第3話 家庭菜園
立派なレンガの小屋を立てたミシェル。そんなミシェルに新たな困難が待ち受ける。
「お嬢様、食料がそこをつきそうです。いかが致しましょうか?」
「そんな事お嬢様に聞いてどうにかなるわけないだろ。俺たちで確保しにいくしか……」
「ありがとう、ローズ、爺や。こうなったら畑を耕すしかないわね。」
「は、畑ですか?」
「ええ、食料を確保するには自分達で農園を作るしかないわ!」
そう、転生する前は良く家庭菜園してたものね。そう思いながら畑をクワで耕すミシェル。
「お嬢様、私達にお任せを……」
「大丈夫よ!私がなんとかしないとっ!皆の分もがんばるの!」
そして、数日後、ミシェルは思い出した。
「そういえば、私…………」
ミシェルの畑は荒野のままだった。
「1度も家庭菜園成功した事無かったわ。」
がくりっとその場にへたり込む。
前世、家庭菜園をしてみたりした事は何度もある。しかし、芽がでない、枯れてしまう、虫の餌に……と、ハプニング続きで成功した事なんてなかったのだ。それを今思い出した。遅い。遅すぎる。もう少し早く思い出すべき……。
「お嬢様、私達使用人の皆で育てた家庭菜園でトマトがとれました。これでお夕食をつくりますので、どうか元気を取り戻してくださいませ。」
ローズは笑顔でそう言いながら手を差し伸べる。ミシェルは涙が出そうになるのを堪えてありがとうと言って手を取るのだった。
「私、失敗してばかりね。」
「そんな事ありません。」
「そうです。お嬢様が家庭菜園を作ろうと仰って下さらなければ私達はどうする術もなく、飢えて死んでおりました。」
他の使用人達もミシェルのおかげだと優しく笑うのだった。
「皆、ありがとう。」
ミシェルは王子の婚約者として社交界に出るよりも、今の、使用人達と力を合わせて温かく穏やかに過ごす事の方がより生きていると実感できた。優しさに囲まれ幸せな日々を送る。そんな彼女達に迫る影がある事をこの時はまだミシェルは知らなかった。
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