第5話 聖女ラナ
レンガ造りの小屋、家庭菜園を作って使用人達とのんびりと過ごしていたミシェル。そんなミシェルの元に今日訪れるのは自分を追い出した聖女ラナ。2人が再会してしまう。豪華な馬車がミシェルの小屋の前でとまった。
「ごきげんよう。ミシェル様。」
降りてきたのは紛れもなく聖女ラナである。胸元にはピンクの石の付いた十字架を持っている。
「ごきげんよう。」
「荒野に使用人達と暮らしていると聞いたので駆けつけました。私でよろしければ何か力になりたいです。」
「………特に困った事は……」
「あら?そうですか?井戸とか掘って差し上げましょうか?」
「井戸ですか?確かに井戸があれば家庭菜園もより楽におこなえますわね。」
ミシェルは少し期待ラナの力にしてしまった。この後に起こる災難も知らないで……。
「では、祈ります。」
ラナが祈ると地面が割れて、水が吹き出した。
「相変わらず、す、すごいですわね。」
「お褒めに預かり光栄ですわ。ミシェル様、少し割れ目を見てくださいません?」
「割れ目、ですか?」
「はい、上手く水が引けているか、みていただきたいのです。」
「わかりました。」
言われるままに割れ目に近づくミシェル。そんなミシェルをラナは後ろから突き飛ばした。
「きゃっ?!」
「あら、ごめんなさい!少し立ちくらみがして……」
「お嬢様!」
「お嬢様になんてことを?!」
使用人達は割れ目に落ちたミシェルを引き上げようと必死になってロープを投げる。なんとか助け出されたミシェル。さらにラナが掘った井戸は急に水が止まってしまった。
「ごほっ、ごほっ。」
「お嬢様、しっかりしてください。」
ローズが背中を摩る。
「まさか、割れ目に落ちてしまうなんて、思いませんでしたわ。それに、ここの水源は少しの水しかなかったようですわね。残念です。お力になれず申し訳ありませんわ。ふふっ。」
そう言って嫌味を言っているともう1台馬車が止まった。
「なんの騒ぎだ!また優しいラナをミシェルが虐めたのか?!」
そこに現れたのは婚約破棄した第一王子アーロン。
「アーロン様。」
ラナは待ってましたと言わんばかりにアーロンに縋り付く。
「ミシェル様が、恐ろしい魔族の力で、私を脅して、水源のほぼ無い所に井戸を無理やり掘るように命じてこられるのです。どうかお助けください。」
「ミシェル!またラナを利用しようとしたんだな!」
「ご、誤解です、ごほっ。私、脅してなど……」
「ミシェルがラナに何かしないか心配になってきてよかった!ラナ、早く帰ろう。」
「はい。アーロン様。」
そう言ってラナはニタニタと笑みを浮かべる。
「ラナ、ミシェルの為に奇跡を起こしに来る必要なんてなかったんだ!ラナの善意を、利用するなんてミシェル!君ほどの悪逆非道な人間はここでその罪を償って貰おう!」
そういうと王子は剣を取り出した。すかさずラナが王子に縋り付きながら
「アーロン様、いくらミシェル様が悪逆非道でもそのお命までとるのは忍びないですわ。」
と、言って自らの善性をアピールする。そして、王子はラナに感謝するんだなと言い捨ててラナと共に馬車で帰っていった。残ったのは地割れした地面とずぶ濡れのミシェル。
「お嬢様、お召かえをいたしましょう。風邪をひかれますわ。」
「ええ、そうね。」
ミシェルは最悪な気分でレンガの小屋で着替える羽目になってしまった。冷たい風がミシェルを冷やしていった。
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