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おつかれさま  作者: 氷蓮
2/5

森での目覚め

ガサガサッと葉の触れ合う音がした。鳥や虫の鳴き声が聞こえる。時折吹く風にあおられて頬にかかる髪がくすぐったい。




サワサワ サワサワーーー




涼しいというよりも少し寒いような風が優しく吹き付ける。


………。


梢?鳴き声?風?


おかしい。私は電車で寝ていたはず…


目をかッと見開く。すると、そこに飛び込んできたのは木が鬱蒼と生い茂り、周囲はうす闇に包まれていた。もうすぐ夜明けかもしれない。


自分は木にもたれかかり眠っていたのだった。


いや、おかしい。現代日本でこんな場所はほとんどない。少なくとも私の近くにこんな場所はない。それに、私は怒涛のように押し寄せる仕事を何とか終わらせて、会社を出たはずだ。そして帰りの電車の中、うとうとしながら自宅近くの駅に着くのを待っていたはず…




ーーーっい…



そのとき何かの声が聞こえた気がした。

しかし、辺りを見回してもそれらしい人はいない。


とりあえず、もう一度寝よう。そうしよう。うん。それがいい。夢かもしれないし。


そうして、いそいそと毛布を掛け直して目を閉じた。私は再び眠りへと落ちていったのだった。ここで言っておくが、決して現実逃避ではない。断じて、違う、、、はず。








まぶしい…ーーー


私は朝日のあたたかな光に包まれて目が覚めた。


さあ、今日も忙しい一日の始まりだ!


……どこ?

何で変わってないの⁈



嘘でしょーーーーーー‼︎










しばし呆然としていたが、ようやく頭が働いてきたようだ。

まずは、現状を把握しようか。

1.忙しかった昨日が木曜。よって今日は金曜日。平日。

2.鬱蒼と生い茂る森の中

3.サワサワとたくさんの葉を揺らす大きな木に寄りかかって座ってる

4.私、伊藤鈴奈(イトウレイナ)

5.どうして?そんなの私が知りたいわよ!



つまりは、忙しい会社に一刻も早く行かなければならない平日、私伊藤鈴奈は、な・ぜ・か!森の中の大きな木に座り込んでいる。



そうだ!スマホ!

スマホで連絡をとれば…


圏外


…あたりまえか。どうしよう。

迷子のようなものだ。意図して、ここにいるわけではないが。というか、迷子になりたくてなる奴はいない。



迷子の鉄則

“無闇に動かない”

は昨日この場でそのまま寝たから、守られているはずだ。

現状は何も変わっていないが。


今日は辺りを散策して誰かを見つけてみるべきか。否か。


ここでこうしてても仕方ないか。

この木を目印にして周囲を確かめよう。小枝を落としながら歩けば大丈夫だよね。










だ、誰もいない…



あれから何時間も歩き回っているが、誰とも遭遇しない。

もう太陽は真上を過ぎている。夕暮れにはまだ時間があるが。











もう3日目だ。


さすがに仕事鞄に持ち歩いていた水だけで過ごすにはそろそろ限界だ。

もう、薄々分かっているが、日常、私の住んでいた街には帰れそうにない。わずかな期待を込めて、今まで最初にいた大きな木のところへ戻っていたが、無駄かもしれない。適当に歩いて森を抜けなくては餓死してしまう。

木の実は見つけたが、毒があるかもしれないし、食べる気になれない。

早く森を抜けよう。そして、何とか人里を見つけなきゃ。





彷徨うこと数時間ーーー


いっこうに人影が見つからない。

森の出口らしきところも見当たらない。どうしたら良いのだろうか。


ふらふらと歩いていると、少し森の木々が拓けたところに出た。

しかし、残念ながら人影はまったく見つからない。さらには、木々がないせいで、太陽から照りつける日差しが疲れた身体に容赦なく突きささる。

体温は上昇し、喉はカラカラに渇いている。空腹は常に訴え、水と食べ物を全力で欲している。

もう、限界である。

徐々に意識が朦朧としてきた。まぶたも閉じそうである。何とか踏ん張っているが、足もふらふらしている。



…もう、だめ……ーーーーーーーー



私は地面にうつ伏せに突っ伏し、意識を失ったのだった。


ここまでお読みいただきありがとうございます。


次にやっと賢者が出てきます たぶん;

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