第七章「神の島」#1
「呼び出した手前ですまねぇが、あのごたごたの後始末であまり時間が取れねぇんだ。用件は手短に伝えるぜ」
第一騎士団の執務室と言えば、聖堂騎士団のトップが在中する、先ず入室の許可さえ得ることに難儀する部屋の一つ。そこへ呼ばれたルビアと真中とアルと蒼生の四名。木製の重厚な書斎机に座る総騎士長こと、日護長寿郎の横には孫娘である日護リツカまでもが居並んでいた。
「先ずはシルフィムの件だ。おめぇさん含めて完成体である四名を除く計181名の自由が保障された。衣食住に困らねぇ手筈を整えてる最中だ。決まり次第また報告させる」
「含みのある言い方だな。四人は例外だと聞こえるが?」
「おめぇさん以外は擬似霊核の摩耗が見られてな。今は絶賛復元中にある。天動梗吾以外にもうちには腕利きが揃ってるから安心しな。それが終われば同じ措置を講じる予定だ」
「理解した。で、俺の処遇は?」
「それなんだがよぉ、こっちが奴さんに訊きてぇくれぇだ。おめぇさんだけ間違いなく擬似霊核の造りが他のホムンクルスとは異なってやがる。言葉の通りおめぇさんのそれは俺達魔術師の霊核によく似てる。自覚はあるかい?」
「いや、特に。それこそ天動梗吾に直接訊けば良いだろう」
「そうしてぇのは山々だが、あの動画の件も重なって取り逃がしちまったからなぁ。目下捜索中ではあるが人員もさけない以上、骨が折れるだろうよ。それにな、霊核の型は指紋なんかと同じで千差万別ときてる。おめぇさんの擬似霊核はそれで言うと天動梗吾元騎士団長のモノにそっくりなんだよ」
藤澤砂夜が起こした同時多発自死事件の混乱に乗じて、梗吾はペリーナ・ペチパンナ騎士団長の目を掻い潜り逃走に成功した。以降の行方は知れず。
「京副団長に協力を仰ぎたい所だが、謹慎を言い渡した手前もある」
「蒼生ちゃんには諸々の件から一旦離れて心身共に落ち着ける環境が必要です。それもあって私がこうして同席してるわけですしね」
口挟んだのは極めて近い将来、蒼生の上司ともなる第八騎士団長を務めるリツカだった。他の騎士団員が不在の為か、総騎士長相手でも些かラフな様子にある。
「謹慎は甘んじて受け入れますが、私の処分事由とリツカ騎士団長とどう関係があるのですか?」
「蒼生ちゃん真面目だから工房に籠って魔術の修行で一ヶ月過ごすんじゃないかと思って、先回りしてこんなの用意しました! 一人じゃつまんないし、ちゃんと皆んなの分もあるから」
四人に手渡される国際線の航空券。ファウチミーノ空港発、羽田空港経由で搭乗時刻は明日の15時となっている。
「ちょっと待ちなさいよ! 羽田経由ってどういう意味よ」
「東京に帰るわけじゃないのか」
ルビアと真中が最終到着地を見て声を上げた。
「そう! 私とおじいちゃんのルーツ。第八騎士団が責任を持ってアテンドするからね! 10月でもまだギリ海水浴も出来るし、夕食は浜辺でバーベキューしてその後花火とか。なんか青春っぽくてイイじゃん? まぁ時間はあることだし、目一杯羽伸ばしてこよ!」




