第3話:フィルムの魔法と、デジタルの効率
広報誌の締め切りが刻一刻と迫っとるのに、凛ちゃんのカメラの腕は一向に上達せえへんかったんや。α99IIの膨大な機能と専門用語の羅列に、頭の中は常にパニック状態や。「絞り?シャッタースピード?ISO?呪文か!なんでこんなにややこしいん!?」毎日部室で頭を抱えとる凛ちゃんを見て、葵ちゃんは呆れ顔、楓ちゃんは静かに微笑むだけやったんや。
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ある日、凛ちゃんは部室の窓から見える中庭の風景をα99IIで撮ってみたんや。高性能なカメラやのに、なんでか全部がくっきり写りすぎて、まるで絵葉書みたいで「うーん、なんか、思ってたんと違う…」て感じやったんや。
その時、楓ちゃんが、部室の隅から出してきたいつも使ってる年季の入った中判フィルムカメラを構えたんや。凛ちゃんが摘んでテーブルに置いてた一輪の小さな花にレンズを向けて、カシャリとシャッターを切ったんや。しばらくして、楓ちゃんが暗室から持ってきたのは、モニターに表示されるデジタル写真とは全く違う、不思議な魅力を持ったプリントやったんや。
背景がとろけるようにボケけて、小さな花だけがフワッと浮き上がって見える。その写真に、凛ちゃんは「わぁ…!まるで魔法みたい!」て、思わず声を上げた。
「これは、絞り、というものだ。F値が小さいほど、背景がボケて、被写体が際立つ」楓ちゃんが静かに解説してくれる。凛ちゃんは、自分のα99IIにも「F」ていう数字があることに気づいて、「え、私にもこれできるんですか!?」て目を輝かせたんやけど、いざやろうとすると、F値の意味も、どうやって調整するかも分からへんくて、また頭抱えとる。
葵ちゃんは、「F値はレンズの明るさっすよ!ウチのレンズならもっと綺麗にボケますけどね!でも、フィルムは現像がめっちゃ手間やし、データ確認もできへんから、やっぱ非効率極まりないっす!」て、デジタルの効率性を熱弁するんや。
フィルム写真の独特の「味」に心を奪われつつも、現像の手間やマニュアル操作の難しさ、フィルムの入手に手間がかかることに、凛ちゃんはまた新たな壁を感じたんや。完璧なはずの自分が、カメラ一台でこんなに振り回されるなんて、信じられへんかったんやで。
鳥坂零OB: 「いいか、光画ってのはな、ホワイトバランスで光の色を操る、究極の錬金術よ!光の色温度を制する者が、光画を制す!」
綾瀬凛: 「え、えーっ!?色を操るなんて、魔法みたいやん!でも、私の写真、いつも変な色になるんやけど、もしかして、錬金術が下手やから?次、私も魔法使えるようになるん?」
綾瀬凛: 「【次回予告:完璧主義者、現像液の匂いにむせる!?】」