シンデレラの魔力
ヴィオルは、エラが魔法保持者だったら、今までのことが全て説明つくなと納得しました。
エラが今まで狩りで百発百中だったり、家事が異様に得意だったのは、自分達の生活をする上で必要不可欠だったため、無意識のうちに、光の魔力で攻撃魔法を使ったり、木の魔力で家事能力を使っていたりしたのでしょう。
先ほど魔法で作った的は、魔力保持者でないと当たることなく、その場で弓が落ちますが、魔力保持者なら的を当てることが出来るので、当てられたのが何よりの魔力保持者としての証拠でした。
また、エラがヴィオルの魔法の杖を奪い、ヴィオルに触れた時にヴィオルをドレス姿に変えることが出来たのもエラの魔力によるものでしょう。
最初に変身させることが出来なかったのは、今まで月の魔法を使う機会がなく、そして苦手な魔力だったからだと思いました。
何故なら魔法の気配が、最初は微塵もその気配がなかったからです。
だから、魔法の杖を奪ったとしても無駄だったのです。
そもそも魔法の杖と言うのは、杖自体には魔力を持っていません。
構造は、しっかりと手の平全体で握れるようにして自身の魔力をその杖に流れるように、持つ方を太くしてあります。
そして、反対側は流れてきた魔力が1点に集まり、大きな魔力を放出が出来るようとても細くなっています。
また、魔力が流れやすいように、滅多に取れないレアアクアクリスタルと言う特殊な物質を用いられて魔法の杖が出来ているのです。
つまり、魔法の杖は魔力保持者にとっては欠かせない道具ですが、一般の人からしたら見慣れないただの杖でしかありません。
また、魔力が開花していない魔力保持者にとってもただの杖でしかありませんでした。
そこでエラが、月の魔力を開花させる方法は2つしかありません。
1つ目はその魔力を開花されるための長い訓練をすること。
全く使えなかったものが、急に使えるようになったので、それはまずないでしょう。
多分、雷や木の魔力は幼い頃からやってきているのでスッカリ上達しているのでしょうが。
2つ目は他の魔力保持者から反対の魔力を流してもらうこと。
そもそも魔力には対立する組み合わせと言うのが存在します。
水の魔力の反対は火の魔力。
風の魔力の反対は雷の魔力。
木の魔力の反対は土の魔力。
影の魔力の反対は光の魔力。
そして、月の魔力の反対は陽の魔力。
ヴィオルは月の魔力は枯渇していたものの、陽の魔力は残っていたため、エラがヴィオルの手に触れた時に陽の魔力が流れ、月の魔力が開花したのだと思われました。
そして、その魔力でヴィオルをドレス姿にすることが出来たのでしょう。
また、ガラスの靴が未だに消えていないのは、開花したエラ自身の月の魔力によって残っているのだと思われます。
因みにお城で落とした方のガラスの靴が存在していたのは、王子の魔力とヴィオルの魔力によるものでした。
エラも同様の現象が起きているのでしょう。
それにしても、誰の指導も無しでここまでコントロール出来るとは、間違いなく天才。
しっかりと磨けば、自分以上の魔法使いならぬ魔女になるかもしれません。
「エラ、家族とかに魔法使いや魔女がいたの? お父さんとかお母さんが実はそうだったりする?」
魔力保持者であるならば、祖先に魔法使いや魔女がいたとしか考えられません。
祖父からはあまりエラ達のことを聞いたことがないため、分かりませんが、これだけ魔力が強いと言うことは、普通で考えたら両親が魔力保持者だったのだろうとヴィオルは考えました。
「いや、そんな話聞いたことないのだけれども」
エラはきょとんとして首を傾げています。
どうやら聞いたことがないと言うことは少なくとも両親ではないのでしょう。
では何故ここまで魔力を持っているのかますます疑問になりました。
「ところでヴィオル、今日何しに来たの? 返事は1週間後じゃなかったけ?」
ヴィオルはしまったと思いました。
エラといるとついついエラに振り回され、本来するべきことさえ忘れていたのです。
それにしても、あのことを話さなければならないのかと思うと再び気分が沈むのでした。
それでも話さないわけにはいきません。
意を決して話し始めました。
「エラ、俺は今から遠くへ行かなければならない。それにその任務は危険だから、最悪命を落とし兼ねない。だからあの求婚は……」
「どうしてそんな危険な任務を引き受けるのよ! そんなの断れば良いじゃない!」
最後の話まで聞かず、エラは怒り始めてしまいました。
「どうしても行かなきゃいけないの? それは王命なわけ?」
「ああ、そうだよ」
「なんてことなの……」
ヴィオルが断れない任務は、父親である公爵か王からの命令なのだろうと思いましたが、本当にそうだと聞くと避けられないことなのだと分かり辛くなります。
「一体どういう任務なわけ? 教えてよ」
「それは国家秘密だから教えられない」
「じゃあ何で私のところに来たのよ。何も言わずにそのまま行けば良かったじゃない。意味が分からないわよ」
エラはヴィオルにしがみつき泣き始めてしまいました。
「エラ、本当に勝手でごめん。でもこの任務はどれだけ長引くかは分からないし、その任務が終わる頃に生きているかも分からないから。だから……だから求婚を断って欲しい。俺の婚約者として縛りたくないから」
「やっぱ意味が分からないわ。何で縛るのが駄目なの? 好きになった時点でもう貴方に縛られているわよ!」
ヴィオルが本来のここに来た理由を伝えたことに対し、エラは更に怒りが加速してしまいました。
「確かに1週間後までに答えを出してって言ったから、私がまだ回答を出していないと思ってそう言ったのかもしれないけれど、なら何故今の時点での回答を聞かないの? 何故待っていてくれと言わないの? 貴方の優しさが裏目に出てるわよ!」
エラは、1つ深呼吸して姿勢を改めました。
「私はヴィオルのこと愛しいます。だからあの求婚を受け入れたいです」
ヴィオルはエラの告白に驚いていしまいました。
まさか欲しかったセリフを今言われたのですから。
「ありがとう。嬉しいよ」
ヴィオルは断らすためにここに来たのに、嬉しい言葉が返ってきたものですから、つい思わず笑みを浮かべてしまったのでした。
「じゃあ、私はヴィオルの婚約者ってことね!」
その言葉にヴィオルは思わず絶句します。
確かに先程の返答はどう見ても婚約者になってくれてありがとうとにしか聞こえないでしょう。
とても無邪気に喜ぶエラを見て、先程の言葉を取り消すことも出来ないと悟ったヴィオルは無言で首を少し縦に振りました。
その動作にエラは満足そうです。
「私は貴方の婚約者になったんだもの。どういう任務か教えてくれるわよね? もし教えてくれないなら、この弓で貴方の手首か足首を撃って、今から向かおうとする場所に行かせないようにするわよ」
エラは真顔になり、実際に弓を引いていつでも撃てるような構えをしました。
これはどうやら本気のよう。
エラには隠しごとが出来ないのだと、ヴィオルは諦めることにしたのでした。




