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空集合の犯人

「で、お前はどう思う?」

「どう思うったって、謎が余計に増えただけじゃねえか。謎の差出人、破られない密室、それに加えて、知らないことを知っている矛盾。……どうだろう。一度、この話、出版社に持っていくか?」


「馬鹿なこと言うな。肝心のトリックが分からないんじゃ。門前払いされて、終わりだ。」

「まあトリックは分からないが、情報が増えたことは進展だな。差出人はこの学校ではない女子で、お前の小中の痛い黒歴史をずっと見ていて、忘れっぽさを知っている人物である。ってことだな。」


「俺、そんな忘れっぽいか?」

「こんなに好意を寄せてる女の子忘れてるんだから、忘れっぽいに決まってんだろ。」


「そうだけどよ。俺の頭が小中のことは思い出すなって言ってるみたいに、記憶に蓋をしてくるんだよ。もしかしたら、その女子に出合ったとしても、思い出せないかもしれない。それくらいに小中の記憶は抹消したいと脳が望んでいるんだ。」


「まあ、寂しくて、一人で歌い出す奇行を始めたら、人間終わりだな。そんな記憶はすぐに消してしまいたい。」

「そうだろ。でも、誰かがずっとその奇行を見ていたなんて……あー、急に恥ずかしくなってきた~。」

 俺は赤くなった顔を覆った。


「大丈夫。そんなお前がこの手紙の女子は好きなんだ。だから、ここで一曲歌っとくか?」

「誰が歌うか。この学校にその女子はいねえんだろ。ここで歌ったら、高校生活もはぶられ生活が始まっちまう。」


「まあ、その話は置いといて、手紙の話でもう一度確認しておきたいことがあるんだが、お前の家の鍵は、いくつあるんだ?」


「俺が持ってる鍵とお母さんが持ってる鍵の二本だな。お父さんは基本的に帰ってくるのが遅いから、鍵は持ってないな。お母さんは俺よりも早く帰ってくるときもあるから、一応鍵は持ってるな。」


「お母さんの鍵が実は盗まれている可能性はないか?」

「ないかな。お母さんに聞いて、鍵を持っているか聞いたら、カバンの中から鍵をだしてきたから、盗まれてはいなかった。」


「う~ん。……分からないな。」

「あっ、そうだ。言うの忘れてたんだが、一応この手紙に返信を送ってみたんだ。」

「結構大事なことじゃねえか。やっぱ、お前、忘れっぽいだろ。……で、どんな内容の手紙を送ったんだ。」


「えーっと、もしあなたがこのようなことを続けるならば、不法侵入で訴えます。この家の周りには、監視カメラが設置されていますので、確認すれば、証拠は十分だと思います。今すぐやめてください。って書いたかな。」


「何書いてんねん。」


「だって、勝手に家に入って、手紙を置いていくような奴に好意なんて持てるか?恐怖しかないだろ。それに小中の俺を知ってる人間はもう関わりたくないんだ。」


「もしこれで、手紙が来なくなったらどうするんだ?どこから不法侵入されているか分からないまま、その家で暮らすことになるし、そういう奴は拒絶されると、どんな行動に出るか分からない。一旦、泳がせておくことが大事なんだよ。」


「確かにそうだったかもしれない。冷静に考えられてなかったかもしれない。……帰り道に襲ってきたりしないかな?」

「まあ、やってしまったことはしょうがない。……お前はいい友達だった。」

 そう泣く仕草をしながら義男が言うと、二限目の始まりのチャイムが鳴った。そのチャイムを聞いて、義男はそそくさと俺の席から離れていった。


「見捨てないでくれよ。義男~。」

 そう俺は叫んだが、無情にも義男は無視し、二限目の授業が始まった。


 俺は叫んだことによって周り耳られていることに気づき、一旦気を取り直して、授業を受けることにした。


 手紙の差出人が今頃、俺の返信を見て怒っていないだろうかと怯えながら、授業を受けていた。しかし、眠気に逆らえず、うとうととしている時に、突然、義男が立ち上がり、大声を上げた。


「分かった。手紙の差出人は一人じゃなかったんだ。」

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