百万年も戦い続けている姿がそこにあった。気に入らない存在は抹殺しようとする残忍な異種族と、生きるために窃盗を繰り返す嫌われ者の先住民の姿が。