犯人捜し
次の日、いつもより歩調を荒々しく、どかどかと学校の階段を上っていた。
自らのクラスに向かって、怒りながら廊下を早歩きした。
「義男、出て来い。」
俺は勢い良く教室のドアを開けると、そう叫んだ。
「何、そんな怒っちゃって、義男はまだ来てないわよ。」
「へえー、そうか。……じゃあ、教卓の下にいる義男の靴を履いた奴は義男じゃないんだな?」
教卓の下からいつも義男が履いている靴が見えていた。
「……それは、あのー……
あー、あんな所にUFOがー。」
愛海は下手な演技で、窓の外を指さした。それを聞いた教卓の下の人間が即座に教室の出口に向かって駆け出す。それを確認した俺は、もう一つの出口から回り込んで、逃げる奴の腕を捕まえた。
やはり、義男だった。
「かくれんぼの鬼と言われたこの俺に、教卓に隠れた程度で、やり過ごせると思うなよ。」
俺は焦る義男に、握りこぶしを見せた。すると、義男は胸ポケットから千円札を取り出した。
「すいませんでした。とりあえず、半分の千円だけでもお納めください。」
義男は千円札を俺の手に握らせてきた。俺は思った反応と違ったので驚いた。
「なんだこの千円は?」
「なにって、前に遊んだ時に借りたお金の返済だよ。」
ふと思い返すと、そういえば義男に二千円を貸していたことを忘れていた。
「そうだ、早く返せよ。」
俺は握らされた千円札を奪い取った。
「それもそうだけど、あの手紙だよ。お前のせいで恥かいたじゃねえか。」
「……?、手紙?」
「とぼけるんじゃねえよ。引き出しの中にお前が入れた手紙だよ。引き出しに入れられているから、親が間違えて入れたのかと思って、親に聞いたら、ラブレターじゃない、モテる男は違うねえー。とか言われて、それからずっと、ウザ絡みされてんだよ。親が違うなら、お前の仕業以外ありえねえだろ。」
「さっきから何を言っているんだ。その手紙やらラブレターやらは本当に知らない。お前に金は返さないことはあっても、嘘はつかない。」
「教卓に隠れて、やり過ごそうとすることは嘘みたいなもんだけどな。」
「それはそれ、これはこれだ。でも、まじで何のことか分からない。」
義男は嘘をついていなさそうだった。俺は掴んだ義男の腕を離した。
「詳しく説明してくれ。なんか知らないけど、一緒に考えてやるから。」
義男は諭すようにそう言った。俺と義男はとりあえず教室に戻った。
「ごめん、義男。UFOじゃなくて、空飛ぶ猫とかにしとけば良かった。」
「オカルトでもファンタジーでも同じだよ。もっとましな嘘ついとけよ。」
義男は愛海の後ろの自分の席に座ったので、そこで話すことにした。
「昨日の夜、引き出しを開けたら、この手紙が入ってたんだ。親はそんな手紙知らないっていうから、家に最近遊びに来て、尚且つ、そんないたずらをしそうな奴はお前しかいないと思ったんだ。」
義男は俺が手に持った手紙を読んでいた。
「それで、このラブレターの内容からお前の親に朝からウザ絡みされ、あんなどかどか廊下を怒りながら、歩いていたわけか。なるほど、理解した。」
義男はしばらく考え込んだ。
「まあ、すぐにこの手紙の差出人はすぐに分かるさ。」
「本当か。」
「ああ、まず、お前はこの学校と家族しかコミュニティはない。そうだろ。」
俺は忌まわしき小学、中学のはぶられていた記憶を思い出した。
「そうだ。」
「そして、家族の仕業ではなかった。さらに、この筆跡は女子だ。そして、内容から元カノの優美と夏美の可能性が高い。しかし、私の分析では、二人とも丸文字だから、こんなに上手な字は書かない。」
「おお、つまり?」
「ここで推理はおしまいだ。」
「は?推理小説オタクの実力はそこまでかよ。犯人が分からねえじゃねえか。」
「ちっ、ちっ、ちっ、確かに私の推理はここまでだが、私の助手の力を使えば一発さ。この学校中の女子の名前から筆跡を全て暗記している優秀な助手の愛海君?」
「……私?」
「愛海君、和樹に送られたこの手紙の筆跡は誰のものだ。さあ、答えてくれ。」
愛海は手紙をしばらく凝視した。そして、ひらめいたように、義男に目を合わせた。
「分かった。この学校の女子の字じゃない。」
義男は椅子からずっこけた。




