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八つ世の守護者達!  作者: 鹿米 夕ヰ
序章 〜5年前〜
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【0】ハーフ&ラウフ

八つの異世界と学園を舞台に巻き起こる、剣あり、魔法ありのバトルアクション系(ラブ?)コメディです!

 目が覚めると、一辺の光すら入る余地のない暗闇の中に、少年ーー天城瑛士あまぎ えいじは立っていた。実に唐突だった。気絶していたらしく、目が覚めてみると、直立状態でここに居たのだ。

しかし、自分が別に何処かに閉じ込められているわけではないことを、ここがそういう擬似的に作りだされた暗黒でないことを、彼は直感で感じていた。

であれば、一体ここは何処なのか?

瑛士は右腕の肘を左手で支え、右手を顎に添えて、さながら考える人のようなポーズをとる。これは瑛士が深く物事を考える時の癖なのだ。

そして、ふと気付いた。


自らの身体が淡くぼんやりとした、仄かな光で包まれていることに。


「何だ、これ・・・・・・」


今の今まで気が付かなかったことに驚きを覚える、それ程までには明るい光だった。



「ーーはじめまして、だね」


唐突に、何の前触れも無く背中に声が投げかけられた。


「っっ!?」


全力で振り返り、言葉を失う。

そこに立っていたのは、外見からして11歳程、瑛士と同い年くらいの少女だった。小川のせせらぎの様に腰まで流れる群青色の髪、同色の瞳は見ているだけで吸い込まれそうになるような危うい魅力を放っている。なぜ暗闇の中でそんなことが分かるかというと、彼女の周囲も瑛士同様に仄かな光で包まれていたからだ。



 どのくらい見つめていただろうか、その少女の頭のてっぺんからつま先までの間を瑛士の視線が何十往復かした頃、彼はようやく自分が話しかけられていた事を思い出した。

 もう手遅れかもしれないな、何て事を考えながら瑛士は少女に恐る恐る声をかける。


 「き、君は?」


 少女は、待たされた事に対して何も思っていないのか、朗らかな微笑を浮かべ、


 「私は、アトラ」


 ただ一言そう言う。そして何かを思い出したように急に顔を険しくする。


 「そんなことより、時間が無いの。身体を見て」 


 そう言われ、瑛士は戸惑いながらも自分の身体に目を向け、唖然とする。


 「な、んだ、これ・・・・・・体が、消えかかってる」


 そう、瑛士の身体は、徐々にだが着実に、闇に溶けかかっていた。


 「それがどういう状態か、分かる?」


 少女ーーアトラの問いに、瑛士は首を横に振る。

 アトラは一言、そう、と言うと、彼の目を真っ直ぐ見つめ、おもむろに口を開く。


 「よく聞いて、あなたは今、死にかかっているの」


 しばしの空白の後、瑛士は思わず、は? 、と間の抜けた声を発してしまう。しかし、誰だってそうだろう。突然見ず知らずの女の子に、あなたは死にかかってる、なんて言われたら、混乱するに決まってる。


 「ちょ、ちょっと待って!話がよく掴めないんだけど」


 少女は顔に若干の焦りを滲ませながら、


 「あなたがここに来る前に、何があったか、思い出してみて」


 言われて、瑛士は驚く。どうして今までなにも考えなかったのか。

 何があったか、ここに来る前、何があったか。思い出せ。

 思い出そうと、記憶の海の中から必死で必要な情報を探す。

 すると断片的にだが、様々な場面が頭の中を掠める。

 いつも通っている通学路。空に立ち上る黒煙。燃えている向かいの家。そして火の中に取り残されていた少女。彼女の名は・・・・・・


 「美栗みくり!?」


 記憶の中の少女の名前を叫ぶ。


 「思い出したみたいだね」


 アトラはほっとしたように呟き、ちなみに、と付け足す。


 「あなたと彼女の命は今風前の灯火なの」


 瑛士は、焦りと不安を滲ませた声でアトラに問うた。今はただ、これだけが聞きたい。


 「助け、られるのか?」


 「驚いた、自分は助かりたく無いの?」


 「そりゃ助かりたいよ、出来ることならね」


 でも、と瑛士は続ける、


 「最優先はあくまで美栗だ、俺が助かって美栗が死んだら、助けに行った意味が無いからね」


 そう、瑛士は美栗という少女を助けるために、自ら火の中に飛び込んだのだった。

 アトラは困ったような呆れたような顔になる。


 「お人好しだね、確かに助かる方法はあるよ、でもね・・・・・・」


 アトラは言葉を濁した。


 「大丈夫、言ってみて。でも、何なの?」


 瑛士に言われ、アトラは躊躇いがちに口を開く。


 「でも、その方法を使うと、あなたが、あなたが死んでしまう可能性があるの」


 瑛士は目を丸くする。が、その驚きは伝えられた事実に対してのものではなかった。むしろ逆だ。


 「なんだ、そんな事か」


 瑛士はあっけらかんと言い放つ。一方、決死の覚悟で吐露した事実を、そんな事、で片付けられたアトラは、


 「そ、そんな事じゃないよ、あなた死んじゃうかもしれないんだよ!?」


 必死に抗議の声を上げる。


 「でもさ、可能性はあるんだろ。逆にその方法を使わなかったらこのままでは両方確実に死ぬ。どちらを選ぶかなんて決まってるよ。あと、一応言っておくけど・・・・・・」


 瑛士はそこで一旦言葉を区切り、黒に若干の蒼が混じった双眸をしっかりと見開く。その瞳の中には、確固たる信念があった。


 「美栗を見捨てるなんて選択肢は、絶対に存在しないから」


 それを聞いてアトラは、何故か軽く目を細める。その瞳はとても優しそうだった。


 「やっぱり親子だね。とってもよく似てる。・・・・・・分かった、方法を実行しよ。その代わり、一つだけ約束して、絶対に死なないって。ある人からね、頼まれてるの。あの子をよろしく頼むって」


 「え?親子って、あの人って、一体どういう・・・・・・」


 しかし瑛士のその問いは続くアトラの言葉に遮られる。


 「いい?今から言う言葉をそのまま唱えて。いくよ!」


 「・・・・・・・・・・・・!!」


 「・・・・・・・・・・・・!!」


 唱えた途端、急激な眠気が襲って来た。徐々に意識がブラックアウトしていく。



 突然、意識の底に沈もうとしていた身体に凄まじい激痛が走る。


 「っっ!?」


 いつの間にか元の世界に戻っているらしい。ふと体の前方に違和感を感じる。地面にしては固くない。地面とうつ伏せに寝ている体との間に何かがある。

 体が痛まないように、目線だけで見てみる。

 そこには、気絶している女の子の姿があった。

 そして、やっと、完璧に思い出した。自分は天井から落ちてきた燃え盛る木柱から、この女の子、美栗を庇って、下敷きになり、気を失ったのだ。

 そこまで考えて再び意識が遠ざかる。

 薄れ行く意識の中で、瑛士は自分の心臓から全身に渡って、徐々にその痛みが引いて行くのを感じた。

 すごいな、これは。これが、あの子、アトラが言っていた、方法・・・・・・か。

 いよいよ瞼が持ち上がらなくなり、少年は深い眠りの底へと落ちていく。



初投稿です。

文才も想像力もカラキシの未熟者ですが、どうぞよろしく御願いします!!

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