義男の推理
「こんなところに連れてきて何の意味があるんだ。授業中に叫んだから、こっぴどく怒られた義男君?」
俺は義男に連れられて、人気のない屋上階段の踊り場に着くと、義男を煽るように聞いた。
「さっき言っただろう。手紙の差出人、いや、正しく言えば、この事件の犯人は一人ではない。そして、その犯人の一人はこの学校の人間である可能性が高い。」
「ほう、面白そうだな。」
「まず、先に確認しておこう。お前のお母さんの職業は何だったかな?」
「西高の高校教師だ。」
「そうだったな。ならば、この推理は正しかったというわけだ。」
「自信満々だな。早く真相を聞かせてくれ。」
「では、状況を確認しながら、この事件の真相を説明していこう。
まず、お前の家は戸締りをちゃんとしていて、防犯カメラや警備会社と契約しているので、家に無理やり入ろうとする不審者がいる場合、すぐに分かるようになっている。そして、鍵は二本しかなく、お前とお前のお母さんしかもっていない。お前はいつもポケットに入れているから、おそらく盗むことは不可能だ。
しかし、お前のお母さんの方はどうだろう。お前のお母さんは鍵をカバンの中に入れていたんだったな。」
「それがいったいどうしたんだ。」
「ここで大事なことは、お前のお母さんはお前と違って、鍵を携帯していないということだ。
人の管理下にあるポケットの中のものを盗むことは難しいが、人の管理下に無いカバンから盗むことは難しいことではない。
さっき、俺が職員室に呼び出されて怒られた時、確認したんだが、大体の教師がカバンを机の下に置いていた。
なので、お前のお母さんも職員室の机の下にカバンを置いているとする。
すると、職員室の人の目さえ盗めれば、お前のお母さんのカバンから鍵を盗むことができる。」
「待て、待て、さっき言っただろう。お母さんの鍵は盗まれていなかったって。」
「焦るな。話を最後まで聞け。
まず、手紙の差出人は、お前のお母さんの鍵は盗んだ。そして、学校を出て、お前の家に向かい、盗んだ鍵を使って、家の中に入る。家に入った差出人は、お前の部屋の机の引き出しに手紙を入れる。そして、家の鍵を閉め、もう一度、お前のお母さんの学校に戻り、鍵を返す。
こうすれば、玄関から鍵を開けて入っただけだから、警備会社に怪しまれず、何の痕跡も残さずに、手紙を引き出しの中に置けるわけだ。」
「まあ、できないことはないか。で、犯人が一人ではない理由を教えてくれよ。」
「そうだな。じゃあ、今言った犯行をできる人物は誰だろう?」
「う~ん。その学校の生徒とかかな。」
「そう、手紙の内容からも同年代の生徒が怪しい。だから、その生徒が学校を行き来し、犯行に及んだ。しかし、毎日のようにこのような犯行を及んでいた時、その生徒は怪しまれる可能性が高まる。なので、必要最低限の回数で犯行を済ませたい。
この時、重要になってくるのは、この学校の共犯者だ。
お前は家の引き出しに手紙が置いてあった。なんて面白いことがあったら、必ず、俺に話しに来る。このことが分かっていれば、この話を聞いた共犯者は、手紙の差出人に連絡をし、差出人が返信を置く犯行を行う。
こうすれば、必要最低限の回数に犯行を抑えることができる。」
「まあ、理屈は分かるが……。」
「さらに、俺はこの学校の共犯者の目星がついている。
その犯人の名は……
愛海だ。」




