二通目
「なあ、愛海の筆跡鑑定能力は信じられるのか?」
焼きそばパンをもぐもぐと食べている義男に話しかけた。
「愛海がこの学校の女子じゃないって言ったら、本当にそうじゃないんだろうよ。前、理科の教室に置いてあった名前の書いてないノートの持ち主を書いた文字だけで当てたこと知ってるだろ。」
「ああ、持ち主は三年の帰宅部の根暗女子、愛海になんで分かったか聞いたら、消去法で残った人がその人だったから、だろ。愛海の異常さは分かっちゃいるけど、この学校の女子でもない、家族でもないとなりゃ、もう誰が犯人なんだよ。」
「中学以前のお前の友達じゃないか?」
「ない!クラスで浮いて、はぶられていた話しただろ。」
「でも、今、一番可能性が高いのは、そこしかないんじゃないか。実は好きな思いを秘めていましたみたいな。」
「確かに、そうかもしれないが……。じゃあ、百歩譲って、小中の同級生が犯人だとして、引き出しの中にどうやって、手紙を入れるんだ。」
「……。」
義男は残った焼きそばパンを口に放り込み、それを噛みながら、しばらく考えた。口の中のものを飲み込むと義男は口を開いた。
「分からん。」
「だろ。ここ三日間家に入ったのは、俺を含む両親の三人とお前だけだ。家を留守にすることもあるが、ちゃんと戸締りはしている。」
「それは確実か?」
「両親は共働きで、朝が早いから俺が毎回戸締りをするが、鍵をかけ忘れたり、窓を閉め忘れたりしたことはなかったと思う。」
「……。」
再び義男は考え込んだ。
「分からん。」
「だろ。さらに付け加えるなら、うちの家の鍵は特殊で、簡単に合鍵を作れないようになっているし、警備のやつをやっているから、不審者は入れないはずだ。」
「やっぱり分からんな。降参だ。」
義男は両手を上げて、降参したことを示した。
「さすがの推理オタクもお手上げか。」
「だが、今の状況じゃ降参ってだけだ。今は情報が少なすぎる。また、進展があったら教えてくれ。」
義男がそういうと、ちょうどいいタイミングで、昼休みの終わりのチャイムが鳴った。義男はパンの包装のごみを片付け、自分の席に戻った。
俺は手紙のことを考えながらも、次の授業の準備をした。
う~ん、分からない。
結局、午後の授業中ずっと手紙のことを考えていたが、全く分からなかった。学校からの帰り道もずっと考えているが、考えは進展しなかった。
俺は家に着くと、玄関の鍵をポケットから取り出し、鍵を開けた。もちろん、鍵の閉め忘れはしていなかった。
いつものように家の中に入ると、中から玄関の鍵を閉めた。そして、二階にある自分の部屋に向かった。部屋の中に入ると、制服を脱いで、普段着に着替えた。着替え終わると、やはり、手紙のことが気になってしまう。
俺は机の引き出しに目をやった。いつも通り閉まっている。
俺は恐る恐る引き出しに手を伸ばした。昨日、手紙を取り出したため、引き出しの中には、文房具以外は入っていないはずである。手紙なんて入っていないはずである。
引き出しの取っ手に手をかけると、一気に引き出しを開けた。
中を見てみると、昨日と同じ封筒に入った手紙が置かれていた。
背筋がぞっとするような感覚に陥った。




