シンデレラの迷い
継母達との相談を終えたエラは自室に向かいました。
継母達には自分の意思に任せると言われたため、再び振り出しに戻ってしまいます。
再びエラは悩み始めました。
ヴィオルのことをどう思うかと言われれば、即答で好きだと断言できます。
しかし、婚約相手となると全く以て分からないのでした。
感情だけで考えると埒が明かない気がして、もし婚約したらと想像することにしました。
もし婚約したら、ヴィオルは元子爵令嬢の庶民と婚約したと喜びの目で見られることはまずないでしょう。
そして、自分も蔑まれて見られるのが目に見えました。
下手したら婚約破棄させようと周りが躍起になる可能性も捨てきれません。
やはりどう考えても釣り合っていない気がします。
ヴィオルは第2王位継承者。
その上、あのビジュアルと魔法。
正直、非の打ち所があるようには見えません。
それに話していて楽しいため、社交界慣れもしているような気もしますし。
彼なら選り取りみどりのはず。
私よりも身分が高くて美しい人を選べるはずなのです。
これでは義姉達の言う通りになりそうでした。
また、婚約した後は様々な教育をされそうで大変だろうなと思いました。
最低限のことをつい最近ようやく身につけた自分がそんなことを出来るのか不安を覚えます。
ここで反対に婚約しなかった場合を考えてみましょう。
もし、婚約をすることにならなくても侮辱罪とか反逆罪とか法的に罰せられることは流石になさそうです。
しかし、そもそもヴィオルの求婚すると言う情報がすでに王宮内で広まっている模様。
その時はまだ何もしていなかったのに、すぐに噂が広まるとは恐るべし王宮。
これなら、断った時はその事実がすぐさま拡散されてしまうのは間違いないでしょう。
最悪の場合、ヴィオルに不名誉なレッテルが貼られるかもしれません。
また、断ったら王子妃の候補になるとはそれはそれで嫌です。
あんな窮屈そうな場所に押し込められると考えると退屈で仕方がないでしょうし、令嬢達の争いにも巻き込まれたくはありません。
選ばれないと分かっていて、行かなければならないとは、無駄な時間を過ごすとしか思えません。
受け入れるにしても、断るにしても、起こりそうな出来事から考えて決めるのは無理そうです。
となると、自分の感情で決めるしかなさそうな気がしてきます。
もし、受け入れたら、婚約者としては楽しく過ごすことは出来るでしょう。
まあ、貴族や王族は大抵の場合、婚約者がいたりするので本人達の意思は反映されないことの方が多いと言います。
そのため、最初は感情がなくても婚約や結婚を通して愛を育んでいくのがオーソドックスらしいのです。
そう考えると、自分にも関わっていくうちに自然の愛情が生まれるかもと思いました。
反対に断ることを考えてみると、エラは一生1人で過ごすか、他の人と結婚することになるでしょう。
それにしても、そもそも何も持っていないエラと婚約したいと思う男性が現れるとは考えにくいです。
例え結婚するとしても、庶民と結婚することになりそうです。
それでも、自分のことを粗末に扱わなければ問題はないのですが、酷い目に合されたら元も子もありません。
はたして、普通の男性と婚約出来るかは全くもって分からないのでした。
それに対してヴィオルなら大事に扱ってくれそうです。
この機会を逃すと大変なことになるかもしれないと思いました。
また、ヴィオルは他の令嬢と婚約することは間違いないでしょう。
王族ですし、とても結婚しないとは考えられません。
きっと自分より身分も容姿も素晴らしい人と結婚するのでしょう。
そうなるとその人と愛するようになるでしょう。
そのように考えた時、何だかモヤモヤするのを感じました。
この感情は何処かで感じた気がします。
その記憶を辿ると舞踏会でヴィオルが他の令嬢と話していた時に感じた感情と同じだと気づきました。
共通点はヴィオルが他の令嬢達と関わっていると言うこと。
その時にモヤモヤ感じるのです。
エラはようやくこの感情がどう言うものか分かりました。
その感情とは嫉妬。
ヴィオルと話している他の令嬢を羨み、ニコニコしているヴィオルに腹を立てていたのでしょう。
そして、ヴィオルが他の令嬢と結婚するのが嫌に思ったに違いないのでした。
どうやら、恋愛感情が存在していたらしいと気づきました。
それにしても、今まで恋愛に無縁だった自分が、たった1日で恋に落ちるとは不思議なものです。
いや、もしかしたらヴィオルと同じように初めて会った時から存在していたのかもしれないと思いました。
あの時から彼に好意を寄せていたのは間違いなのですから。
大変だろうけど、やっぱり受け入れようかなと思いましたが、他の不安にも駆られました。
側妻や愛人が出来るかもしれないと言う不安です。
ここは一夫多妻制なため、側妻や愛人がいるのは全く珍しくありません。
そのため、他の女性を迎える可能性は常にあるでした。
様々なことを考えて一晩かけてようやく答えを出しました。
エラは心の中で何度も確認しながら、ヴィオルが来るのを待つことにしたのでした。




