ハルカの夏;弁当とメロンパン
こんにちは、杞憂です。
投稿がかなり遅くなってすみません
「………」
特に何をするでもなくただ頬杖をつき、机に座っている柊さん………
――柊沙希
それは僕の席の隣の新しいクラスメート。
初めの挨拶でクラスメートを拒絶した人物。
始めは冗談で言ったのだろうと思った皆がHRの終了時に彼女の席に集まり質問の続きをする。
「柊さんは何処の高校からきたの?」
「ねぇ、好きなアーティストとかいる?」
「静かにして。」
その一言で周りの皆は黙り込んでしまう。そこに先陣を切って我が男の頃の親友、椎葉誠が彼女に話しかけた。
「い、いや〜、ね?俺らは沙希ちゃんと仲良くしたい訳なんだよ。だから、せめて皆の質問に答えてよ。それが出来ないなら、この俺様に熱いキスをし―――ヒィ!!?」
睨んでる……誠をとてつもない勢いで睨んでるよ。
眼鏡越しに怒りがひしひしと伝わってくる。
誠が恐れ僕の近くに来て「悠ちゃん、俺嫌われたよぉ〜!!」と報告してきて、両腕を挙げ僕を抱き締めようとする、が―
「傷付いた俺を癒してく―――」
子夏に殴られた。
頭を押さえ地で悶える誠。流石に誠に同情するよ。
凄い痛そうだし……
「何すんだよ、百合野!」
「今のはアンタが悪いでしょーが。」
「だとしてもやり方とか力加減とかあるだろ!お前のせいで頭にビックサイズのコブが召喚されたじゃねぇーか!」
「だからそれはアンタが悪いでしょ!」
二人とも食い下がらず各々言いたい事を言い合う。
「暴力女!」
「変態エロ魔神!」
「ツンデレ!」
「変態エロ魔神!!」
「凶暴女!」
「変態エロ魔神!!!」
「やめてよぉ〜!変態変態言わないでよ!!」
誠は泣きながら僕の方に来て抱き締めようとする。
「この、天崎に近づくなぁー!」
またしても子夏に殴られた。
そんな風景を冷めた目で見つめていた柊さん。
その後直ぐに席を立ち教室の外に出ていった。そこに残されたのはただ何時もの2年2組の楽しい空気だけだった。
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
午前の授業を終え昼休みに入ると生徒は昼飯を求める為教室は空になる。
この学校には購買と学食がある。
が、購買の値段が高いため自然と生徒は学食に集まる。
そして今僕は移動教室先から複数の人から預かった筆記用具を自分の教室に運んでいる途中だ。
ジャンケンで負けた人がその班の人全員の筆記用具を持っていく――そんな話しをしていて学食に早く行くため荷物は出来るだけ減らしたい。
きっと皆それを思いジャンケンに参加したんだろう。実際、僕がそうだからだ。
所詮人は弱い人間を蹴落とし、強い人間のみを勝たせるという社会構成なのだ。
その結果僕は弱い人間だと思い知らされた。
それと昼休みの時間が刻一刻と削られている。
だから少し急ぐ為小走りになる。
途中誰かの筆記用具を落としそうになり、誠のを落としてしまいの繰り返しで何とか教室にたどり着き扉の前まで来た。
開こうとするが手が塞がっているので扉が開かない。足で開けようにもスリッパの跡を壁等に付けると先生に怒られてしまう。
仕方無いので教室にいる人に開けて貰おうと思い扉の窓から中を覗くと独りで転校生がお弁当を食べている。
今朝の件もあるので何故か開けてと頼みづらい……
しばらく考えながら彼女を見ていたら何かが吹っ切れた様に感じ、足で扉を開けた。
「ねぇ、柊さん。お弁当、何食べてるの?」
「っ!!」
急に話しかけたせいか凄い勢いで席から立ち上がる。表情も酷くかたい。
荷物を持ち主の机に返しながら彼女と話すことにした。
「ねぇ、何食べてるの?」
「……」
席に座り直すと何も無かった様にパクパク口に運んでいく。
「よく噛んで食べないと消化に悪いよ。」
「……」
「だから、消化に」
「うるさい!別に良いでしょ!」
「ご、ごめん……」
「ふ、ふん!」
また彼女は独り黙々と弁当を片付けて行く。
僕も仕方無く黙々と作業を片付けて行く。
最後の一つのやつが彼女の前の席のモノだったから行きづらい……
でもこれは話すチャンスなのかな?
