第9話 傾国のラナ
ラナが王子の婚約者になってからと言うもの、国は荒れた。ラナはダンスパーティーでも気に入らないものを虐め、自分に不利な発言をするものを殺めていったのだ。
そんなラナは傾国のラナと呼ばれるようになっていた。ミシェルは毎晩アーロンの夢を見るようになっていた。そんなある日、それはミシェルの耳にも入ることになる。
「お嬢様。あの不吉な噂をご存知ですか?」
「?なんの事です。」
「聖女ラナの話ですよ。」
「聖女ラナがどうかしたの?」
「王子に惚れ薬を盛っているとか……」
「なっ!?なんですって!」
大好きだったアーロン、そんなアーロンが惚れ薬を盛られている。そして、毎晩アーロンの助けを求める夢、これはただの夢ではないとミシェルは思った。
「魔法で夢を見せる事で助けを求めていたんだわ!」
そうと分かると王子を助けにいくとミシェルは言い始めた。
「お嬢様、しかし、流刑地を離れる事は重罪です。」
「……でも、アーロン様が……」
「言いたくないですが、惚れ薬を盛られていたとしても、アーロン様のミシェル様に対する言動は酷いものでした。それでも、助けたいのですか?」
「ええ!もちろんよ!」
「ラナが現れるまでもミシェル様に優しかったとはいえないのにですか?」
「ええ!それでもよ!」
やっぱりアーロンが好きだった。まだ諦められない。ミシェルは唇を、かみ締めた。自分は愚かだと思う。それでも助けに行きたいのだ。
「では、お手伝いいたしますわ。」
「へ?」
ローズはそう言うと魔法を使ってミシェルを変装させた。
「ローズ、あなた……」
「さ、今は私のことより王子の事です。」
ローズはずっと昔から付き添ってくれていた使用人である。でも、少し不思議なほど魔法が上手だと言うことがあった。ローズに促されて王子の元へと馬車で駆けて行く。
王城に付いた時には手遅れだった。王城の中に使用人を装って潜入したミシェル達だったが、エントランスでアーロンとラナを見つけた時には遅かった。
「ラナ、愛してるよ。」
「はい、アーロン様♡」
そう言っている王子の眼は虚ろだった。
「ラナ様!これは一体!」
「あら、ミシェル様。何故ここに?重罪でしてよ?」
「アーロン様を離して!」
「ええ、いいですわよ?」
しかし、アーロンは自分の意志のない人形のようになっていた。
「アーロン様、どうして!?」
「……。」
アーロンは何も答えない。
「アーロン様ったらミシェルに会いに行くなんて言われるのですもの。少し意識をいじってさしあげましたのよ?」
「ラナ様!どうしてこんな酷い事を!?」
「ひどい?酷いのはお前達だ。」
「え?」
するとラナの姿がおぞましい怪物に変わってゆく。
「がぁああああっ!!」
「なっ?!」
「ワタシはこの国を統べし真の王!!」
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