ハルカの春;寄り道
こんにちは杞憂です。
また遅い投稿になってしまい御免なさい。
では、どうぞ→→↓↓↓
「起立、礼、着席。」
清掃時間が終わり僕達は帰りのSTをする。
この時担任する先生の性格がよく解ると僕は思う。
几帳面な先生はきっちりと丁寧に連絡をするし、
いい加減な先生は必要な事しか言わない等、色々ある。
そう考えるとこのクラスの担任、なっちゃんは激しくいい加減な先生である。
「は〜い、連絡するから静かにしろ!まっ、つまらん事だし適当に流してかなわないぞ!」
なっ?適当でしょ?
なっちゃんの表情を観るとすぐに解る。この人どうせ『早く終らせて酒飲みたい』的な事考えてるだろうな。
この前なんか普通に
「酒飲みたいから早く席に着け!後三秒で着席しない奴は殺す!」
なんて不条理and理不尽極まりない事を生徒に言ってたからな〜。
周りを見ても皆はお話しをしたり、本を読んだり、挙句に寝てる奴もいる。
なっちゃんもそれを無視して連絡していく。話してる途中で何回か面倒くさいなど呟いていた。
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「という事連絡を終わる。皆気を付けて帰れよ!」
「起立、礼、さよなら。」
……あ、いつの間にかSTが終わっていた。時計を確認すると先生の話しは一分も無かった。
「じゃね〜、悠さん。」
「天崎さん。またね。」
クラスメートからの別れの挨拶を貰うと僕は直ぐに応えて別れの挨拶をしかえす。
そういや、何か女の子としての僕はこのクラスに早くも溶け込んでいる気がした。
まだ一週間程しか経ってないのに……
僕は新しくなったこの2年2組は凄い許容力があると核心した。
クラスメート達が別れを告げ合い教室を後にしていく。
そんな中、我が親友の(男だった頃の)椎葉誠は此方の方に近づいてくる。
その顔は真剣その物だ。
「ねぇ、悠ちゃん。悠、俺の親友は元気かな?」
僕は一瞬思考を停止してしまった。
色々理由はあるのだが、一番は、こういう質問が来るのを頭の何処かでわかっていたのに全く考えて無かったからだ。
「アイツ最近めっちゃ休んでるから心配なんだよ。風邪でもひいたのか?」
「あぁ〜と、……」
ヤバい!これはヤバい!!どうしよう!!!
「え〜っと、その……」
「はるくんは風邪引いてて来れないんだよ?知らなかった?」
「うわ!って、七瀬か。脅かすなよ。」
「ごめんごめん。」
教室の入り口の前には七瀬が立っており、彼女が急に話しかけたせいで誠が驚いた。
七瀬と誠と僕は同じ中学、同じクラスだったのだ。しかも三年間もだ。
僕と誠はゲームなどの話しで盛り上がる事が度々あったから自然と直ぐに友達になった。
だけど、七瀬の場合、いや、女の子とは余り話しかける機会なんてなかったから関わりを持たなかった。
と言っても、それは中学に上がって直ぐの話である。時間が経つ度に生徒男女問わずに会話をするようになる。
勿論、それは僕と誠も例外ではない。
でも、七瀬の場合はいつも一人でいた。
朝登校する時も一人、
放課の時にも一人、
係の仕事をする時にも一人、
給食を食べる時にも一人、
午後下校する時も一人。
何をするのも彼女はいつも一人だった。
その姿は今の彼女からは想像する事が出来ないほど冷たく冷めている様に見えた。
でも、冷たかった彼女は僕達と接するようになって少しずつだけど変わっていった様な気がした……
「七瀬は俺らのクラスに何か用あるの?」
「ううん、二人と一緒に帰ろうと思って待ってたの。」
「そうなんだ。じゃあ、早く行こか。誠君も早く行こ。」
自分で言っておきながら「誠君」ってなんだよ!
今までずっと「誠」と呼んでたから何か違和感を感じるな〜。
すると彼は苦い表情を見せバツが悪そうに応える。
「すまん、俺はこの後部活あるから一緒には帰れないんだよ。だから二人で帰ってくれないか?」
「わかったよ。じゃねぇ、まこくん。」
「じゃあ、また明日ね。誠君。」
「悠ちゃん、……名残惜しいけど暫しの別れだ。さようなら〜!!」
そう言い残すと誠は下駄箱の方向に消えて行った。
その時の彼はさっきまでの真剣な表情は消え失せ、いつものお調子者?がよくしそうな顔になってた。
てか、上手く誠の質問を流せたと僕は誠が去ってから気付いた。
七瀬には感謝しないといけないな。
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誠と別れてから僕と七瀬はゆっくり歩き下駄箱へ行き、
靴に履き替え、
校門を潜り、桜の並木道を通る。
毎年この通りの桜は他よりも早咲きするのだ。
だから通りの桜の木ほぼ全て満開なのだ。
僕は桜の花を観つつ七瀬と一緒に歩く、ゆっくりと。
彼女もさっきから桜の花を見ている。「綺麗だね」と口で僕に語りかけてくる。しかし、同時に、瞳はそれとは逆に物寂しく語りかけてきた。
それに対して僕はただただ「うん、そうだね」としか言い返せなかった。
この会話はこれで切れてしまい、またお互い桜の観察に戻っていった。
桜の色に染まった空を観ながら歩いていると直に桜の木が少なくなっていき、次第に木ではなく家家が並んでいく風景に変わった。
名残惜しく後ろを振り向くとすぐ近くに桜並木があるのにそれはとても遠く、小さく見えた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ねぇ、今から何処か行かない?」
急にだ、七瀬がそんな事言うのは珍しい事だ。
「良いよ。何処に行きたいの?」
「君と一緒なら何処にでも!」
何だそれ。何か試されてる感が漂ってると思うのは僕だけかな?