彼女の前を素通りしつつ横目で弁当の中身を確認した。
エビフライ、カップグラタン、コロッケ、ハンバーグ………多い……
「へぇ〜、結構食べるんだ……」
「!!、ゴホゴホ!」
話しかけたせいでムセたとは思うがかなりビックリしていた。
「大丈夫!?はい、水…」
隣の自分の席から水筒を持ってきて渡すとそれを奪い取る様にしてゴクゴクと喉に流し込む。
「はぁ!……あ、危なかった……」
「だ、大丈夫?」
「大丈夫じゃないわよ!」
はは、ですよねぇ〜。
「でも……まぁ、ありがとう。///」
「ん?なに?何て言ったの。」
「………」
彼女はそのまま顔を赤くして俯き始める。
しばらくしたら赤くしたまま弁当を食べだした。
(何か色々忙しい人だなぁ……てか人が食うの見てないで僕も早く食べよう……………えっ?)
ふと教室に飾られてる時計を見る。短針と長針の位置が普段食べ終わってる時間を指している。
…………………………………………やば!!
時計を見つめてやっと気付いた。もうすぐで授業始まる!!
「ごめん、柊さん!昼飯食べに行ってくるね!」
「えッ………」
扉を乱暴にスライドさせて廊下を可能な限り全力で走る。
気のせいかも知れないけど柊さん、僕が教室出てく時名残惜しい様な表情を見せていた気がした。
♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂
最悪だ………
ダッシュして食堂に行ったら人が食器を片付けていてかなりゴタゴタしてる。
それに購買に行ったら既に閉まっていた………。
―――昼飯、無し―――
そう頭の中でエコーがかかる。
つ、辛すぎる!
あまりにも残酷すぎる!
途方に暮れて重い足取りで歩いていると、ばったり子夏と出くわした。
しかし、彼女の両手で自分を抱き締めていた。
視線を胸に落とすと、彼女は胸いっぱいに購買で良くみるパンを抱き抱えていた……
「よう、天崎。こんな時間に会うなんて偶然だな。」
「うん。これは僕にとって運命的な出逢いだよ!」
「えっ!///」
「こ、子夏……」
「え、ちょ、なん、何なの!?」
重い足を持ち上げる。
他人からみたら足が悪い人の様に不自然に動く。
彼女もそれを見て後退る。
「子夏………頼む…」
「そ、そんな私……」
「頼む……パン別けて……」
「私、まだ心の準備が…………えっ?」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「いやぁー、マジで助かった。ありがとうな、子夏。」
「おう、まぁその、何だ?天崎に買ってきたようなもんだしな………」
「何て言ったの?すまん聞こえんかった。」
「いや!何でも無い!」
「そういや、さっきも心の準備がなんとか……」
「だから、何でも無いっての!!」
ムキになって反論してくる子夏。その表情には本気で怒ってると言うよりは多少笑顔も混じっている様にもみれる。
「何でニヤニヤしてんの?」
「え?」
聞かれるまで自分がニヤけていたことに気付かなかった。
「いや、子夏の反応が新鮮でさ。可愛く見えたよ。」
「!!……///」
実際、可愛く見えたのは本当の事だ。もじもじして何か小動物みたいだ。
例えるならリスと言うところかな。
いや、向日葵の種をかじるハムスターかな?
