シンデレラが虐められていたと言う誤解の真相
「ねぇ、そもそもお義母様達が私を虐めていると言う誤った情報はどこから仕入れたのよ」
ようやく1番聞きたかったことをエラは尋ねたのでした。
「ごめん。どうやらじいちゃんが勘違いしていたみたいだ」
どうやらヴィオルが先ほど話した彼の祖父のことのようですがエラにはそれ以上に気になることがありました。
「じいちゃんってお祖父様のこと?」
「ああ、さっき話した祖父のことさ」
「普段はじいちゃんと呼んでんの?」
「ああ、じいちゃんと呼んでたよ」
実はエラは継母達のことをお母さんとかお姉さんと砕けた呼び方で呼んだことはありませんでした。
何故なら、継母達は普段からお父様とかお母様と呼んでおり砕けた言い方はしなかったからです。
3人がそのように呼ぶのにも関わらずエラ1人が砕けた言い方をするわけにもいきませんでした。
エラは親しみのある砕けた言い方に憧れていましたが、言うことが出来ない現状に悲しんでいたのでした。
そのため、祖父をじいちゃんと砕けた言い方で呼んでいるヴィオルがとても羨ましかったのです。
「それでそのお祖父様が何で勘違いするのよ。私は貴方のお祖父様には会ったことは勿論、知りやしなかったのよ」
「間違いなく、会ったことはあるはずだよ」
エラはその理由を詳しく尋ねました。
するとなんとヴィオルの祖父がエラの父親の子どもの時の隣人であり、親子のような関係であり、たまに子爵家に来ていたと言うのです。
しかし、エラには父親にそのような人物がいたことを思い当たらず困惑してしまいました。
「じいちゃんは銀髪で、身長は193cmと高身長かな。あと、目はオブシディアンのように黒いね」
「まさか、あの美形のオジサマがヴィオルのお祖父様だと言うの!? どう見ても親子のようには見えないわよ」
確かにヴィオルの言った人は年に1回か2回程度の割合でこの家を訪ねていました。
しかし、どう見ても40代前後であり、父親とは友人のようにしか見えませんでした。
「お祖父様は一体何歳で亡くなったのよ」
「66歳」
「ちょっと待って。どれぐらい年が離れているか分からないわ」
ヴィオルが次のように説明してくれました。
「お父さんが亡くなったのは37歳でエラが9歳の時。今のエラが16歳だから、つまりお父さんが亡くなったその時のじいちゃんは59歳だったと言うわけだよね。つまり、お父さんとじいちゃんの差は22歳差ってこと」
確かに年齢で見ると親子ぐらいの年の差です。
エラは、その事実がとても受け入れ難く頭が痛くなりました。
「まあ、魔法使いって普通の人よりも一回りや二回り小さく見える傾向が多いから仕方がないかもね」
「え、そうなの?ならヴィオルも本当は40ぐらいなの?」
ヴィオルは笑いながら、手と首を横に振りました。
「僕は22歳だよ。エラより少し上のお兄さんさ」
「なんだ40代じゃないんだ。つまんないの」
「え、40代の方が良かったの?」
「だって、その方が面白いじゃん。あ、でもやっぱり年が近くて嬉しい。友人としては年が近い方が良いもんね」
「どっちなんだよ」
2人は笑い合いました。
「それにしても毎回、ヴィオルのお祖父様はお菓子を持って来てくれたのよね。いつも美味しかったわ」
「お菓子好きなの?」
「勿論、女の子は誰でもお菓子が好きなのよ」
「何のお菓子が一番お気に入り?」
「えっと……ピンクとか緑とか紫とか色々な色があって、中にクリームが挟まってて、サクサクした……えっと、マ、マ……そうマカロニ!」
「いや、それマカロンね。マカロニはサラダとかに入っているやつだよ」
「ああ、そうそうマスカット」
「いや、マカロンだって。マしかあっていないじゃないか。さっきより離れているよ」
再び2人は笑い合いました。
こんな楽しい感覚はお互いに久しぶりだったのです。
「それで、お祖父様がお父様と仲が良かったのは分かったけど、どうして勘違いしたわけ?」
逸れた話を再び戻してエラは真顔で尋ねました。
「僕が聞いた話だと、どうやら継母が裏でとても厳しい言葉で叱っているのが聞こえて、また、君のお父さんが継母と結婚した途端、エラに会わなくなったらしいよ」
どうやら、継母の注意を虐めていると勘違いされていたようです。
「お義母様から貴方のお祖父様がとても偉い方だと聞いた時、淑女じゃない私が気軽に話していたのが怖かったの。お父様はそんなこと一言も言わなかったからその時までは気にせずに話していたけど、知ってからは会うのが怖くてなって私から拒んだわ」
「じゃあ俺が貴族だって最初から分かっていたらまともに立ち会わなかったってこと?」
「ええ、一目散に逃げたと思うわ」
「やっぱりね。それしても俺ってそんなに貴族感ない?」
「いや、あの時はただの不法侵入者としか思わなかったから」
「魔法使いなのに?」
「魔法使いだろうがなんだろうが、不法侵入は不法侵入でしょう。でも友達になったから許してあげるわ」
「やっぱりエラと居ると調子が狂うな。それはそれで斬新で面白いけどね」
2人の誤解は無事に解けてお互いに安心したのでした。