勇者の
アゾレストは、魔界の大樹の根元から這い出た。
これで、何度目の復活か。しかし、魔人が魔人として成らしめるためのエネルギーは確実に枯渇してきている。
また再び甦ることとなれば、次は魔物か、最悪、魔力を持たぬ生き物となるか。
途中までは良かった。
男が殺されても、運良く魔物たちから逃れても、ユズ=アリスが死にかける度に、震えるほどの快感がアゾレストを活気付ける。
もし、それでユズ=アリスが死んでも、アゾレストは恐れながらも魔王に頼んで、彼女の魂を魔界の住民(こちら側)へ引きずり込む予定であった。
しかし、勇者が思いの外駆け付けるのが早く、新しい能力で大敗してしまった。
あの勇者を抑え込むほどの何かが必要だ。
柚子の不幸を翻すほどの幸運を、抑え込むほどの何か。
だが、勇者はまだ殺してはならない。
柚子を手ずから飼い慣らし、それからいたぶり殺すのだ。
妹の存在そのものが弱点であり、力である勇者を。
負けた悔しさと、増した憎しみ。
同時に、望みを叶えたときの達成感を想像してほくそ笑む。
衣服ひとつ纏わぬままのアゾレストは、次なる計画を実行するために飛び立つ。
あのゾルの魂は、きっと役に立つ。
憎しみと怒りの中死んだ魂ほど、厄介で恐ろしいものはないからな。
地獄に迷い込む前に迎えに行ってやらないと。
勇者の死を握るのは、魔王ではなく、魔人でもなく、
鏡合わせのようにそっくりで、
空と、空を映す海のように、全く異なる、
あの片割れである。
それを、快楽を欲する魔人は知っている。




