戦いの終幕
少人数の軍隊を相手に倒してきたエラ達ですが、最後に残っているのは、リンネ国の騎士団長がいる1番大きな軍隊。
ここは、すでにオルガ国の騎士団長が率いて、もう少しで決着が付くところでした。
ほとんどのリンネ国の軍人達がもう完全に倒れており、オルガ国の軍人達は半分ほどはほぼ怪我なしです。
しかし、ぱっと見たところすでに亡くなっている軍人は見当たらないものの、約半分ほどは怪我をしており、とても自分の力では歩くことが出来ないため、動ける軍人の過半数が怪我している軍人達を館へと運んでいます。
そして、エラ達が駆け付けた時には、ちょうど騎士団長同士が直接戦っておりました。
エラは自分も参戦しようとしましたが、オルガ国の騎士団長が、リンネ国の騎士団長の肩から背中にかけて思いっきり剣で斬りかかり、リンネ国の騎士団長はバタッと倒れていきます。
そして、周りにいたオルガ国の軍人達がリンネ国の騎士団長を捕らえたのでした。
こうして、たった1日でリンネ国の軍人を全て倒したオルガ国。
怪我人は出たものの、元々大きな傷を負っていなかったことと、現在医者や看護師、薬師の手当により、命の危機はありませんでした。
ただ1人――騎士団長を除いては。
彼はリンネ国の騎士団長を倒したものの、その直後にリンネ国の騎士団長に腹を突かれ、大きな怪我を負ってしまったのです。
現在意識が不明で、ベッドに横たわっています。
そのため、死者なしで勝ったはずなのに、空気は重いままでした。
エラはヴィオルの元へ向かいました。
すると、ヴィオルはまだ結界を張って魔力を使い続けていました。
「ヴィオル、もう戦いは終わったわよ。だから……」
「……」
ヴィオルは何も返さずに、顔を顰めて結界を張るのをやめようとはしませんでした。
「騎士団長様があんな状態になって辛いのは分かるわ――私も辛いから。ヴィオルがとても仲良くしている方だし、お義姉様のご主人様でもあるし……」
「それはそうなんだけど……何で俺とレオが仲良いこと知ってるの? あとお義姉さんの主人って?」
唐突に想定外の声掛けをされ、ヴィオルは先程の険しい表情を変えて大変驚いており、また不思議そうに首を傾げました。
「お義姉様から聞いていたの。ヴィオルは騎士団長様と付き合っているのではないかと囁かれるほど、仲が良いって」
「アレクシスだけでなくて、レオともそんな噂が流れてたのか!?」
ヴィオルは、王子とのあらぬ噂がよく流れていたのは知っていましたが、まさか騎士団長ともあらぬ噂を流されていたとは驚愕でした。
「前に年下の方のロゼリアお義姉様が侯爵家の侍女をしているって言ったでしょ。あれは騎士団長様の家のことで、お義姉様が仕えているのはその家の主人の騎士団長様なのよ」
ヴィオルは、確かに騎士団長から騎士団長のところに新たな優秀な侍女が入ったとは聞いていましたが、まさかその侍女がエラの義姉である知らなかったので、またまた驚きました。
「ヴィオルも疲れたでしょ。私も疲れたわ。もう日も落ちたことだし、早く館に戻ろう。私が箒で連れて行くわ。それともおんぶの方が良いかしら?」
「後者は論外だ!」
「勿論冗談よ。私だって体力はそこまで残ってないって」
相変わらずヴィオルは結界を解こうとしなかったので、これ以上疲労させないためにも、冗談を言って気を緩めようとしました。
案の定、ヴィオルは気を緩めて、結界が途切れます。
しかし、ヴィオルは結界が切れたのに気づくと、即座に先程と同じ大きな結界を張りました。
「どうしてやめないの? それ以上魔力を使ったら完全に倒れてしまうわ!」
エラはヴィオルの身体の心配と、どんなに言っても全くやめようとしないことへの苛立ちが入り混じったことで大声を荒げてしまい、またヴィオルの腕を無理矢理引っ張り、魔法陣の外へと出しました。
「何するんだ!」
「これ以上は危険だわ!」
「何か嫌な予感がするんだよ。他の魔力をまだ感じる」
「他の魔力?」
エラは他の人の魔力を直接触れる以外は感じることが出来ないため他の魔力を全く感じません。
先程は戦いの真っ最中で周りが五月蝿かったためあまり聞き取りませんでしたが、そう言えば先程前公爵夫人も火の魔法と私達が使っていない魔力を感じると言っているのを思い出しました。
エラは気になるものの、やっぱりヴィオルを休ませようと、箒を出した時、空の上から大きくて独特な鳴き声が聞こえてました。
「ガゥアー!」
上を見上げると、人の体長と比べ物にならないほどの大きな体と後ろに大きな羽が2枚、色は黄緑と今まで見たこともない動物が1匹飛んでいました。
その動物は大きな口を開けます。
すると、飛んでもなく大きな炎が出て来たのです。
エラは驚き過ぎて何も出来ずに固まってしまいます。
その炎はエラの目の前まで来ましたが、その炎に巻き込まれることはありませんでした。
ヴィオルがバリアで守ってくれたのです。
また、多くの人がいる館は前公爵夫人がバリアを張って守っておりました。
その炎は、エラ達だけではなく、そこそこ離れている館まで届く大きさがある炎であったのだと、エラは気付かされます。
「何でドラゴンがいるだ?」
「え。 ドラゴン―――?」
エラは驚き過ぎて、向こうの館まで響きそうな大きさで叫んでしまいました。




