私の小さな日常
毎日同じ、変わらない日々の中の最近のわたしの帰宅後のルーティン。ストレッチしてから、泡立てたフォームでゆっくりと洗顔し、しっかりと湯船につかる。毎日同じ、でも違うこともある。
「ただいまー……」
誰もいない暗い部屋に向かって言う。
今日も残業二時間、これでも早く帰ってこれた方だ。
一人暮らしだから、誰からの返事があるわけじゃないけど、なんとなく毎回言ってる。
仕事とプライベートの切り分けの小さな儀式みたいなものだ。
ふーっと外から持ち帰った少しの緊張感を落とすように息をつき、傘を玄関横のラックにかけた。
部屋に上がってまず電気とパソコンをつけ、その間に手洗いうがいを念入りに、それから後ろを向いて洗濯機の上に朝置いておいたTシャツと短パンに着替えた。
パソコンの前に戻って、ちゃぶ台を壁側に運ぶ。
今から一時間、今日もストレッチと有酸素運動。
ベットもないし、物も少ないから、ちゃぶ台をどけると十分にストレッチできるくらいの広さはある。でも毎日移動させるのは面倒だと思う。それに本当は、もっとお気に入りの家具を置きたい。けどまた引っ越すかもと思うと、なかなかそれができない。
運動するうえで難点があるとすれば、ちゃぶ台の上にパソコンを置いているから、立った時に画面が低いこと。
お気に入りのトレーナーの動画をつける。まずは運動前のストレッチ。
身体が固いから、全然トレーナーのようにはできない。
でも運動する習慣がないわたしからすれば、これだけでも結構動いてる感じがする。
じっとりと汗をかいてから、お風呂を沸かす。その間にお弁当と水筒を洗う。お弁当はパッキンを洗うのが面倒で、最近はジップロックに入れている。少しは洗い物が軽減された気持ちだ。
お風呂が沸いたタイミングで、ハンガーにかけっぱなしにしていたタオルとたこ足につったままにしていた下着を取って風呂場へ。
先に髪と体を洗って、洗顔の泡立てネットを取った。ゆっくりと泡立てて、両手いっぱいの泡を作る。
ゆっくりと泡で顔を包んだ。
この瞬間が好きだ。洗顔料のいい香りと、ふわふわの泡に包まれて落ち着く。
ゆっくりとしっかりと、私は顔を洗う。
今日はいつもよりしっかりメイクだったから、時間をかけて丁寧に。顔に触れる感じではなく、泡をなじませるようにして洗って、ぬるま湯でしっかりと落とした。
別にきれいになろうとしてしているわけじゃない。
しっかりと泡立てて洗顔することが、自然と肩の力が抜け、ふっと息を吐ける。
ようやく、リラックスできた気がする。
洗顔が終わってからは、本を持って湯船で十五分。冷え性だから、芯まで温まるようにゆっくりと浸かる。今まではただ熱い湯船に浸かっていただけだから、カラスの行水だった。
リラックスすることって大事だと、最近までわからなかった。
ずっと学生のときも、社会人になってからも、あと何分で課題をして、あと何分で食べて、あと何分で用意をしてと、いつも自分で自分が追われるような、気を抜けないヒリヒリとした毎日を送っていた。
でも、こうしてリラックスできた方が、やらなければならないことには集中できるし、楽しいと思えることはより楽しめるようになった。
それができるようになるまで、私はいったい何年かかっただろうか。
本を読むのは昔から好きだった。違う世界を体験できる。今の世界から解放される。
本を読んで、じっくりとその世界に浸りながらのこの時間は、今では至福の時間になっている。
お風呂から上がり、しっかりと保湿。プチプラだけど、毎日顔パックを使っている。
別にきれいになろうとして使っているわけじゃない。そういう使い方を否定しているわけでもない。
私は私がパックをしている時間が好きだ。じわっと肌が潤っていく。その感覚が好き、パックを取った時のしっとりとした肌が好き。
今日は特にしっとりしている気がして、鏡の前で微笑んでしまう。
軽くご飯を食べ、片づけをしてから、布団に寝転がった。
あぁ、今日もよく働いた。今日も私は頑張った。
温かなふとんに包まれ、穏やかな気持ちになれる。
なんの代わり映えのない、私の毎日。
でも少しだけでも自分のお気に入りの時間を過ごせることが、私の毎日に彩を与えてくれる。
今日はいい感じに保湿できた。昨日は朝起きた時にスッキリしていた。一昨日は髪がきれいにまとまった。
本当に、小さな小さな私だけの出来事。
平凡でなにもない。でも私にとって穏やかで変わり映えのないこの日々に、少しのお気に入りがあるだけで小さな幸せを感じる。




