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BLOOD HEAD〜不死になった彼とツン強めロリ吸血鬼は8人の最強魔術師たちと救世の旅をする〜  作者: 紙屋シキナ
第六章

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第六章「シェア・ザ・ダークネス」#9

 朧げな意識を浮上させる真中。焦点が合わずぼやけていた視界も次第に輪郭を得る。

 半円状の卓に着席する五人の騎士団長の姿。加えて直ぐ隣には術で拘束されたルビアと蒼生、それを取り囲む形で同数の副団長が目を光らせながら待機していた。正に八方塞がりといった状況に逃げ出すといった気すら起きはしなかった。


「わたしたち、勝負に勝って試合に負けたってところかしらね」


 ルビアは自由を奪われて尚、普段の気丈な態度を崩さず。


「こんな時になんだけど、紹介しておくとルビアの右隣が妹の蒼生だ」

「さっき自己紹介されたわ。助けてもらったみたいね、わたし」

「兄さんに大事が無くて何よりです。補足しておくとアルさんも一応は無事です。この場には居ませんが安心して下さい」


 蒼生もまた同じ、両腕を後ろで組んだまま佇立し口のみを動かしている。


「どうなるんだ、俺たち……アーサー・フレックみたいに虚勢で自己弁護なんて出来ないぞ」

「そもそもそんな機会すら与えてもらえそうな雰囲気にはないけど」

「ペリーナ騎士団長が不在の為、最終的な結論に至るまでにはまだ猶予があります。その間に何人かの騎士団長を味方につけることが出来れば、あるいは不利な状況を覆せるかもしれません」

「具体的にはどうすれば良い?」

「可能ならば過半数の援護が欲しい所ではありますが、現状味方になってくれそうなのは鳳凰島や都心部での後方支援任務に就いており、兄さんとルビアさんに理解を示してくれた日護リツカ騎士団長」

「だけ……だな。比嘉辻さん? とは戦ったけど他の騎士団長とは面識無いし。副団長に至っては四人ボコしてる」

「副団長に決定権は有りませんのでその点は御安心を」

「心象が悪いって話だよ」

「静粛に願う、吸血王とその協力者諸君。ペリーナ騎士団長が天動梗吾と接触した。先だって君達の処遇についての臨時会議を執り行う」


 シルバートが会議を仕切るべく一人、立ち上がった。


「よろしいですね、総騎士長」

「こっちも機密保持を徹底しなきゃならねぇから帰す訳にもいかねぇんだ。まぁ一方的な理屈だからな。理解してくれとは言わねぇよ」


 長寿郎は溜息混じりで煙草に火を付けた。


「先ずは京蒼生元第六騎士団副団長の処分から。処分事由(じゆう)は元第六騎士団騎士団長、天動梗吾と共謀してのホムンクルス製造疑惑またその隠匿。要監視対象者への逃走幇助(ほうじょ)。また最も看過出来ない事由として、第三副団長への傷害を意図した魔術行使。仲間を裏切る行為など最も恥ずべき悪逆そのものだと私は考える」

「『部分的にでは有りますが、間違ってはいませんね』」


 思い当たる蒼生は、抵抗する素振りもなくそれらの背信行為を認めようとしたその時。壁を背に立っていたクーリエが一歩、力強く前に出た。


「訂正願います。発言の許可を」

「構わねぇよ。実際何があったかはおめぇさんがよく知ってる」


 総騎士長の許しを得てクーリエが語り出す。


「京副団長に関しまして報告が遅れました。私の説得に応じて投降しようとしておりました矢先、夜の眷属の奇襲に遭い連行を後回しにし共闘を提案。その際、作戦の不一致による衝突があったのは事実ですが、無論意図して危害を加えよういった様子には有らず。また、京副団長並びにホムンクルスことシルフィム両名の援護がなければ勝てない戦闘であったのも確かです」


 自分の身を危うくする結果にも成りかねない綱渡りな発言だった。それらクーリエの庇おうとする姿勢に目を丸くする蒼生。


「クーリエさん……」

「私が持ち得ている情報と些か差異があるが」

「シルバート騎士団長の魔眼の確定未来視を以てしても、全ての事象を見渡せる訳ではありません。今話した事実は現場に居た〝私〟が体験した全てです」

「…………」


 どうしたものかと考え込むシルバートに代わって総騎士長が口を開いた。


「だそうだ。天動梗吾との共謀を裏付ける証拠も無し。それに彼女は名家、門崎(とざき)家の正統継承者として魔術省に登録されてる。こりゃあ内内だけで片付けられる様な案件じゃあねぇってことでいいな、シルバート」