時折すごく愛らしくなる感じだね。
「で、何で僕の為に買ってきてくれたの?」
「結局聞こえてたんじゃん!!」
「まぁまぁね。」
「……ずるいよ。」
「まぁまぁね……で理由は?」
「さっき、転校生と話してるの見かけたから……それで、その……もしかしたら食べられなくなるんじゃないかと思って、さぁ。」
子夏はこうなる事が解っていた?
「えっと………何でそう思ったの?」
「それは天崎の性格を考えれば解るから……」
「と、言いますと?」
「ほら、何かと面倒見が良いし、優しいし……」
「ありがとう。誉め言葉としてもらっとくよ。」
焼きそばパンにかぶり付き自販機のパックジュースを飲む。焼きそばのソースが濃く、牛肉の大きさ、諸々考えてもかなり贅沢なものだ。
だが、なぜか購買のパンはかなり安い。
嬉しさがハンパナイ。
焼きそばパンの他にもメロンパンとあんぱんとメロンパンとメロンパンとメロンパンメロンパンメロンパンメロンパンメロン…………
「ッッて、どんだけ買ってんだよ!!」
「いやぁ〜『戦う少女』ていったらシャ〇じゃない?」
「違う!シ〇ナじゃなくてHOTDだろ!」
「あぁ〜ホットドッグならあるよ。」
「違う!ハイス〇だよ、ハ〇スク!あれこそ『戦う少女』だろ!」
熱く語っていると彼女はため息をつき持ってるホットドッグにかぶりつく。
まるで『はっ!!コイツ、何も解ってない。』と心で言ってるみたいだった。
暫く彼女との会話も無くメロンパンを腹に納めていく。
ふと彼女の手元を見るとカスタードクリームが入ったメロンパンを頬張っていた。しかも幸せそうな表情をしてでだ。
何故僕にもくれない!?など多少恨みを込めた視線を送るがあんな顔みたら恨むに恨めない……
「カスタード、美味い?」
「おう。美味いぞ。」
「何で一人だけ食べてるの?」
「……いや〜これ一個しか無かったからさぁ〜」
「もしかして、欲しかった?」
「めっちゃ欲しかった。」
「じゃあ、食べかけだけど半分あげる。」
食べかけのをそのまま渡された。
それを噛むだけで中のカスタードクリームが口内に流れ込み溶けていく。
購買とは思えない上品な味だ。
「う、美味い……」
「うぅ〜、私も一口くれよお〜」
「どうぞ。」
「やった!」
僕のかじった場所と同じ場所が削られた。削った本人は満足して新しいメロンパンをかじり始めた。
ふと思ったがこれって……
「これって、間接キスじゃ……」
「!!!」
そのワードに激しく反応した子夏は凄い勢いで咳き込む。
その顔は赤くなりながらどこか困った表情をしている。
「な、なんだよ……嫌なら別に食べなくていいよ!」
そう言うとカスタードクリームのメロンパンを奪って何処かに行ってしまった。
そして残されたのは僕と大量に余ったメロンパン達………
「はぁ〜……」
ため息と供に昼休み終了のチャイムが鳴り響く。
その後、僕が教室に入ったのは授業開始から五分後の事だった。
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あれから私は天崎を置いて一人宛もなくただ廊下を走っていた。
(私、天崎と……き、キ、キスを……///)
さっきの事を考えると走るスピードがどんどん失速してきた。
足が止まった場所は階段の踊り場だった。そこにある全身を丸々写してる大きな鏡を見ると一人の赤面してる少女が立っている。
その少女の手にカスタードクリームのメロンパンがあることに気付いた。
私にも同じものが手にあり心臓の鼓動が早くなる。
そしてそれを口元に運んで一口かじる。
「………おいしぃ。」
鏡の向こうの少女と私が微笑む。
完食するのにかなりの時間を使った私は授業開始から二十分後の事だった。
最近、想像力がなくなってきた感じがして嫌です。(涙)
閃きもしないし………あぁ〜、早くテスト終わらないかなぁ(T^T)
また、次の話しに会いましょう
感想待ってます