シンデレラが舞踏会に行きたい理由
「実はね私、見たい人がいるの」
「やはり、殿下をご覧になりたいのですね」
ヴィオルはやっぱり王子を見たいのかと勝手に解釈をするとエラはあっさりそれを否定しました。
「王子じゃなくて、私が見たいのは王様」
王子の結婚相手を見つける舞踏会で目当てが王子ではなく、王という普通の人達とは異なる目当てである理由をヴィオルはエラに尋ねることにしました。
どうやらその理由は過去に遡るようです。
エラが7歳、つまり両親が共に生きていた頃で3人と一緒に王都に行った時のことです。
そもそも父親も母親も領地を治めるので手いっぱいだったため、なかなか休みを取ることができず多忙でした。
また、王都は子爵家からとても遠く離れているためそう簡単に行くことは出来ませんでした。
そのため王都に行くのは年に1回行くかどうかと言うぐらいの頻度でした。
そんな家でしたので、エラは王都に行くことはとても楽しみなことでした。
王都に行く時は必ず3人で行き、美味しいものも食べられ、多少のものなら買ってもくれたので、その時間はとても幸せだったのです。
3人がそろそろ帰ろうと思ったその時、とても大きな馬車が通り、手を振っていらっしゃる方がおりました。
王様です。
彼はその日、自身の誕生日だったため町で国民に手を振っていたのでした。
その時エラは王様の姿を初めて見ました。
王様を見たエラは凄く驚きました。
なぜなら、雰囲気はしっかりとしていて頼りがいのありそうな王様と頼りがいがない父親という違いがありましたが、王様の姿が父親の子爵に大変よく似ていたからです。
父親は王様とは全く似ていないと否定しましたが、母親は確かに姿ははかなり似ているわねと肯定したのでした。
「つまり、お父様に似た王をご覧になりたいがために舞踏会に伺いたいというわけですね」
「ええ、お父様やお母様は私が幼い時に死んだからいつも考えてしまうの。もし、お父様やお母様が生きていたらどんな姿なのだろうって。舞踏会の招待状が届いた時、王様がお父様に似ていることを思い出してさ。もし、お父様が生きていたらきっと姿は王様みたいになってるのかなって思うとどうしても見たくなって。本当はお母様の似ている人も見たいけどそんな人は知らないから見に行きようがないけどね」
エラは王都の方へ顔を向け、少し遠くを眺めて二人の両親のことを思い出します。
「でも、もしお義母様達と一緒にいたら最後まで残らなきゃいけないでしょ。私の目的は王様を見ることであって、王子を見たいわけじゃないんだから長居する必要もないし、それに長居したらボロが出て恥をかいても困るしね。そもそも王子と結婚なんて出来るかどうか以前に興味すら持たれないわよ。ああ、変な女だなと言う理由なら興味を持たれるかもしれないけどね」
エラは自嘲してしまいました。
「やっぱり、こんな理由で舞踏会に行きたいと思うのはおかしいのかな?」
どうやらエラは自分が舞踏会に行きたかった理由に自信を持てなかったようでした。
現在、彼女の顔は俯いています。
「確かにほとんどの方が殿下との結婚を夢見て伺うのでしょう。そのため私は勘違いをしてしまったようです」
ヴィオルは申し訳ございませんでしたと少し頭を下げました。
「おかしくなんかありません。父親を失った貴女が父親に似た王を見たいと思うのは当然だと思いますよ。私も、もし祖父に大変よく似た人を見かけたら会いたいと思うでしょうね」
「ねぇ、ヴィオルにはもうお祖父様がいないの?」
ヴィオルがエラの理由を一切否定せず、むしろ肯定して慰めていた際中に、エラは疑問に思ったことをそのまま率直に尋ねました。
ヴィオルはエラの突然の質問に少し戸惑いましたが、落ち着いて答えます。
「はい、祖父は昨年他界しました」
エラはその事実を知って、悲しくなり思わず涙を流します。
その辛さは両親を共に失っているエラにはよく分かっているのでした。
ヴィオルはエラに新たなハンカチを渡しました。
「確かに祖父が他界したことは辛いです。本当に素敵な方でしたから」
「ヴィオルのお祖父様は一体どんな人だったの?」
ヴィオルは話そうか迷いましたが、エラからエラ自身の話を聞き出したので、自分も話そうと決めたのでした。




