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BLOOD HEAD〜不死になった彼とツン強めロリ吸血鬼は8人の最強魔術師たちと救世の旅をする〜  作者: 紙屋シキナ
第五章

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第五章「ジャッジメンター」#3

「今は騎士団長会議の最中です。どのような要件であれ急務でない以上は御退室願います」


 シルバートが会議の進行を妨げる教会の使いを睥睨(へいげい)する。

 長寿郎もまた途端に眉を(ひそ)め、まもなく吸い終えた煙草を消し、煩わしさを隠すように二本目に火をつけた。


「シルバートの言う通りだ。分かりきった通達なんざ指示書で事済んだはずだろ? わざわざ釘刺すような真似しなくてもよ」


 教会の人間は節操なく今以上に踏み込むような真似こそしないものの、全く引く様子にもなかった。


「藤澤砂夜の迴生(かいせい)の阻止が特筆して優先すべき事項かと思いましてね。察するところ天動梗吾の量刑について議論していたようですから」

「無理矢理にでも口挟んできた理由が話の通りなら安心しな。例の二人はちゃんと閉じ込めてある」

「元より吸血王は例外的特別監視対象者。今更二の足を踏む理由はないはずです」

「手続きを無視して二人を処刑しろ。膝詰め談判ってわけかい? 生憎と俺の目の黒い内は二人を夢幻に堕とすこたぁしねぇよ。藤澤砂夜の生存の事実を軽んじてる訳じゃあねぇ。そもそもあの二人は無関係だ。責められるべきは10年前に殺し損ねた俺達なはずだ」


 柔和な表情と態度に反して、意思を曲げるような真似はせず、長寿郎はただひたすらに口を返していった。


「種火は山火事になる前に消す必要がある。最早火は着いてしまっている」

「訊くがそいつは教皇の御意志なのかい?」

「忌まわしき過去を清算し、より権威を盤石にすべきだと進言させて頂いたまでのこと」

「だったら尚更、面子の話を人の生き死に決める現場に持ち込むんじゃあねぇよ!」


 平行線を辿る話し合いに亀裂を生じさせるかのような長寿郎の怒号。


「何の為に瀕死の(やっこ)さんを監獄廻廊に閉じ込めてると思ってんだい! いいかい天動梗吾との接点なんざとっくに調べがついてる。その上で隔離させたのはだなぁ、おめぇさんたちの言う義理を……」


 そこへ間の悪い一報が届く。駆け足で息を切らしながら一人の騎士団員が到着し、告げ知らせた。


「緊急の要件にて失礼! 第四神殿地下監獄廻廊より吸血王ルビア・アンヌマリー、天動真中の両名が脱走しました!」


 騎士団長を除いて動揺が走る。


京蒼生(かなどめあおい)副団長、シルフィム筆頭アル。以上も同行しているものと思われます!」


 教会の使いが言わんことではないとの批判的な視線を向けた。


「現状の四人程度ならば副団長で早急に対処可能です。警戒令を発動します。よろしいですね総騎士長」

「やれやれ何考えてんだ蒼生ちゃん……印象を悪くするだけだぜ。それも分からねぇあんちゃんじゃねぇだろうに」

「直ちに聖堂神殿内を捜索! 発見次第、即刻脱走者を捕縛しろ! 抵抗する素振りを見せた場合、我等聖堂騎士団の誇りを以って蹂躙、(ちゅう)せよ!」


 シルバートからの命令に不言ながら返答に及ぶ騎士団長の面々。意思を汲み取った居並ぶ五人それぞれの副団長が一斉に動き出した。



ーー*ーー



 蒼生の案内の元、監獄が続く石畳みの廊下を走り渡る真中とアル。ルビアは変わらず、ぐったりとしたまま真中の背に揺られていた。


「ここへ来てからどのくらいの時間が経った?」


 アルが時間を気にする。無理もない。それらを(うかが)い知るための情報が乏しい環境に置かれていた上、意識不明の状態で連行されて来たこともあり、経過度合いを測ろうにも限界があった。


「俺もさっき目が覚めた所だ。どれだけ寝てたか分かるか?」

「ざっと三日程です。これは推測に過ぎませんが、騎士団長会議は既に結論を出す頃合いかと」

「場合によっては見つかるだけで万事休す、といった具合か」

「ともかくルビアの治療が先だ。邪魔が入るなら不本意でもやるしかない!」

「私の工房に一式揃っているので、一先ずそこを目指しましょう」


 上階に続く階段まで一気に駆け抜ける。早々に差し込んでくる明かりの溜まりが徐々に大きくなっていく。


「ここより上が第三神殿です。同時に団員の活動圏内に入ることを意味します」

「元より進むも地獄、戻るも地獄だ。過去を変えられない以上、未来ある先に進む他ないだろう」

「ああ。このまま上まで突っ走る」


 段々と差す光量が増していく。最上段に足をかけた所で、思わず眩しさに目を伏せる。

 ステンドグラスから漏れ出た陽光に慣れて来ると、取り急ぎ瞼を開けた。

 一斉に腕を振り上げる統率のとれた音が聖堂内に反響する。

 三人に向けて銃口を向けて立つスーツ姿の団員がその場を占拠していた。


「張ってて正解だったってワケだな。早々にウチらツイてる、ノってる」


 二階、バルコニーの足場に右脚をかけて見下ろす一人の幼顔の少女。歳は蒼生と同じくらいだろうか。黒髪ツインテールに前髪のみが金髪。マニッシュで暗めのシャドーの入ったメイク。加えて一際目をひくのが背丈を越えるギターケースだった。

 彼女は唐突にそのケースからシングルコイル系のエレクトリックギターを取り出し、アンプに繋ぐ。


「第二騎士団総員射撃用意」


 三人を包囲する30名程の団員が一斉に引き金へと指を掛ける。


「殺せ、とまでは言われてないが、殺すな、とも言われてないんだよなぁ。名を上げるチャンス、モノにしてやる。どう()いてくれるか、ウチらに是非とも弾かせてくれよ!」


 細くシャープなフレーズが掻き鳴らされる。


「っ!!?」


 それを合図に撃ち込まれる三十発の弾丸の嵐。


「こてんぱんにしてオマエら漏れなくサレンダーだ」

「ルビアを頼む!」


 問答無用の一手に、ルビアの身柄をアルに託した真中が先頭に躍り出た。


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