黒幕との対峙
光が戻った方向に向かうと、地面の色が他の茶色とは異なり、真っ黒になっているところがありました。
2人はそこに近づくと、何やらうめき声が聞こえたのでした。
その声の主を辿ると、そこには仰向けになって倒れている男性がおりました。
「久しぶりだなメイソン」
ヴィオルは彼の名前を挙げて挨拶をしました。
しかし、その表情は睨みつけておりますし、声も大変低く、全く持って敬意はありませんでした。
メイソンは何も言わずにただヴィオルを睨み返します。
エラは彼とはどういう関係なのだろうと疑問に思いながらも、この間を介入することは出来ず、ただそのまま立ち尽くしておりました。
「どうしてこんな無茶をしたんだ?」
ヴィオルは再びメイソンを睨みつけましたが、言葉は少し震えておりました。
メイソンはその言葉にふっと笑って、少し掠れた声で答えます。
「別に無茶なんてしてないさ。それにしてもヴィオルは心配性だな」
「そりゃ同じ魔法使いだからな。心配ぐらいするさ」
「馬鹿な奴め」
エラは王族であるヴィオルにこんなタメ口で話していることから、彼はヴィオルとは仲が良かったのだろうと推察しました。
しかし、一体何故このようなことになったのか、エラには全く予想がつきませんでした。
「俺ではメイソンを治せない。だから医務室に連れていくぞ」
ヴィオルは低い声ながらもメイソンの怪我を早く見てもらおうと、魔法の絨毯を出し、移動させようとメイソンに近づきました。
「触れるな!!」
メイソンは大声を挙げるとその瞬間大きな炎が現れ、ヴィオルは前に進むことが出来ませんでした。
エラも自分に降りかかりそうな勢いのある炎が急に出てきて驚きました。
あんなにも体が弱っていたのにも関わらず、どこからその力が出てくるのか全く分かりません。
ヴィオルもエラと同様に大変驚いており、何が起こったのか理解するまで数秒かかりました。
「俺の邪魔をしておいて、最後まで惨めな思いをさせられてたまるかよ」
メイソンの怒りにより、周りの炎はより大きくなりました。
とてもではありませんが、2人はメイソンに近づくことは不可能でした。
「ヴィオル、俺を捕らえたらこの戦いは終わると思っているのか? ここの戦いはあくまでもヴィオル達を引き寄せるカモフラージュ。本来の目的は王宮だ。俺の部下達が、今頃王宮を乗っ取っていることよ」
「レインボーバードが目的ではなかったのか?」
ヴィオルはメイソンの発言に驚きが隠せませんでした。
それは王子からリンネ国がそのような企みをしているから、王宮の警備が手薄にさせるよう仕向けていると言っていたからです。
「レインボーバードは当然頂く。それも1つの目的だ。だけど1番の目的は降伏させて、リンネ国の従属国にすることさ」
「それなら舞踏会の時を狙えば良かっただろう? 他の領地を多く侵略したら国だって降伏せざるをえなくなるのに」
「そんなの白を切られたら意味ないだろう。だから確実な王宮を狙った。警備を薄くさせてね」
そんなことにも気づかなかったのかと、メイソンは更に高笑いをしました。
もうこの戦いには勝ったも同然と思っており、メイソンは大変堂々としていました。
「まさかもう降伏したとでも思っているのか? 確かに動機の読みは完全には当たらなかったが、そんな簡単に降伏するほど王宮は甘くないぞ」
「何強がってでもいるのか?」
ヴィオルはメイソンの態度を気にせず、至極淡々と話を続けました。
そのヴィオルの冷静な態度に、メイソンは少し驚きつつも、こちらも淡々と返事をします。
そこでヴィオルは1つの質問を投げかけました。
「部下達からは連絡でもあったのか?」
「いやまだだ。こちらの戦いがまだ終わってないのに連絡するわけないだろう」
「違うね。彼らは連絡が出来ないだけだ」
「は?」
メイソンはヴィオルの言っていることが理解出来なかったため、パニックになり、放ち続けていた炎が止まりました。
収まった向こうには大きな口を開けてポカンとしているメイソンの姿が見えたのでした。
「王宮は征服なんかされてないぜ。寧ろメイソン達の弟子達は捕らえたようだ。だからメイソンとは連絡が取れないのさ」
「そんな馬鹿な。彼らがあいつら如きに負けるはずがない」
「だからそれが甘い考えだと言っているんだ」
「は?」
ヴィオルは相変わらず淡々と話を続けますが、メイソンはヴィオルの話を信じることが出来ません。
そのため、メイソンは再び大きな口を開けてポカンとしていました。
「確かに魔力だけで言うと、叔父さんや父さんやアレクシス3人共にメイソン達と比べて格段に弱い。それに従者やメイド達に関しては魔力自体がない。だけど、仮にも王族だから魔法は使えるし、また彼らは元々優秀な人達が集まった集団だぞ。正直詳しいことは知らないが、彼らを決して舐めて良い存在ではないし、魔力だけで対抗出来ると思う方がおかしいだろ。そこまで信じられないのなら俺が王宮に繋いで彼らの姿を見せようか」
ヴィオルは杖を取り出して一振りすると、大きな四角い画面が空中に現れました。
そこには複数の人達が、ぐたっとなって横たわっておりました。
「嘘だろう……」
メイソンはとても信じられない光景を目の当たりにし、力が抜けてその場に座り込んでしまいました。
嘘だ嘘だ嘘だとその場で繰り返しています。
「もう諦めてくれ。メイソン、早く治療しよう」
ヴィオルは再びメイソンに近づき連れて行こうとしました。
しかし、メイソンは先程よりも大きな炎を上げて、火の粉が2人の方にも降りかかりました。
何とかヴィオルは咄嗟にガードして耐えました。
あれだけ疲れ切った体で本当に何処からその大きな力が出てくるのか、やはり2人には全く分かりませんでした。
「このままだと彼らにも、シャーロット姫にも顔向けが出来ない。このまま終わらすわけにはいかない!!」
メイソンは全く諦める様子はなく、2人の耳が痛くなるほどの大きな声でそのように叫んだのでした。




