シンデレラは本領を発揮する
いざ掃除をしようと床一面を眺めるとパッと見た目はとても綺麗な床。
一見掃除するところは見当たりません。
表面上はとても綺麗に見繕われておりました。
しかし、よく見ると端や角のところがまだ掃除されておりません。
と言うかしていなかったのでしょう。
確かにそれぐらいなら許されるでしょうが、給料をもらう身としては完璧にやらなければと言う使命に燃えているエラはそこらを掃除することにしました。
まずは持っている箒を使って少しずつ丁寧に塵をとります。
床や壁を出来るだけ傷つけないよう心がけました。
次はバケツと雑巾を取り出して一旦外に出ました。
そこでバケツの中に水を注ぎます。
雑巾を入れた水にたっぷりと浸して、雑巾を縦に持って数回硬くめいいっぱい絞りました。
その作業を終えたエラは再び掃除場所へ戻りました。
こびり付いた汚れはなかなか取れず大変でした。
ある程度はとれましたが完璧にはとれません。
普通ならここまでしたら文句を言われる筋合いもなく、誰もが納得するでしょうが、エラはこれでは納得がいかず、外へ出ていってしまいました。
メイド長は嫌がらせで押し付けた仕事を楽しそうに、そしてとても真面目にテキパキと仕事をこなしているエラに感心してしまいました。
そんなエラが何の掃除道具をもたず突如外に出てしまったので不思議に思い、エラの後を付けます。
「一体、何処に向かわれるのです! まだ掃除終わっていないでしょう」
「掃除を終わらすために外へ出ているのです」
仕事を完了していないのに仕事を放って外に出ているのを怒っているのに、終わらすために出ていると言う矛盾な回答にメイド長は頭が痛くなります。
しかし、そんなメイド長はそっちのけにエラは歩いていくのでした。
向かった先は庭園。
庭園はあまりにも広くとても多くの種類の植物が植わっていました。
自分の家にある少しだけしか植わっていない庭とは雲泥の差。
そして全ての植物が綺麗に整えられているため、まさにここは楽園です。
エラは首をあちこちに動かして目的のものを探しますが、何処にどの植物が植わっているか分かりませんでした。
「メイド長、蜜柑は何処にありますか?」
今は10月とちょうど蜜柑の収穫時期。
そのため自分の家でもあるぐらいだから公爵家にないわけがないと思ったのでした。
「蜜柑はお嬢様の好物。そんな大事な物を貴女にお渡しするわけにはまいりません」
メイド長は蜜柑を食べるためにわざわざここまで来たのかと思い腹立たしくなって、エラの頼みを即座に断りました。
しかし、エラはめげません。
「別に蜜柑自体でなくても良いのです。私が必要なのは蜜柑の皮ですわ」
蜜柑の皮なんて何に使うのだろうと疑問に思い首をかしげます。
「蜜柑の皮なら料理室にあるでしょうね。捨てられていなければ」
「そんなの勿体ないわ。今すぐ行かなくては!」
メイド長はそこまでして蜜柑の皮なんて欲しくはないでしょう、諦めなさいと言う意味で言ったのですが、エラは彼女の後半の言葉は全く聞いておらず、前半の言葉を聞いて急いで走り出します。
エラの走りは速く、メイド長は彼女を見逃してしまったのでした。
と思ったらすぐにエラはメイド長の所に戻ってきました。
エラはメイド長の肩を揺さぶり叫びます。
「料理室はどこですか?」
メイド長はただただ呆れてしまいます。
どうしてそこまで蜜柑のために走りまわれるのか、いや、蜜柑の皮のために頑張るのか全く持って意味不明です。
それでも答えなければいつまで経っても尋ね続ける気がしまして、渋々答えます。
「料理室に行くためにはここから100メートル先にあるあの大きな木の所を右に曲がって、それから50メートル先の……」
「それじゃ分からないです。実際に案内してください!」
エラはメイド長の分かりにくい案内を途中で遮り、メイド長の手を握って走り始めました。
メイド長は急にエラが走り始めたため、そのままつられて走らされます。
エラの走りは速く、運動が得意ではないメイド長は何度も足がほつれそうになります。
エラはそんなメイド長のことには気付かず、こっちなのそれともあっちなのと事ある度に尋ね、メイド長は走った疲れが溜まっていく中、答えていくのでした。
実は庭園から料理室は反対側にあったため、広い公爵家ではかなりの距離があり、辿り着くまでが大変でした。
ようやく辿り着いた2人。
メイド長はヘトヘトで倒れるのを防ぐために背中から壁へよりかかって息を少しずつ整えます。
その反対にエラは疲れている様子は全くなく、思いっ切り扉を開け、料理長に向かって叫びました。
「蜜柑の皮をください!」
料理長も急に見知らぬ女性から面と向かって叫ばれ困惑しました。
おまけに何故、蜜柑の皮が必要なのか全く理由が検討つきません。
よく分からないままも料理長は蜜柑の皮がまとめて置いてある所を指差して持っていくよう言いました。
エラはまだ捨てられていない蜜柑の皮を見て安心し、喜んで蜜柑の皮を大量に持って帰ったのでした。
エラは元の掃除場所に戻ります。
すると、バケツを取り、外に出て新たな水を入れ、持ち出した新たな雑巾をそれに水を浸して絞りました。
そして、元の場所に戻り、料理長から貰った蜜柑の皮を1つ取り出します。
メイド長は一体何をするつもり何だとエラを眺めていると、何と蜜柑の皮を壁に直接付けて擦り出したのです。
エラがテキパキと壁を擦るとそこには新品同様のとても綺麗に磨かれた壁が現れたのでした。
メイド長はこの光景に口が塞がりません。
「一体何が起こったのです」
「蜜柑の皮を擦り付けただけですが」
「蜜柑の皮を擦り付けただけで何故ここまで綺麗になるのですか?」
「蜜柑の皮には漂白作用があるらしいです。実際に綺麗になりましたでしょう。実はこれは私の義姉が教えてくれたことなのです」
エラは義姉のロゼリアに教えられたことが今実際に役立ち大変誇りに思いました。
メイド長は蜜柑の皮は捨てるしか道がないと思っていたので、そんな効果があるとは知らず驚いてしまいました。
さすが奥様から直接雇われるだけはあるなと痛感します。
こうしてエラはあらゆる汚れを蜜柑の皮を使って次々と落としていきました。
すると屋敷がよりピカピカになり太陽の光が綺麗に差し込みます。
エラの実力を知ったメイド長は、3日後エラに公爵令嬢の部屋の掃除を任すことにしたのでした。
エラは信頼されたことが嬉しくなり、しっかりと公爵令嬢の部屋をピカピカにしようと強く決意したのでした。




