第七話化け物出現!?
とっさに入った扉の向こうには、何もない広い空間があった。まったく整備されてないその空間は、ただ荒れた地面とそれを囲むようにある木々だけだった。 まるで深い森の中の開けた空間のようなその場所を始めて見た時、僕は違う世界にでもきたのではないかと思ってしまった。しかし、僕の後ろにはちゃんと校舎もあるし、さっき入って来た扉もある。
不思議に思いながらも、好奇心でこの場所を歩き回った。
あたりが暗くなった頃には、とりあえず目で見える範囲は調べ終わったけど、結局何もなかった。携帯電話で時間を見ると【6:13】と表示されていた。
(もうこんな時間か…そろそろ帰らないと)
そう思い、携帯電話から目を離した時、背後から異様な感じがして、僕は慌てて振り向いた。
そこには、化け物がいた。
ライオンのような体に狼のような頭、口から延びている鋭い牙は全ての物を噛み砕いてしまいそうだった。 その化け物は低い声で唸りながら少しずつ僕の方に近づいてくる。
(マジかよ…)
そう思いながら、僕はジリジリと後退りする。少しでも隙を見せれば、こちらが殺られる、その事を昔の経験から学んでいた。そう、僕はこいつのような化け物に襲われたのは今回が初めてではない。まぁ今は、昔の事を呑気に思い返している余裕なんかまったくないけど。
(どうする……倒したくても僕は能力者じゃないから【力】も使えないし…)
こんな時、能力の使えない自分がとても無力に感じる。
(くそ、どうすればいいんだよ…)
そして、とうとう化け物が僕に向かって跳びかかってきた。
「うわぁっ!!」
僕はとっさに横に跳んで回避する。さっきまで僕がいた場所に化け物は着地して、またこちらに向かって跳んで来た。
「くっ、やるしかないのか…!」
僕は覚悟を決めて、跳んで来た化け物の顔にタイミングよく回し蹴りをする。
僕の蹴りは化け物の顔におもいっきり当たって、化け物を数メートル吹っ飛ばした。
これでも、武術には多少の心得がある。初めて化け物に襲われた時何もできなかった僕は、その後に光の母に弟子入りして、強くなろうと修行に励んでいた。そのかいあって、今現在なんとか戦えていいる。 化け物の攻撃を避けては反撃して、距離をとってまたカウンターで攻撃すると言う戦法で相手を少しずつ弱らせていく。
(このままいけば勝てる!)
そう思った時だった。
「グウオォォーー!!」
と、化け物はいきなり天に向かって吠えた。すると空中から突然無数の火球が現れて、僕に向かって飛んで来た。
「うおっ、わぁっ!」
次々に飛んでくる火球をなんとか回避するが最後の火球を避けた時に、タイミングを合わせて化け物が跳んで来た。
(やられるっ!?)
僕は死を覚悟して目を閉じた。しかしいつまでたっても何も起こらない。
僕は恐る恐る目を開ける。
そして初めて目に写ったのは、頭を斬り飛ばされた化け物と、一振の大太刀を持った零さんだった。