「魔術省の意向に楯突く程、私もおぼこく有りません。ですがお咎め無しとなると示しがつかない」

「だったら第六騎士団を当面の間凍結した上で、京副団長には暫定措置として欠員の出ている第八騎士団へ異動して貰う。それと並行して、本日より一ヶ月の停職処分とする。まぁ要するにだ、遅めの夏休みとでも思って羽を伸ばしてきな」

 

 第八騎士団を束ねるリツカがよろしくと言わんばかりに軽く手を振ってみせた。

 そうして比較的甘い処分で済んだ蒼生にクーリエの頬が緩む。


「何故、クーリエさんの方が嬉しそうなのでしょう」

「良い友達を持ったな蒼生」

「友達……」


 他人事にも関わらず、真中もクーリエも喜んでいる。そして何処か温かい感じのする友という単語に蒼生は不思議と心地良さを覚えた。


「問題はわたしたちね。そもそもどうして生殺与奪を彼らに握られてるんだか。それだけでも立腹よ、まったく」


 ルビアがそう愚痴をこぼす。

 

「では残る二名はハルモニアシィアの手の届かない場所、夢幻行きでよろしいですね」


 そのシルバートの提案に対し、同調し反論するリツカと蒼生。


「それは教会の都合を優先しただけであって、聖堂騎士団の意思じゃない!」

「この先、藤澤砂夜と対峙するにあたり兄さんとルビアさんの感応(ちから)は必要になると考えます。狙われるならば余計に私達が保護するべきです」

「リツカ騎士団長も京副団長も情が湧いたのか。忘れて貰っては困る。藤澤砂夜を産んだのは他でもない吸血王自身だ。彼女とその心臓部を手元に置いておくなど、それこそ藤澤砂夜の術中。万が一ハルモニアシィアが藤澤砂夜の肉体収集を放棄し、吸血王を依代にした上で彼の心臓部を手中に収めたならば、現状の比ではない被害が(もたら)される」


 夜の眷属との闘争を唯一経験したのが声を上げるシルバートと黙って聞き込む長寿郎の二人。10年前の痛み分けという結果は、後悔や無力感といった苦悩を抱かせ、両者にしか見えない未だ生々しい傷跡を残していた。


「危険分子を孕んでいる以上、尚のこと今すぐにでも」

「だったら話は早い」


 過熱する場に一石を投じたのは意外にも銀音だった。


「何時でも斬れる首なら、今じゃなくて良い。そうやってこれまでも泳がせて来たんじゃない。それとも何? 完全体の藤澤砂夜相手じゃ負ける前提に聞こえるけど、その程度なの? 集められた私達って」

「論点が飛躍している。私は考え得る可能性の話をしているに過ぎない」

「なら訊くわ。此処に居る全員が奴らにまとめて殺される未来でも見えたワケ?」


 シルバートが持つ魔眼、確定未来視の絶対を識る全員の耳目が集まる。


「今は何も見えない」


 自他共に認める最高戦力の一声は、全てを黙らせるのに充分だった。


「万が一か、十が一か知らないけど、差し引きならない場合の不都合な輩はまとめて私が殺す。これ以上の担保があって?」


 鋭い眼光が虹色の虹彩を射る。


「それに肝心なことを見誤ってる……貴方達が思っているよりも吸血王も彼も、弱くはない」


 銀音がそう呟いた時分、ペリーナ騎士団長から総騎士長へ緊急通信が入った。

 電話を取る長寿郎がややあって叫ぶ。


「会議を中断する! 全員が観える様にオペレーションモニターを出してくれ! 音声もだ!」


 空間に現れる15の表示画面。全てが同一の画面を映し出す。

 それは真っ暗な背景の中央に三日月が幾重にも折り重なって出来た輪っかを据えた、音声のみの配信だった。しかし切り付ける様な冷たい声色は藤澤砂夜に相違なく。


「『初めまして、愛すべき隣人の皆さん。ハルモニアシィアです。わたしはSAYA。あなたのすぐそばにいて、その思考の全てを司るものの名です』」


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