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BLOOD HEAD〜不死になった彼とツン強めロリ吸血鬼は8人の最強魔術師たちと救世の旅をする〜  作者: 紙屋シキナ
第三章

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第三章「ヴァンパイア・オブ・ザ・スクールII」#4

 真中から可能な限り遠ざけるため連擊と追撃を繰り返すシルフィム。一人は恰幅(かっぷく)がよく、斧で牽制(けんせい)。すかさずリーダーのアルが身の丈以上もある大鎌を振るい、体勢を崩したところに長身の一人が槍を突き出す。


 三人の連携プレイに翻弄されるルビアだったが、死線を潜り抜けてきた局面は数知れず。彼らの完成され過ぎた、統率の取れた行動パターンを読むのは決して難しいことではなかった。


「『言い切ってもいい。彼ら、実戦経験は皆無ね。真の意味合いでの命の駆け引きをしたことがない、訓練止まりの動きよう。これなら一発きり。最後の血術(けつじゅつ)で……』」


 そこでルビアは出来上がっているフォーメーションを崩していくことに注力していった。こちらが避けるタイミングと、その際に隙が生じてしまうタイミングを徐々に理解させた上で裏をかく。加えて動きに緩急をつけることで、シルフィムらは自然と少しずつ必要以上に踏み込んでいった。そこでルビアの狙い通り、三人が一直線上のラインに並んだ。


「深追いするな! 向こうの術中だ!」


 アルが察知するも既にルビアは口上を述べていた。


「もう遅い。血流(ながれ)よーー激葬(げきそう)!!」


 坂巻く極大なる血流を一気に放出。本来ならば遠距離攻撃型の血術を至近距離にて浴びたシルフィムは、一人残らず水圧で押し潰されながら濁流に飲み込まれていった。


「力量の差が分かったでしょ? これに()りて私たちにはもうちょっかいを出さないことね」


「これが本物の血術……確かに……十分理解したさ」


 右脚を欠損したアルが、不敵に笑いながら顔の血を(ぬぐ)う。


「お前の信条である不殺(ころさず)の誓いが……僕らにとどめを刺しきれなかったということを」


 見ると三人それぞれ、負傷こそしているものの、誰一人として致命傷を受けた者はいなかった。


「お前が手加減するであろうことは分かりきっていた。常々あの男もまたその甘さ故の悪性(あくしょう)(なげ)いていたからな。そこまで殺さないでいることが重要なのか? 僕らは偽血(ぎけつ)を投与されている身である以上、失った部分などすぐにでも再生出来る。これは僕らを殺しきれなかった分、不発に終わった、というべきなんじゃないのか?」


「わたしの血をそれだけ浴びておいて、ずいぶんと饒舌(じょうぜつ)に語るのね」


「何?」


「勘違いされちゃ困るわ。何も命を奪うことだけが戦いの終わらせ方じゃない。わたしの勝利条件は、ここにあんたたちをとどめておくことだから」


「それはどういう……っ?」


 身体に付着した大量の血液が固まり始め、動きが極端に制限されていく。それはメキシコ、アメリカ国境にてカヤノに対し、再生を阻害(そがい)させたのと同じ血術行使だった。


「身体の外へ流れ出た血液を、今度は氷のようにして固めた。やり方自体はさっきあんたたちが持ってた武器の生成方法と変わんない。それで? さっきまで手加減とかなんとか言ってたけど。動けもしない。再生もされない。そんな身体でまだ追っかけてくるつもり?」


 ルビアの勝ちが確信に変わろうとしていた矢先、流星群の如き紅き閃光が遠方より放たれた。


「いや、依然変わりなく僕たちの勝率に揺らぎはない」


「……!?」


 天より降り注ぐ衝撃と共に、辺り一帯に張り付いたルビアの血液が激しく霧散(むさん)する。


「元より今回の奇襲、何も僕ら三人きりだとは明言していないはずだ」


 ルビアの肩を射る真紅の矢。向かいのビルに待機していたもう一人のシルフィムによる援護射撃だった。


腐食結漿(ふしょくけっしょう)の進行度合いは早まるが、これで僕らは元通り。それよりも血術が無駄撃ちに終わり、優勢に傾いたと実感している。手を尽くしたが事態は好転などしていない。むしろ、お前はとても危うい状況に陥った」


「くっ……」


 超速で再生していくシルフィムの一方で貧血を起こしたルビアの視界は歪み、いよいよふらつく。その絶好の機会を見逃すまいと一斉に矢が撃ち込まれていった。もはやそれに対応出来るほどの余力は残されておらず。


「わたしとしたことが……功を焦ったかしらね」


 何百本もの矢が、その華奢な身体に突き立てられていった。


ーー*ーー


「『どうして? どうしてさっきからずっと無抵抗に……っ!?』」


 繰り出された強烈な当身(あてみ)によってリズは意識を失った。


「攻撃を見極めて避けることにも、受けた傷を治すのにも体力は使う。だからその一切をやめた。そして一撃。昏倒させるためのたった一撃に残る力を溜めた。お前はどんなに俺が無防備であれ、命を奪うまでのことはしない。さっきの言葉を信じたから出来たことだ」


 真中はリズを木陰に寝かせると、自身の体力の回復を最優先するべく考えた。


「こんな状態で加勢しても足手纏いになるだけか。遠回りこそが近道。なら、俺が取るべき道はこれしかない」


 向かった先は昨日、昼食を調達した購買部。未だ手のつけられていない商品棚に陳列されたばかりのパンやおにぎりを端から端まで、獣のように食べ漁っていった。


 店員のおばちゃんが、呆気(あっけ)に取られている内に全てを頬張った真中は、もごもごとさせながらその場を後にする。


 緊急避難的措置とは言え、食い逃げ行為自体に心は痛めつつも、その甲斐あってか順調に腹は膨れていき、リズにつけられた傷口も完全に塞がっていった。


「『あとは肝心なルビアの居場所か。一言返事さえあれば、だいたいの位置は分かるのに……』」


「真中!!」


 頭をもたげていた真中の元へ、ずぶ濡れになったスクール水着姿のままのヒロが駆けつける。


「お前、その格好……」


「お願い……ルビアちゃんを助けて!」


「それが連中の狙いだな」


「もしかしたら真中の隣をこのまま取られちゃうんじゃないかって焦って私……最低だ。私のせいでルビアちゃんが死んじゃう……!」


「約束だ、話なら後でちゃんと聞く。とにかく今ルビアはどこにいる!」


「きっとプールの屋上」


 それを聞いた真中は直ぐに血術を用いた全速力で、ヒロが残した水滴の跡を辿っていった。


「間に合ってくれよ……」




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