だったらそれに答えるのが男、いや、漢だろ!!
「わかったよ。じゃあ………」
………それから10後………
「いらっしゃいませ。お二人様ですか。」
「はい」と答えると女性のウェイターさんが微笑み「此方のお席へどうぞ。」と言い残しウェイターさんは店の奥へ消えていった。
僕達は指定された席に着きメニューに目を通す。
この店、喫茶店は学校の近く位置しており、学生の多くが帰りにこの店により腹を満たしている。
その為か店は学生割引をするようになった。このサービスのお陰で店はかなり繁盛してるらしい。
メニューには品物の写真が所々貼ってあり、それのほとんどが人気メニューか、新作メニューであるみたいだ。
「ねぇ、七瀬は何するか決めた?」
「ううん。まだ。」
七瀬は何にしようか真剣に考えてるみたいだ。さっきからメニューに釘付けだ。
その点僕は既に決まってるけどね。事前に財布と相談済みだよ。
七瀬も決まってからウェイターさんをよんだ。
「僕はコーヒーを一つ。七瀬は?」
「私はイチゴパフェとコーヒーを一つずつ。」
「では、ごゆっくり。」とウェイターさんが言い残してまた店の奥に消えて行った。
「なぁ、七瀬。パフェ頼む程金に余裕あるのか?」
「まぁ、ぼちぼちね。それより、何か言葉遣いが男みたいだねぇ〜。悠ちゃん。」
「別にいつもどうりだよ。それに本当の事知ってる人に取り繕う必要しないし。やっぱりラフな自分が一番いいね!」
僕は注文の時に出されたお冷やを口にしながら話しを続ける。
「ねぇ、何でコーヒーしか頼まないの?」
「ん?あぁ、まぁ、気分でだな〜……」
七瀬は僕のちょっとした態度に気付いたのかニヤニヤして「はは〜ん。」と言い勝ち誇った様な態度をとり言い放つ。
「どうせお金が無いから安いコーヒーしか頼まなかったんでしょ?」
「グッ!!!」
くそ!言い返せない!!何一つ言い返せない!!!
全て、総て見抜かれてしまっていたからだ。
何故だ?何故だ?何故なんだーー!
「はぁ〜。いつもそうでしょ?お金が無いといつも飲み物だけ頼むの。」
「あっ!そうか、だから解ったのか。」
「まぁね。いつもの事だから。」
………いつもの事?何か引っかかる。もしかして……
「………なぁ、キミは誰なんだ?」
「君は誰って失礼だなぁ〜。何が言いたいの?」
「だから君は誰なの?」
「桜七瀬。2年1組だよ。」
「七瀬はそんな口調じゃないし、僕の事をキミとは呼ばない。」
少し強めに言いって見せたが彼女には余り効果が無かったのか表情一つ変えずに此方を見つめる。
僕も負けずに彼女の目を見つめる。
ここで負けられない。
聞くんだ。本当の事を!
「本当の事を言ってよ。キミは―――」
「失礼します。イチゴパフェとコーヒーをお二つです。ご注文は以上でよろしかったですか?」
「え?ぁあ、はい。」
「では、ごゆっくり。」
ウェイターさんが嵐の様に現れ嵐の様に店の奥へ消えて行った。
彼女の方に向き直ると既にパフェに手を付け始めていた。
赤のシロップは白のクリームの山に落ちており、重力に従いながら山を削っていってる。
そんな山に彼女はトッピングのウエハースを真横からぶっ刺しスプーンの様にすくいあげ、それごと食べてた。
僕は彼女が食べているのを観ながら頼んだコーヒーを飲む。
ほろ苦い味は口の中ですぐ馴染んでいき非常に飲みやすかった。
一口飲んでこんなに満足する程ここのコーヒーを気に入ってしまい、またこの店に行こうと思ってしまい目の前の問題を完全に完璧に忘れていた事に気付いたのはコーヒーを20分ほど全て飲み終えてからの事だ。
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「で、キミは結局誰なんだ?」
「………だから私は七瀬なんだって。」
「嘘付くなよ。」
「………はぁ〜。解ったわよ。まぁ、そろそろ私も君に話そうと思っていたから。」
「え………?」
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――それは少女が小学生だった頃の記憶(悪夢)――
どうですか?
感想待ってますね(o^v^o)